歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
21 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 吉田 寿穂, 井田 亮, 竹中 武彦, 玉田 博視
    1979 年 21 巻 4 号 p. 587-609
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Stone flounder (Kareius bicoloratus) の顎歯をenameloid, dentine, teetha ttachmentの3部に分けて光顕的および走査電顕的に検索し, 次の結果をえた.
    1) enameloid, 顎歯の歯尖部はcap enameloidで, 基底部はcollar enameloidによって被覆されていた. cap enameloidはtubular enameloidであり, これを走査電顕的に観察すると, enameloid表面に開孔する0.6-2μ の小孔と孔内より突出する線維様物が認められた. なお, capおよびcollar enameloidの境界部には切痕状の分界溝が存在していた.
    2) dentine, 象牙質はorthodentineとhomogeneous dentineとで構成され, dentino-enameloidjunction 直下約25μ 範囲内にはつぎの3種の線維束が混在して認められた. すなわち, 軸径約0.3-2μ の細線維からなる疎な外周線維束, つぎに象牙質深層から表層に向い外周線維束に移行する軸径約10-15μ の粗大線維束, および根尖のhomogeneous dentineで多くみられる軸径約20μ の交織性線維束である. 象牙細管は髄壁より表層へ放射線状走行をとるが, peritubular dentine, 並びに象牙線維などは認められず, むしろ歯髄表層に密に分布する細脈管との組織的関連を窺わせdentinal fluidのtubleというべき組織像を現わしていた.
    3) teeth attachment, 顎歯と歯足骨との接合部は, disk形態に一致し膠原線維が渦巻様の網目状線維走行を示し, さらに隣在歯とは結合織中間叢による強固な保定と類骨組織への置換移行が窺われた.
  • 小沢 和子
    1979 年 21 巻 4 号 p. 610-621
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    カドミウムの硬組織形成障害作用のメカニズムを明らかにするために, 塩化カドミウムの細胞毒性に関し, 以下の4点について研究した. 1) 骨および腎由来培養細胞の生存および増殖に対する作用について比較検討した. 塩化カドミウムの50%増殖阻止濃度は, ラット頭頂骨由来細胞において2.34μM, ラット腎皮質由来細胞において11.83μM, ラット腎髄質由来細胞において2.37μMであり, 腎皮質由来細胞に比し骨由来細胞は感受性が高く, 骨組織は腎皮質の障害を生じるより低濃度で障害をうける可能性が示唆された. 2) 塩化カドミウムの殺細胞作用は塩化亜鉛により拮抗された. しかし塩化銅は拮抗作用を示さなかった. 3) 塩化カドミウムの細胞周期上の作用点を明らかにするためにフローマイクロフルオロメトリーを用いてFM3A細胞に対するカドミウムの作用を検討した. 塩化カドミウムは22.0μMにおいてS期細胞の集積とG2+M期細胞の減少を生じ, S期からG2+M期への進行を阻止する作用を示した. またG0期細胞および異常なG2期細胞を出現させた. 塩化カドミウムは細胞を分裂周期からはずし, G0状態に止めることにより細胞増殖を抑制する作用と, G1およびG2期細胞のDNAの耐酸性を低下させる作用を示した. 4) FM3A細胞における, カドミウム22.0μMによるG0期細胞およびG2期異常細胞の出現は亜鉛 (22.0-44.0μM) 投与により用量依存性に阻止された.
  • 鈴木 いくよ, 後藤 清, 後藤 周二, 滝口 励司
    1979 年 21 巻 4 号 p. 622-628
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    骨小腔壁の微細構造を, 骨の改造と関連づけて, 立体的に検索するために走査電子顕微鏡を用いて観察した。ウサギの大腿骨体の中央部を, ダイヤモンドディスクによって, 3×5mmに切り出し, 2.5%グルタルアルデヒドによって固定し, アルコール系列脱水後, 液体窒素中で凍結割断し, さらにトリプシン処理を施して, 骨小腔壁を露出させた。これにアセトン系列脱水, 臨界点乾燥, 白金のイオンスパッタコーティングを施して, 走査電子顕微鏡で観察した。割断面の大部分は層板を形成しており, 扁平な骨小腔が規則的に排列しているが, 一部は基質線維が不規則に走向しており, 不定形の骨小腔が散在している。骨小腔壁は直径0.5μ 前後の球状構造物と膠原線維とでおおわれているものと, 膠原線維のみでおおわれているもの, および滑沢なものとに大別できる。球状構造物と, 膠原線維との骨小腔壁での分布は一様でなく, 壁に癒合して基質を形成している状態も様々である。
  • 冨沢 万之助, 本田 寿子, 平田 佳子, 田近 志保子
    1979 年 21 巻 4 号 p. 629-636
