歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
22 巻, 3 号
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  • 名和 橙黄雄, 石関 清人, 坂倉 康則, 立花 民子
    1980 年 22 巻 3 号 p. 357-365
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    胎生18日マウスの下顎臼歯歯胚を摘出しミリポアフィルター上に貼布して培養を行った 。培養初期のものでは内エナメル上皮は立方形, 歯乳頭の間葉細胞は紡錘形といずれも未分化な形態を呈し, 両者の間には直線的な基底膜がみられるが基底膜より放散する細線維の少ないのがこの時期の特徴である。培養日数の増加とともに内エナメル上皮は急速に丈を増して高円柱状へと移行していくがこの時期に一致して基底膜より放散する細線維が増加し, 同時に紡錘形の間葉細胞も立方形へと分化の進展がみられてくる。このような細線維は基底膜の消失とともに不明瞭になってくるが最終的には基質形成への置換の可能性が推測される。
    基底膜と細線維は細胞の分化誘導に十分関与している可能性が考えられるが, 両細胞間を隔てる距離も分化誘導の重要な要素とみることができる。
  • 形態計量学的所見を中心に
    雨宮 璋, 小野木 正章, 大橋 勝広
    1980 年 22 巻 3 号 p. 366-387
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    osteolathyrismの場合のラット下顎骨の形態学的な変化を, より定量的に把握する目的で, Aminoacetonitrile (AAN) を投与したラットの下顎骨を, X線学的, 病理形態学的及び形態計量学的に検索し, 計量学的な所見を中心に, 形態学的変化との関連等について検討した。
    AANの投与により, 筋付着部を中心に過骨症が発現し, 下顎骨は著しく変形した。軟骨内化骨の障害と既存骨梁の吸収によって骨は多孔性になり, 歯根膜にも特徴的な変化が発生した。
    形態計量学的には, 水分の著しい増加に伴って湿重量, 体積が増加した。灰分重量は正常に近い値を保っているにもかかわらず, 湿重量及び体積に対する比率が減少し, 密度は著しく低下した。Percentage ashweightsには有意の減少がみられた。このような所見は, 過骨症の発症とよく対応しており, osteolathyrismの場合の骨組織が, 組成の上でも異常であることを示唆するものと思われる。
  • 五藤 陽三, 島田 二郎, 斉藤 滋
    1980 年 22 巻 3 号 p. 388-391
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    三つの生育段階の歯牙組織から歯髄を採取し, トリプシンとコラゲナーゼにより遊離細胞を集め, 各stageの細胞が産生したプロコラーゲンおよびそれらの培養細胞の形態を比較検討した。その結果, 各stageの歯髄組織はすべてタイプIとタイプIIIの2種類のプロコラーゲンを合成していた。しかしながら, 歯髄組織が成育するに伴ないタイプIとタイプIIIのプロコラーゲンの合成された割合は変化し, 後者が優位を占めていくことが明らかとなった。それと同時に培養細胞の形態も明らかに変化していくことが見出された。
  • 第V報 各種重金属化合物抵抗性細胞の細胞間接着性について
    兼松 宣武, 黒田 行昭, 川原 春幸
    1980 年 22 巻 3 号 p. 392-399
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    チャイニーズ・ハムスター肺由来のDon-6細胞を用いて, Ag2SO4, Cd SO4, CuSO4, ZnSO4の存在下で長期間培養し, これらの金属化合物に対する抵抗性細胞を得たが, そのコロニーの形態は野生株であるDon-6株細胞と比較して, 非常に不規則であり, 一部に盛りあがり, 重なり合った像を呈している。また細胞間の接着性を旋回培養によって形成される再構成組織の直径で比較すると, 対照としたDon-6株細胞とくらべて, Ag+抵抗性細胞はその平均直径が60.0%, Cd++抵抗性細胞は38.5%, Cu++抵抗性細胞は41.8%, Zn++抵抗性細胞は32.1%に低下していることが分った。これら細胞のコロニー形態の重積 (pilling up) をともなう乱れ, および細胞間接着性の低下は, 各種重金属抵抗性細胞が悪性転換 (malignant transformation) すなわち癌化している可能性があることを強く示唆している。
  • 谷内 良弘, 中村 輝夫, 滝口 励司
    1980 年 22 巻 3 号 p. 400-406
