日本森林学会誌
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105 巻, 12 号
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論文
  • ―新潟県上越市不動地区における集落合併の要因―
    佐藤 周平, 竹本 太郎
    2023 年 105 巻 12 号 p. 345-356
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル オープンアクセス

    人口統計分析を集落単位で行うことの必要性はたびたび指摘されてきたが,資料の不足により,研究事例が少ない。本稿の目的は,集落人口を対象にしてコーホート分析を行うことで,集落合併を集落人口の観点から考察するとともに,国勢調査を用いた集落人口分析の可能性を探ることである。新潟県上越市不動地区で2020年に行われた3集落の合併を分析対象として,以下の3点の結果を得た。(1)1965年から1995年の集落人口は国勢調査区を集落と読み替えることで把握できたが,2000年以降の集落人口は抽出できなかった。(2)1950年代に拡充された小学校に通った「独立校世代」は人口が多く,2000年代以降,少子化や小学校の閉校に対応した新たな結びつきを作ることを求められた。(3)地区の役員を務める60~70歳代の人口が2015年をピークに減少すると予想された。これらのことから,2020年の集落合併は,役員年代となった独立校世代が今後の人口減少を見越して敢行したことであると解釈された。今後の課題は,世代を形成する個人の具体的な履歴を紐解くことや,男女別の動向や社会移動を考慮に入れた集落人口分析の改良である。

  • 杉田 久志, 九島 宏道, 楯 直顕, 酒井 武, 今村 正之, 早川 幸治, 齋藤 智之, 三村 晴彦, 西村 尚之, 星野 大介
    2023 年 105 巻 12 号 p. 357-364
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    1984~1986年に抜き伐りが行われた木曽の赤沢施業実験林のササを欠くヒノキ天然林において,ヒノキのサイズ構造や年輪の解析により更新過程の復元を図り,攪乱履歴が更新に及ぼした影響について考察した。抜き伐り約30年後のヒノキ稚幼樹の樹高分布では,2~3 m以上とそれ以下の二つの集団が認識でき,発生年は前者が1934~1970年,後者が1987~2011年で,抜き伐りからみてそれぞれ前生稚樹,後生稚樹であることが判明した。前生稚樹の成長は1945~1960年に旺盛であったがその後減退し,抜き伐り後に旺盛な成長へと転じ,1997年の除伐後にも成長好転がみられた。このように,1940年頃にも林冠を疎開させて光環境を改善するイベントがあり,それを契機に前生稚樹が加入し,その後の光環境悪化に伴い成長が停滞したが,その消滅前に抜き伐りが実施されたことが前生稚樹の存続と旺盛な成長への転換を可能にした。前生稚樹はやがて後継林分の主役となり,後生集団は次の攪乱の後には更新主体の個体群として機能するだろう。光環境改善をもたらす攪乱が数十年の間隔で複数回繰り返されたことは更新成功に貢献したと考えられる。

  • 高橋 一秋, 横内 はるひ
    2023 年 105 巻 12 号 p. 365-374
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    ブナ科の樹木では,シギゾウムシ属の昆虫が散布前の主要な種子捕食者であり,その後の更新過程を決定づける場合がある。本研究では,コナラ,ミズナラ,クリの3樹種を対象に,堅果生産量,シギゾウムシ類の幼虫による樹種と堅果サイズに対する選好性,食害の程度と堅果サイズが発芽に及ぼす影響について調査した。各樹種10個体の樹冠下で105個ずつ堅果を採集した。堅果から脱出した幼虫を,飼育マットを敷き詰めたプリンカップで飼育し,羽化後に同定を試みた。堅果の発芽の成否も記録した。堅果の食害率はクリで50.5%,ミズナラでは41.0%,コナラでは24.8%であった。コナラとミズナラでのみ,堅果サイズと脱出した幼虫数の間には有意な正の相関が認められた。コナラとミズナラの堅果からは,クリシギゾウムシ,コナラシギゾウムシ,クロシギゾウムシの3種,クリの堅果からはクリシギゾウムシのみが脱出後に羽化した。優占種であったクリシギゾウムシのみがクリの堅果を選択していた。発芽成功については,コナラでは堅果サイズが正の影響,ミズナラでは幼虫数は負の影響を与え,クリでは堅果サイズと幼虫数は有意な影響を与えていないことが示された。

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