歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
39 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 岩佐 由香
    1997 年 39 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    永久歯歯式が5134/4134=50とされている有袋類のハイイロジネズミオポッサム (Monodelphis domes-tica) を用いて, 歯堤と歯胚の発生様式および細管エナメル質の構造とエナメル細管の機能について, 組織学的検索を行った. 12, 16, 18日齢の観察から, 上・下顎の乳犬歯・第3乳臼歯・第1大臼歯および上顎の第1乳切歯・第2大臼歯の歯胚に, 代生歯堤ないし代生歯胚が確認された. 上顎第4切歯部と下顎第1切歯部では, 乳歯の歯胚が退縮するのが認められた. 歯堤は上顎第1乳切歯部を除き, 上・下顎でそれぞれすべて連続し, 下顎第3大臼歯部以外の各歯胚の近心あるいは遠心の部位で口腔上皮と連絡していた. すなわち, 上顎第1乳切歯, 上・下顎の乳犬歯・第1大臼歯は, 第一生歯 (乳歯) が永久歯化し, 上顎第4切歯および下顎第1切歯は, 第二生歯 (代生歯) が永久歯化したと推測される. 上・下顎の第3乳臼歯のみは, 第二生歯 (第3小臼歯) に交換することが確認された. エナメル結節, エナメル索, 中間層というエナメル器の組織分化は, 真獣類と同様に観察された. エナメル小柱は, エナメル象牙境から斜めに派生し, 咬頭頂へ向かうが, エナメル質表面近くになると急に屈曲し, 周囲を小柱間エナメル質に囲まれていた. エナメル細管は, エナメル象牙境付近では, エナメル小柱・小柱間エナメル質に分布し, 1本のエナメル小柱内に複数の細管が存在することもあった. エナメル質中層から表層では, エナメル細管は各エナメル小柱内に1本ずつ分布し, エナメル象牙境からエナメル質表面近くまで連続した1本のエナメル細管が確認されたが, 小柱間エナメル質には認められなかった. エナメル細管が1個のエナメル芽細胞と深く係りあって形成されたものと推定できる. エナメル細管内に, 象牙芽細胞の突起である象牙線維が象牙細管から連続して, 分枝して分布しているのが認められた. これは, 象牙芽細胞の突起もエナメル細管の形成に関与することを示すと考えられる. 塩化ストロンチウムおよびテトラサイクリンの生体投与実験を行った結果, 両者がエナメル細管およびエナメル質の表面近くまで達しているのが検出された. これは, 象牙芽細胞の関与による, エナメル細管を介した物質の輸送機能があることを示している.
  • 塩澤 光一, 神山 かおる, 柳沢 慧二
    1997 年 39 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    食品の付着性がヒトの咀嚼行動に及ぼす影響を調べるために, 米デンプン糊 (RP) を11名の成人被験に咀嚼させ, 咬筋 (M) および顎舌骨筋 (MH) から表面電極を用いて筋電図 (EMG) を導出して嚥下までの咀嚼時間およびMH-EMG活動量を計測した. また試料のテクスチャーを分析した. RP咀嚼中, 口腔内の舌の動きをある程度反映するMH-EMGには持続的な活動が嚥下まで認められたのに対し, Mにはほとんど筋活動が認められなかったことからRPは主に口腔内での舌運動によって咀嚼されることが示された. RPの濃度が低下するのに伴い付着性は減少し, また咀嚼時間およびMH-EMGの活動量は有意に減少した. プランジャー表面を濡らすと付着性は減少し, また口腔内が湿った状態では咀嚼時間は有意に減少した. これらの結果から, RPの付着性の変化が嚥下までの咀嚼時間に大きな影響を与えていることが示唆された.
  • 東 一善, 五味 敏昭, 岸 好彰, 高橋 和人
    1997 年 39 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ラットに交感神経刺激剤であるイソプロテレノールを投与して顎下腺主導管上皮中に存在する刷子細胞の微細構造の変化を透過型および走査電子顕微鏡にて観察し, 加えて刷子細胞の微絨毛の長さを測定し統計的に処理した. その結果, イソプロテレノール投与後0~120分では刷子細胞の微細構造は先人の報告にある刷子細胞の構造と差異は認めなかった. しかし投与後300分では刷子細胞中の粗面小胞体の層板構造は認められず, 多くの小胞が認められる様になった. イソプロテレノールを投与すると脂肪酸族アミノ酸, 特にアラニン, グリシン等が多量に分泌されることが知られており, またその分泌が最大となるのは投与後300分前後であることから, この刷子細胞の変化は脂肪酸族アミノ酸による可能性が示唆された. 同時に刷子細胞の微絨毛の長さが非常に長くなり, 一部は約2μmにも達した. 刷子細胞中にはアクチンフィラメントが豊富なことから, この変化は顆粒管より分泌される上皮成長因子に影響された可能性が示唆された.