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    発育途上のカイウサギの長管骨の表面と割断面との微細構造を, 走査電子顕微鏡によって観察し, 次のような結果を得た。長管骨の表面には休止面と吸収面とが隣在している。休止面には, 不完全に形成された多数の不定形の骨小腔が散在していて, 壁面が密な膠原原線維網で形成されている骨小腔と, 壁の表層が交錯している膠原原線維束によって形成されている骨小腔とが多数認められる。吸収面には, 多数の大小様々の不定形の吸収窩が集積しており, 吸収窩底には吸収によって露出された骨小腔と骨細管が認められる。長管骨の割断面には, 内腔の大きいハバース管を中心に数層のハバース層板が形成されており, 層板には割断された骨小腔が比較的規則的に配列されている。吸収窩底とハバース層板の割断面には, 壁面が密な膠原原線維網で形成されている骨小腔と, 壁面が密な膠原原線維網と, 多数の球形の石灰化球とで形成されている骨小腔とが多数認められる。
  • 平松 正彦, 畠山 桂子, 南 直臣
    1980 年 22 巻 3 号 p. 407-411
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マウス顎下腺のN-acetyl-β-glucosaminidaseの唾液中への分泌に対する神経作働薬の影響について検討した。α-Adrenergic agent (norepinephrine, Phenylephrine) の投与により, 唾液中の酵素活性は著しく高まり, また顎下腺中の酵素活性は逆に低下した。β-Adrenergic agent (isoproterenol) とcholinergic agent (pilocarpine) ではこのような変化は認められなかった。α-Adrenergic agentによる唾液中の酵素活性の上昇は, α-blocker (phentolamine, phenoxybenzamine) の前処置によりほぼ完全に抑制された。等電点分画での結果, 顎下腺の酵素は4つのisoenzymeから成り (pI; 4.6, 5.2, 5.8, 8.8), そのうち最も活性の高いpI8.8の酵素がα-adrenergic agentの刺激で唾液中に分泌されることが明らかとなった。
  • 藤本 誠, 谷内 良弘, 滝口 励司
    1980 年 22 巻 3 号 p. 412-417
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    下顎頭の成長および老化に伴う軟骨層の微細構造上の変化についての走査電子顕微鏡的研究と, 軟骨基質の構成元素の分析の研究の一還として, 今回は, エネルギー分散型X線分析器に, 定量システムを取りつけたものを使用して, 下顎頭の成長軟骨層の各層におけるCaとPの濃度変化を定量分析し, 次のような結果を得た。下顎頭軟骨の中間層には, SとCaが微量に存在するが, Pは検出されない。肥大層上部ではSの濃度が減少し, CaとPの濃度が急激に上昇する。この層には, アパタイト結晶と考えられる顆粒状構造物が出現することから, 石灰化開始部位であることが推察される。肥大層中部から下部にかけては, CaとPの濃度はさらに上昇し, 顆粒状構造物からなる成熟した石灰化球との関連性が明らかになった。骨化層では, CaとPの濃度は, 肥大層下部よりも, わずかな増加を示した。
  • 江川 薫, 中村 輝夫, 谷内 良弘
    1980 年 22 巻 3 号 p. 418-421
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    発育期のラットの骨口蓋の表面には, きわめて著しく基質が新生され, 多数の血管孔が開口している。生後1~10週齢のWistar系ラットの骨口蓋を試料として, 走査電子顕微鏡写真をもとにして, 骨口蓋の表面に開口している血管孔の単位面積当りの個数について計測し, 週齢の増加に伴う骨口蓋の血管孔の密度の変化について検索した。
    発育初期の生後1~4週齢の骨口蓋の表面には, 著しく基質が新生されており, 一様に大型の多数の血管孔が不規則に開口していて, 血管孔の密度は, 週齢の増加に伴って急激に増加する。さらに, 生後4~6週齢では, 血管孔の周縁部の基質が新生し, 血管孔の密度はほぼ一定の値をとる。生後4~6週齢の血管孔の密度は, 発育過程で最も高い値を示している。生後7週齢以降では, 基質の新生が緩慢になり, それに伴い血管孔は狭窄され, 小型化し, 血管孔の密度は徐々に減少して, 生後10週齢では, 4週齢の1/5にまで減少する。
  • 山本 哲, 塚本 良久, 大野 博重, 坂田 三弥
    1980 年 22 巻 3 号 p. 422-431
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ネコの下顎骨骨膜にメチレン・ブルー生体染色を施し, 当部位に存在する2種類の器官化した神経終末, すなわち樹枝状終末 (bush-like nerve ending) および有被膜性小体 (small encapsulated corpuscle) の形態と分布状態について検索し, つぎの結果を得た。