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    sanguisの同定には, 現在でも生物学的性状が重視されているようであるが, 緑色レンサ球菌中には, 生物学的性状がS.sanguis type Iに類似しているが, 血清学的には異なる菌株のあることと, 抗原の制造が比較的容易であることなどから, 本菌種の同定は血清学的に行うべきものと考え本研究を試みた。
    抗原はRantz and Randall法によって作り, 抗血清はフォルマリンで処理した菌体をウサギに注射して作った。血清学的実験には沈降反応 (重層法) を用いた。
    多くの分離菌株で作った2倍稀釈抗原をもって, 色々の抗血清について, 試験的に沈降反応を行って, S.sanguis type I抗血清に早く強く反応する39菌株を得た。さらに, これらの菌株について実験し, 35株をS.sanguis type Iと同定した。
    S.sanguis type IはChallis株およびM-5株と血清学的にほぼ同じような性状を示すが, レンサ球菌H群8144株, 12396株, F90A株, Wicky株などとは異なるようである。
  • 野上 勇
    1979 年 21 巻 4 号 p. 637-666
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎による歯周組織, 特に歯槽骨変化の研究において, 従来, その観察範囲は歯槽頂に近い部分に限られていた。限局した歯牙の辺縁部歯周組織に加えられた障害による歯槽骨変化を, その周囲に止まらず, 広い範囲にわたって観察しようと試みた。
    犬の下顎第3小臼歯歯頸部の歯周組織に実験的にさまざまな型の障害を起こさせ, その後の実験期間 (36-120日) を前半と後半に分け, 2色の硬組織ラベリング剤 (テトラサイクリンとカルセイン) を連続注射した。犬歯から第1大臼歯遠心側におよぶ大研磨片を作製し, 螢光顕微鏡法とマイクロラジオグラフィーによる所見を対照側のそれと比較観察した。
    その結果, 障害を加えた部分に近い歯槽頂に現われる骨変化の他に, その部分を中心とした極めて広い範囲 (犬歯遠心側から第4小臼歯遠心側にまでおよぶ) の歯槽骨内で内部改造の著明な変調が現われることが観察された。
  • 後藤 仁敏, 井上 孝二
    1979 年 21 巻 4 号 p. 667-688
    発行日: 1979年
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    西アフリカのマリ共和国において, 新生代第三紀始新世の地層から発見された, 化石全骨魚類のピクノドゥス類に属する魚の鋤骨一口蓋骨歯について, 歯の形態と配列状態に関する肉眼的観察, 研磨標本の光学顕微鏡的観察, マイクロラジオグラフィー, 走査電子顕微鏡的観察, および粉末試料のX線回折などの方法により, 歯を構成する硬組織の性質を検索した。鋤骨一口蓋骨の下面に歯はトウモロコシ状に, かなり不規則ではあるが11の歯列をなして配列している。歯の硬組織は, おもにリン灰石からなる鉱物質によって構成され, 厚い外層 (エナメル質) とその下の薄い内層 (象牙質) からなり, 内層は歯の辺縁部で下方に細長く突出しており, 本来の歯髄腔は骨組織によってみたされている。歯の外層は, X線透過度の低い高度に石灰化した硬組織で, 内層から連続する細管によって貫かれ, 深層部では叢状に密に交錯する結晶の束からなるが, 表層部では結晶が歯表に直角方向に平行に配列する状態に移行している。酸で脱灰すると外層の硬組織は溶解消失するが, 細管構造は残存してヘマトキシリンに染色される。歯の内層は, X線透過度の比較的高い層で, 脱灰標本ではヘマトキシリンに染色され, 象牙細管の存在する領域と, その周囲をとりまく線維骨様組織から構成されており, 前者の直下には分断された小さな歯髄腔が存在しているが, 後者は本来の歯髄腔をみたす骨組織に移行している。歯の外層と内層との境界は明瞭であるが, 歯の内層と周囲の骨組織とは移行的で, 歯は骨組織と骨性結合により固く支持されている。このような歯の配列状態, 組織構造, 支持様式は, この魚がピクノドゥス類のなかでも, 有殻軟体動物食に著しく適応した仲間であったことを, 示すものである。
  • 三宅 洋一郎, 福井 一博, 橋本 加代子, 守山 隆章
    1979 年 21 巻 4 号 p. 689-692
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯周病の発症において, 歯肉溝に存在する白血球, 特に好中球の役割は重要であると思われる。口腔内では歯垢, 歯肉溝, 唾液中に好中球に対する走化活性が認められている。その中には細菌由来の因子があると思われるが, この報告では口腔細菌のうちでどのような種類の菌が活性を持っているかを測定した。種々の口腔常在菌の培養濾液について, アガロースプレート法により走化活性を測定した結果, 調べた19株のうち, S.mutans5株, S.sanguis2株, S.salivarius, L.casei, L.plantarum, L.acidophilus, C.diphtheroides, C.parvumの培養濾液中に強い活性が認められた。
feedback
Top