本研究の目的はビーグル犬の大腿骨に形成した骨欠損部にPDGF-BBまたはbFGFを局所投与し, 両成長因子の初期骨形成に対する効果を明らかにすることである。術後2日, 1週, 3週, 7週で屠殺し, 骨の創傷治癒過程を病理組織学的に対照群と比較観察した。その結果以下の所見を得た。
術後2日の対照群では軽度の血餅および炎症細胞の浸潤は認められるが, 未分化間葉細胞の増殖, 毛細血管の拡張増生などの治癒の所見は全く認められなかった。術後1週においては骨芽細胞様細胞の増生がみられたが, 骨基質の形成はほとんど認められなかった。成長因子投与群 (PDGF群およびbFGF群) では術後2日において毛細血管の増生, 未分化間葉細胞の増殖が認められた。さらに術後1週においては未分化間葉細胞の増殖, 線維の形成が著明であり, 骨基質の形成も認められた。
新生骨梁の形成は対照群では, 術後3週に窩洞壁および骨髄側 (窩底部) から細い線維性骨が形成されはじめ, 窩洞の約半分を満たしていた。窩洞全体に新生骨梁の形成が観察されたのは術後7週であった。成長因子投与群では術後3週で細い線維性骨が窩洞全体に観察され, 術後7週では太い骨梁と層板骨が認められた。術後3週および7週における骨梁の石灰化をテトラクローム染色で比較すると, bFGF投与群はPDGF投与群より多くの石灰化を伴った骨梁が認められた。
以上の結果から, イヌ大腿骨に形成した骨欠損部へのPDGFおよびbFGFの局所投与は初期骨形成を促進したと考えられた。また, bFGFはPDGFよりさらに骨欠損の治癒に対して効果が認められた。
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