日本森林学会誌
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96 巻, 5 号
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論文
  • ―遷移段階の異なる林分での比較―
    平山 貴美子, 町田 英美, 今井 龍夫, 山田 怜史, 高原 光
    2014 年96 巻5 号 p. 251-260
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    京都盆地周辺の森林では遷移の進行によってブナ科樹種の優占度が変化しており,生物・非生物的環境要因の変化を通じて,それらの実生発生に影響を及ぼしている可能性がある。本研究では,京都市近郊二次林において出現するアベマキ,コナラ,アラカシ,コジイのブナ科4種を対象に,アベマキ・コナラの優占する遷移段階中期にあたる落葉広葉樹林とコジイの優占する遷移段階後半期にあたる常緑広葉樹林において実験的に種子を播種し,それらの実生発生を林分間,樹種間で比較した。アラカシ,コジイは,アベマキやコナラに比べ実生発生開始が遅く,常緑広葉樹林では発生開始がさらに遅くなる傾向が認められた。アラカシ,コジイの最終的な実生発生率は常緑広葉樹林で有意に低下し,実生発生までにキクイムシ類による加害を高い割合で受けていることが示唆された。またアベマキやコナラの種子は,落葉広葉樹林のリター層内で鱗翅目による加害を多く受ける傾向がみられ,そこでの実生発生率は低くなっていた。以上より,京都市近郊二次林のブナ科4種の実生発生には,遷移進行に伴うブナ科樹種の優占度の変化が,密度依存的死亡を通じて大きく影響する可能性が指摘された。
短報
  • 小谷 二郎, 小倉 晃
    2014 年96 巻5 号 p. 261-266
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    間伐後1~7年経過した複数のスギ人工林で,作業道の植生回復を調査した。GLMによる解析の結果,ほとんどのモデルにおいて種数または植被率に対して作業道を開設してからの年数が要因として選択された。しかしながら,枝条散布の有無は選択されなかった。平均種数は,開設後3年目で12.4種/m2 となり,5~7年は10.9種/m2であった。平均植被率は,3年で58%となり,5~7年で86%となった。草本の種数と植被率は,開設後3年目まで増加しそれ以降減少したのに対し,木本は5年まで増加しそれ以降横這いとなった。一方,チマキザサの植被率は年数にともなって増加する傾向がみられた。これらの結果から,作業道での植生回復は,開設後3~5年に草本から木本やササへの優占変化をともないながら枝条散布とは関わりなく増加し,路面の安定化に寄与しているものと考えられる。
総説
  • ―特に森林の生物多様性保全に果たす役割に関して―
    長池 卓男
    2014 年96 巻5 号 p. 267-273
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    森林認証制度には,生物多様性保全や生態系サービスの持続的供給をもたらす新たな森林施業の構築に向けた役割が期待されている。本総説では,森林認証に関する最近の研究の傾向,特に生物多様性や自然環境に及ぼす影響に関する研究をまとめ,今後の研究の方向性と課題について考察した。森林認証を対象にした論文は,諸外国の学術雑誌では増加しており,森林認証運営主体間の客観的比較による研究が進んでいる。生物多様性に関する研究では,森林認証取得による森林管理のプロセスの改善(例えば,伐採時の渓畔域の保全など)に焦点をあてた研究はあるものの,森林認証が取得されたことによる直接的な評価(例えば,希少種がどれだけ保全されたか)事例は少ない。森林認証が,林業の負のインパクトを最小化することや,法的に指定される保護区以外の森林で生物多様性を保全するには十分ではないという指摘もある。森林認証が生物多様性保全に及ぼす役割の定量化や,現場での生物多様性保全の結果を評価するツール開発が必要とされている。森林に関する社会科学と自然科学の融合において,森林認証は重要な位置づけにあるため,研究者らが取り組むべき課題は多い。
  • ―1980年代から1990年代に開始された研究を中心とした分析―
    大石 康彦, 井上 真理子
    2014 年96 巻5 号 p. 274-285
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    森林の教育への利用が盛んであり,森林教育研究も活発である。ところが,わが国の森林学における森林教育研究を包括的にとらえた体系的レビューがこれまでにないことから,大石・井上 (2014) において,日本森林学会と同学会の連携学会および関連学会等がこれまでに刊行した学会誌等を悉皆調査し,教育に関わる文献448件を抽出し,専門教育および教育活動の場としての森林や展示施設に関する研究を対象に整理した。本論では,前報で残されていた教育の概念,学校教育,社会教育,対象者,教材・プログラム,指導者などについて整理した。その結果,1) 多様な教育の概念が提起されてきている,2) 学校教育の幅広い学校段階を対象に検討されてきている,3) 社会教育の多様な実施主体を対象に検討されてきている,4) 対象者が持っている素地や活動による影響が幅広く検討されてきている, など森林教育研究が多様化してきた経緯が明らかになった。さらに,森林教育研究全般で使われてきた森林に関わる教育を表す用語を整理し,森林教育研究がこれまでにたどってきた道筋を明らかにした。
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