  • 長谷川 直樹
    1997 年 39 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ビスホスフォネート新誘導体disodium dihydrogen (cycloheptylamino) -methylene-1, 1-bisphos-phonate (cimadronate, YM175) はハムスター実験的歯周疾患において強い歯槽骨吸収抑制作用を示す. 本実験はcimadronateが破骨細胞の機能および形態に及ぼす影響を調べることを目的とする. ハムスターは庶糖含有粉末飼料で飼育するとともに, 下顎第1臼歯 (M1) 歯頸部を手術用縫合絹糸で結紮し, 歯周疾患を起こさせた. 歯槽骨吸収量は, M1のエナメル-セメント境と歯槽骨頂の間の面積を軟X線撮影により算定した. cimadronateを0 (対照), 0.03, 0.1および0.3mg/kg, 週2回皮下注射した. その結果, 結紮後4週目における各群の歯槽骨吸収量はそれぞれ1.05±0.31, 0.95±0.25, 0.59±0.14および0.68±0.14mmmm2を示し, cimadronate投与により顕著に骨吸収が抑制された. 絹糸結紮4日後におけるcimadronate 0.1および0.3mg/kg投与群の破骨細胞数は, 対照群に比較して約3倍に増加した後, 徐々に減少した. 電子顕微鏡による破骨細胞の観察では, 波状縁 (ruffled border) の不十分な形成が観察され, cimadronateが破骨細胞の機能を障害することが示唆された.
    以上の結果から, cimadronateは破骨細胞数を増加させる一方で, 本細胞の機能を障害し, 結果的に骨吸収を抑制するものと考えられた.
  • 清水 義信, 菅原 裕子, 清水 義之, 三木 美麗, 安部 敏, 山下 忍
    1997 年 39 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    破骨細胞は造血幹細胞のマクロファージに分化するstem cellsから形成され, その増殖因子と分化因子で破骨細胞の形成を増加させることができる. ヒト末梢血からリンパ球/単球を取り出し, マクロファージ・コロニー刺激因子 (M-CSF) を加えて培養すると4日から非付着細胞と付着細胞が増加し, DNA合成は7, 9日に高い活性が示され, 破骨細胞様細胞数は7日より14日培養で増加した. 1α, 25 (OH) 2D3を培養0日で加えると破骨細胞様細胞は減少し, 7日で加えると増加した. P. gingivalisを加えたPBLに破骨細胞様細胞の形成が増加した. 歯根切片上にリンパ球/単球を培養してpit形成を調べると明らかにpitが認められた. 以上のことから, 末梢血の成熟マクロファージが増殖により, blastogenesis (幼若化) してその1部からM-CSFまた1, 25 (OH) 2D3により破骨細胞の形成が可能になったと考えられる.
  • Yohko Kohno, Shizunari Obara, Shotaro Hojo, Tetsuhiko Tachikawa, Shusa ...
    1997 年 39 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    口腔前癌病変および扁平上皮癌におけるフォドリンの局在を免疫組織学的に検索した. 正常粘膜上皮および白板症では, 上皮の各細胞層の細胞膜および基底細胞の細胞質内に瀰漫性に局在した. 高分化型扁平上皮では, 癌胞巣のいずれの細胞の細胞膜でもフォドリンの局在は減少するが, 癌胞巣辺縁部の基底細胞では正常粘膜の基底細胞と比較し, 細胞質内のフォドリンは増加していた. 初期扁平上皮癌や低分化型扁平上皮癌では, 癌胞巣辺縁部の増殖域の細胞にフォドリンの消失が認められた. 以上の結果より, 癌細胞でのフォドリンは様々な局在変異が認められ, 特に, 増殖域に位置する細胞ではフォドリンの消失を認めたことから, フォドリンは細胞分化や増殖に関与していることが示唆された.
  • Kaname Hirai, Syosyu Hoshino, Yukinaga Shibata, Setsuo Fujimura, Takes ...
    1997 年 39 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 1997/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
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