歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
33 巻, 3 号
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  • 細川 洋一郎
    1991 年 33 巻 3 号 p. 203-244
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    放射線の骨代謝に及ぼす基本的な影響を明らかにする目的で, 全身照射ラットの抜歯創の治癒過程を形態学的に検索した。
    全身照射群では, 抜歯創の治癒過程は非照射群に比し抜歯窩内部で著しく遅延した。特に, 初期においては肉芽組織の形成不良および骨新生の障害が観察された. それに対し, 外側の骨膜性骨新生には抜歯窩内部の骨新生ほどの遅延は見られなかった。また, 中隔歯槽骨部の破骨細胞は少なく, 核数の減少がみられ, 中隔歯槽骨の吸収量も減少した。電顕的検索においても全身照射群では, 破骨細胞ならびに骨芽細胞は微細構造的に, 種々の退行性変化を示しており, その変化は組織学的検索の結果に良く一致していた。
    本研究にて観察された抜歯創の治癒過程の遅延は, 主に造血組織の機能障害を中心とする全身的障害により引き起こされた, 骨芽細胞や破骨細胞の微細構造的変化に基づく骨代謝障害によることを示唆すると思われる.
  • 村松 裕之, 岩田 幸一, 坪井 美行, 辻本 知尋, 佐藤 巌, 竹内 正行, 佐々木 正名, 角野 隆二
    1991 年 33 巻 3 号 p. 245-260
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    顎関節の電気刺激に応答する顎関節駆動ニューロン (TMJD. Neuron) 活動をネコ大脳皮質第一次体性感覚野から記録し, その分布と応答特性を検索した。本研究では, TNJD, Neuron89個について検索を行った。TMJD. Neuronは, 下顎の受動的下制によりスパイク頻度が増加するもの (Fa-type: 23個), 頻度が減少するもの (Dp-type: 4個), 変化が見られないもの (Non-type: 62個) に分類された。下顎の受動的下制に応答するTMJD. Neuronの閾値はNon-typeより有意に低く, 電気刺激のピーク潜時はNon-typeより有意に短い値を示していた (Mann-WhitneyのU-test: P<0.01)。Fa-typeは, さらに, Fa-sus. type (Fa-sustained) とFa-tran、type (Fa-transient) に分類された。Fa-Sus. typeには下顎の受動的下制の角速度および角度に依存して応答を変化させるものが見られ, 開口速度ならびに角度を符号化していることが示された。下顎の受動的下制に応答するTMJD. Neuronのほとんどは歯根膜・顔面皮膚・口腔粘膜からの入力を受け, これらの感覚とともに顎顔面口腔領域の運動感覚情報処理を司っていることが示唆された。
  • 笹栗 健一
    1991 年 33 巻 3 号 p. 261-274
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヒト歯根膜細胞 (HPLF) の代謝機能の特徴を知ることを目的として, 培養ヒト歯根膜細胞を材料に, ノーザンプロット分析を用いて, transforming growth factor-β(TGF-β), liver/bone/kidneytype alkaline phosphatase(L/B/K ALP), osteopontin/2ar (OP), osteonectin/SPARC (ON) の各遺伝子の発現様相を, 骨系細胞におけるこれらの遣伝子発現と比較検討した。その結果, HPLFは, TGF-β, L/B/KALP, ON遺伝子を発現しており, とくに, TGF-β, ALP遺伝子の発現が骨系細胞よりも顕著であった. しかし, OP遺伝子は発現しておらず, 32PO4を代謝指標として用いた蛋白質合成の検索においても, OPは合成されていない事が確認された。以上のことから, HPLFは形態的には線維芽細胞様であるが, 多くの骨系細胞の細胞外基質蛋白の遺伝子を発現していることから, 機能的には, 骨系細胞と類似していることが示唆された。
  • 赤木 巧, 竹下 信義, 野島 鉄人, 大関 豊寿, 藤井 宰, 岩間 豊, 鳴神 茂
    1991 年 33 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット顎骨および皮下組織内に埋入された合成水酸化アパタイト (HA) 表面に出現する多核巨細胞について酸性フォスファターゼ (ACPase), 酒石酸耐性酸性フォスファターゼ (TRAP) を用い酵素組織化学的に検索した。顎骨内埋入HA表面に出現した多核巨細胞はHAとの界面に波状縁様構造を有し, また酵素組織化学的にACPase, TRAP活性を示した。これらの特徴は既存の骨梁表面にみられた破骨細胞に類似していた。また, 多核巨細胞周囲にはTAPR陽性の単核細胞が観察された。一方, 皮下組織内では多核巨細胞は扁平な細胞質によってHAを包囲するように接し, TRAP活性は陰性であった。また, ACPase活性も少数の多核巨細胞に認められたのみであった。従って, HA表面の多核巨細胞は, 顎骨内と皮下組織内で酵素組織化学的に異なる性状を示したことから, HAが埋入される組織環境の影響を受けることが示唆された。
  • Modification of a simple device for measuring pH: demonstration of stable pH values and diurnal variation in human mixed saliva
    Tadasi Sato
    1991 年 33 巻 3 号 p. 281-288