    樹枝状終末は唇頬側・舌側骨膜の全域にわたってみいだされ, 下顎骨の片側あたりの出現数は, 唇頬側のものが130~416個であり, 舌側のものが5~17個であった。一方, 有被膜性小体は唇頬側のオトガイ部骨膜に局在し, 下顎骨の片側あたりの出現数は31~79個であった。
    これらのことから, 体外刺激をより受けやすいと考えられるオトガイ部骨膜には, 線維径の大きい, 器官化のより進んだ神経終末が存在し, これに対して, 体外刺激が少ないと考えられる舌側骨膜には, 線維径の小さい, 単純な形態の終末しか存在せず, 終末の出現数も少ないことが明らかになった。
  • 日高 三郎, 石橋 一成, 松下 義雄
    1980 年 22 巻 3 号 p. 432-442
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans HS 6菌株の温度依存の細胞溶解について調べたところ, グルコース, シュクロース, マルトース添加培地で細胞溶解を生じ, 糖を加えない時とフルクトースを添加した時には溶解を生じなかった。
    このグルコース添加培地における, 細胞溶解に対し, 解糖系阻害剤と細胞壁合成阻害剤では溶解阻止が見られ, DNAとRNA合成阻害剤では, 溶解促進が見られ, 蛋白質合成阻害剤で幾分か溶解阻止が見られた。
    グルコースの代りにN-アセチル-D-グルコサミンを添加したところ, グルコースの1/25濃度で細胞溶解だけが生じた。このN-アセチル-D-グルコサミン添加培地で, 飽和脂肪酸による溶解抑制が明らかであった。
    これ等の結果, HS6菌株は飽和脂肪酸合成において温度感受性であり, 高温で膜弱化が生じ, その為ショックにより壊れ易い性質に変化していると考えられた。
  • 林 善彦
    1980 年 22 巻 3 号 p. 443-453
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    高等動物の歯髄には豊富な血管, 神経があり, 象牙芽細胞は規則正しく配列し極性がみられる。しかし, メダカのように歯髄に血管のない動物の歯髄細胞の微細構造については解明すべき点が多いとされている。そこでメダカの歯髄細胞を電子顕微鏡的に観察し次のような結果を得た。歯乳頭および萌出歯の歯髄細胞の細胞内小器官の配列には, 極性がみられなかった。さらに歯髄細胞に栄養を供給する歯胚, 萌出歯の周辺部毛細血管の構造に違いはみられず, Bennettらの分類によるtypeA-1-α に相当する構造がみられた。萌出歯の歯髄先端部には, ほとんどの場合1ないし2個の壊死細胞がみられた。歯髄細胞に極性のみられない点, および萌出歯歯髄に壊死細胞のみられる点は, 共にメダカ歯髄に血管が存在しないことと関係があると考えられる。
  • 林 弘之, 佐々 昭三, 小鹿 真理, 古山 美幸, 中山 義之
    1980 年 22 巻 3 号 p. 454-464
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    下垂体と顎下腺の内分泌学的な関連を調べるため, ラット顎下腺摘出後の下垂体前葉細胞について検索した。その結果, 摘出後の下垂体前葉細胞に生じる変化は, Gonadotrophのみに認められた。雄では摘出後1日目でその細胞内の顆粒数が増加し, 3日目以降では正常値であった。雌では摘出後1日目で減少し, 3日目以降は正常値であった。血中LH量は, 雄では摘出後1日目で減少し, 3日目では正常値に回復するが, 再び増加し7日目になると最高値を示し, その後徐々に正常値に近づいた。また雌の血中LH量は摘出後1日目で減少し, その後急激に増し, 3日目には最高値を示し, 7日目までに正常値に回復した。一方血中FSH量は雌雄共に顎下腺摘出による影響は認められなかった。
    以上のように, 顎下腺摘出による下垂体の反応は1~7日のうちに出現した。しかも, 顎下腺摘出によるGonadotrophの顆粒数, および血中LH量の変動は, 雌雄によって差が認められた。また雄においては, 摘出後1日目でLHの放出が抑制されている可能性が示唆された。
  • 福井 一博, 三宅 洋一郎, 橋本 加代子, 小林 浩明, 守山 隆章
    1980 年 22 巻 3 号 p. 465-469
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans HS-6株の脂肪酸による増殖阻害を検討した。10-4Mにおいて, 飽和脂肪酸 (8種類) 及びtrans型不飽和脂肪酸 (5種類) の阻害効果は見られなPかったが, cis型不飽和脂肪酸 (エルカ酸を除く6種類) の阻害効果を認めた。オレイン酸による増殖阻害は, S. sanguis, S. salivarius及びS. mitisよりS. mutansにおいて強く観察された。S. mutansのオレイン酸増殖阻害は, serotype bに属するBHTとFA-1株において弱かった。
    次にS. mutans HS-6株の粗酵素を用い, 脂肪酸による不溶性グルカン合成阻害を調べた。飽和脂肪酸 (8種類) 及びtrans型不飽和脂肪酸 (3種類) は, ほとんど阻害しなかったが, trans型 (2種類) 及びcis型 (7種類) 不飽和脂肪酸は, 合成を阻害した。
    オレイン酸の種々の菌株の不溶性グルカン合成阻害は, S. mutans HS-6, HS-1及びIngbritt株において強く, AHT-FA-1及びBHT株において弱く見られた。また, NCTC 10449, OMZ 65, OMZ 176及びKIR株ではオレイン酸による不溶性グルカン合成の促進傾向が観察された。
  • 申 富雄, 杉山 裕, 鈴木 いくよ, 滝口 励司
    1980 年 22 巻 3 号 p. 470-474
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    胎生期後半のヒトの胎児の大腿骨体の中央部の割断面を用いて, 中心管腔壁の主として基質形成について, 電界放射型走査電子顕微鏡で観察し, 次のような結果を得た。
    中心管腔壁には休止面と吸収面とが隣在している。休止面は一定方向に走向している未石灰化の膠原原線維束で形成されており, 表面には不完全に形成された大型の不定形の骨小腔が散在している。吸収面は多数の不定形の浅い吸収窩の集合からなっており, 管腔壁の浅層が吸収されている。休止面の最表層の所々には, 直径5μ 前後の球形または不定形の構造物が散在している。この構造物には密な未石灰化の膠原原線維網で形成されている不定形の構造物と, きわめて密な未石灰化の膠原原線維網で形成されている球状構造物と, きわめて密な膠原原線維網と, 密で不明瞭な石灰化した膠原原線維網とで形成されている球状構造物とが認められる。球状構造物は, 中心管腔壁の基質を形成しているものと考えられる。
  • 大田 康男
    1980 年 22 巻 3 号 p. 475-480
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    NADP依存性Isocitrate Dehydrogenase (ICDH) の等電点を異にする2つのIsozymeの構造と生理的機能の関係を解析する目的で, Cytosol由来の等電点の低いICDHを牛耳下腺から単離し, その活性部位を構成しているアミノ酸残基について検討した。アミノ酸残基の修飾は, Methylene blue (M. B) を増感剤とした光酸化と, Muhlrad9) らその他の方法に準じた, Diethylpyrocarbonate (DEPC) によるAcyl化の方法を使って測定した。その結果, 1) M. Bに よる光酸化では, His. 残基のpH依存性パターンと類似性を示した。2) DEPCでAcyl化されたHis. 残基は, ICDH1分子当り4ケ, 光酸化で失活したICDHでは2ケだけであった。3) NADPは, 光酸化, DEPC処理, 何れの場合にもICDH活性をprotectするが, 基質ではその効果が認められなかった。以上のことから, このICDHの活性部位としてNADPを結合する部位は, 基質結合部位とは別の所に位置し, 活性発現に必須のものとして, 1分子当り, 少なくとも2ケのHis.残基を含んでいると考えられる。
  • 大田 康男
    1980 年 22 巻 3 号 p. 481-486
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    牛耳下腺Cytosolから単離したNADP依存性のIsocitrate Dehydrogenase (ICDH) について, その分子的性状と生理的機能の関係を明らかにする目的でPalmityl-CoAによる阻害効果を検討した。酵素活性は反応の結果生ずるNADPHの増加を340nmの吸光度から測定した。その結果, pI=5.1のこの酵素は, 超遠心による沈降速度が, bufferの塩濃度によって著しく変化した。Palmityl-CoAによる阻害の結果, 48, 000±2, 000の二つのsubunitsに解離し, 完全に失活した。更に, この失活したICDHは, 10mMの基質と3mMのMn2+及び1mg%のB. S. Albuminの存在で, 0.05M Tris-citrate buffer中に透析すると, 約20%活性が回復した。従って, このICDHに対して, 基質と競争的に働くPalmityl-CoAの阻害作用は, 基質の生理的濃度でも10-5Mのオーダーで働くNADPHとの協働的阻害作用の他に, この酵素蛋白の解離会合を伴なった機構で働いているものと考えられる。
  • 峯山 良, 真田 一男
    1980 年 22 巻 3 号 p. 487-492
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺cell-free系におけるアミノ酸取り込み活性を肝cell-free系と比較した。cell-free系調製に用いるpH5酵素画分および全リボゾーム画分は, isoproterenol刺激ラットの顎下腺から肝の場合と同様な操作によって得ることができた。得られたpH5酵素画分の酵素活性は, 肝のそれと同様の活性をもつことがわかった。また, 全リボゾーム画分は合成活性の高い, 重いポリゾームを含むことが, ポリゾーム沈降パターンからしめされた。反応系におけるMg2+濃度の影響をしらべたところ, 最適濃度は4 mM~8 mMであり, 肝と同様であった。poly U存在下でのphenylalanine取り込みに及ぼすMg2+濃度の影響は認められなかった。これは肝との著しい相違点である。
  • 五十嵐 敦子
    1980 年 22 巻 3 号 p. 493-501
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    著者等は, さきにIsoproterenol投与により, ラット顎下腺遊離核のRNA polymerase (I, II) 活性が増加すると共にpolymeraseIIの三種ヌクレオチド・三燐酸に対するkmの増大を認めた。
    著者はこれ等の現象を酵素レベルで解明しようとして, ラット顎下腺からRNA polymeraseを可溶化し, DEAE-Sephadexカラムで部分精製した酵素について, その活性の変化及び酵素学的諸性質について検討した。
    Isoproterenol投与15時間後に抽出した酵素は, 粗抽出液, DEAE-Sephadex分画の何れにおいても, 結合型及び遊離型polymerase I活性が対照に比し著明な増加を示したが, polymerase IIは結合型のみ活性の増加を示した。次に, イオン強度, 二価カチオンに対する感受性, km等について検討した。PolymeraseIIは対照と差異を示さなかったが, polymerase Iでは, 薬剤投与により至適Mg++濃度が高い方へ, 至適硫安濃度が低い方へ移動することが認められた。
  • III. ミエロペルオキシダーゼ系による核酸とその構成成分の酸化分解
    小田島 武志
    1980 年 22 巻 3 号 p. 502-512
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    リボ核酸, デオキシリボ核酸及びヌクレオチドなどがミエロペルオキシダーゼー過酸化水素-ハロゲン系で効果的に酸化分解された。
    放射性塩素 (36Cl) を使ったトレーサー実験によって, ミエロペルオキシダーゼと過酸化水素の存在下で塩素がリボ核酸に取り込まれることが判った。アデニンのミエロペルオキシダーゼ-過酸化水素-塩素系による酸化反応における生成物には, 質量数149 (I), 167 (II) 及び185 (III) の3種類の化合物が存在する事実が確認された。これらの質量数から, 化合物Iはアデニン分子中に酸素1原子が取り込まれ, 水素2原子が失われた物質, IIは酸素2原子が取り込まれた物質で, IIIは酸素1原子と塩素1原子が取り込まれた物質と考えると質量数の収支がよく説明される。
  • 黒木 賀代子
    1980 年 22 巻 3 号 p. 513-535
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    formalin-cresol配合剤の消毒作用, 局所作用及び急性毒性を単独のformalin及びcresolと比較してその配合意義を検討し, 次の事実を明らかにした。両者の併用によって微生物発育阻止作用は強くなり, また各成分の蒸発は促進され, 脂肪層における浸透拡散能は増強し, 消毒効果は増大する。また, 応用部位にはformaldehydeとcresolの縮合物が生成され, それが持続的防腐作用を呈する。formalinの強い局所刺激作用はcresolの併用によりやや緩和されるが, 腐蝕作用は逆に増強する。また, 組織蛋白凝固変性作用も増強し, 蛋白層におけるformaldehydeの浸透拡散は強く抑制され, 作用は限局化し, 更に, 両者の併用は急性毒性を低下させる。故にformalinとcresolの併用は消毒効果を上げ, 副作用と毒力を減弱させ, 実際治療上極めて有意義である。両者の配合比は消毒作用の点でformalin 50%: cresol 50%が良いが, formalin 70%: cresol 30%であっても著しい支障は来たさない。
  • 日高 三郎, 石橋 一成, 松下 義雄
    1980 年 22 巻 3 号 p. 536-541
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streplococcus mutans HS 6菌株は, 37℃, TSMG+20mMグルコース培地で, マイトマイシンC, リファンピシン, オレイン酸, リパーゼ及びクロロホルムによって細胞溶解を生じた。この時, 2-DGを加えると細胞溶解を阻止することができた。一方, TSMG+20mMフルクトース培地では, リファンピシンとリパーゼによって細胞溶解を生じた。これらの結果から, DNA, RNA合成を阻害することにより, 細胞膜形成が阻害されることが推測された。
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