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    薄層標本測定用の平面ガラス電極型pHメータを使用し, 中性紙片で採取した安静時の舌背口蓋間唾液のpHを調べ, 以下の成績を得た。
    1. 口腔を介して15秒間の最大努力呼吸を行った場合に唾液pHは呼吸終了後2~3分間約0.2だけ上昇した。そこで口呼吸や会話による影響を避けながら以下の測定を行った。
    2. 早朝起床前の混合唾液のpHは日中の食前あるいは食後60分までの間に測定した値より有意に低い値であった。
    3.1 被験者の5日間の混合唾液pHの平均値は, 食後0.5~1.5時間におけるpH振幅約±0.5の一過性の変動と覚醒時に高く睡眠時に低いpH振幅が約1の長期的な変動との組み合わせであった。
    4. 本pHメータの測定様式を被覆から非被覆様式に切り替えることにより唾液のpHの他にその緩衝能の指標と成り得る値を数分間で測定出来ることが示唆された。
  • Effect of glutathione depletion on the cytotoxicity of antitumor drugs to cultured human tumor cell lines
    Hisayoshi Okayama, Shigemasa Hanazawa, Hiroshi Fujita
    1991 年 33 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    最近, グルタチオン (GSH) およびGSH関連酵素群の癌化学医法における役割について興味が持たれている。今回, 我々はヒト由来腫瘍細胞培養株を用い, butionine sulfoximine (BSO) 処理によって細胞内GSHを除去し, 制癌剤感受性への影響について検索した。腫瘍は, ヒト由来舌扁平上皮癌 (SCC-25) およびヒト由来骨芽細胞様骨肉腫 (SaOS-2) の培養株を使用した。制癌剤は, nimustin (ACNU), chlorambucil (CLB), melphalan (L-PAM), bleomycin (BLM), adriamycin (ADR), mitomycin C (MMC), cisplatin (CDDP) の7種を用いた.0.2mMBSO, 24時間処理によって, SCG25では対照の25%, SaOS-2では対照の10%程度に細胞内GSH量は低下した。制癌剤の細胞障害性においては, CLB, LPAMの場合, GSH除去によって, その障害性が著明に増強された。しかし, その他のACNU, BLM, ADR, MMC, CDDPではそのような効果は認められなかった。
    これらの結果より, 一部制癌剤の細胞障害性が, 細胞内GSH除去によって増加したことが認められ, 制癌剤と非制癌剤との併用による効果は, それらの組み合わせによっては, その有効性が期待できるものと思われた。
  • Effect of diabetes on the sulfated glycosaminoglycan structure of rat submandibular gland
    Aiko Kamada, Masahiro Kawamura, Joji Okazaki, Tetsuya Sakaki
    1991 年 33 巻 3 号 p. 297-304
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺におけるデルマタン硫酸 (DS) とヘパラン硫酸 (HS) の糖鎖構造の解析とその構造に及ぼす糖尿病の影響を検討した。DSとHS試料は, 常法に従って抽出したグリコサミノグリカン試料からコンドロイチナーゼACおよびABC消化で調製し, その糖鎖構造は, 特異酵素による消化で生成される不飽和二糖異性体をHPLCで分離定量して解析した。
    顎下腺DSでは, 不飽和二糖として主要成分のΔDi-4Sのほかに微量のΔDi-6S, ΔDi-OSが検出され, 糖尿病群においてはΔDi-4Sが増加し, 4Di-OSが減少した。一方, 顎下腺HSの不飽和二糖は, ΔDiHS-OSが主要成分をなし, ΔDiHS-6SおよびΔDiHS-NSは微量であることが明らかになった。また, 糖尿病群では, ΔDiHS-6Sに対するΔDiHS-OSのピーク高さ比が増加した。
    これらの結果から, 糖尿病顎下腺ではDS糖鎖の非硫酸化部分が減少し, HS糖鎖の非硫酸化部分が増加することが示唆された。
  • Effects of methylprednisolone sodium succinate on the growth of hard tissues in the young rat
    Hiroshi Takagi, Kazuhide Kobayashi, Yuzo Kato
    1991 年 33 巻 3 号 p. 305-314
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    成長期ラットの硬組織成長及びその性状に及ぼすコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム (MP-NSS) の影響を検索する目的で本研究を行った。生後5週齢ラットに異なる用量のMPNSS (10.0mg/kg隔日投与, 2.Omg/kg連日投与) をそれぞれ14回腹腔内注射し, 対照群には生理食塩液を投与した。体重は毎日測定し, 屠殺後, 湿性副腎重量測定, ノギスによる上顎骨 (diastema) 及び脛骨の長さ測定, 硬組織内時刻描記法による下顎切歯象牙質の形成量測定, 脛骨の脱脂乾燥重量と灰化重量測定などを行った。さらにCa 代謝に及ぼす影響を知る目的で血漿中のCa及びP量を測定した。その結果, MPNSS投与により両群ともに体重増加抑制, 副腎の萎縮及び骨の成長抑制が認められた。しかし脛骨骨端部の顕微X線像からは骨粗鬆症の所見は認められなかった。また, 血漿Ca, P量も変動しなかった。各種計測値の比較により, 成長抑制の程度は連日投与法の方が隔日投与法より大きいことが確認できた。以上の結果からMPNSS連続投与により, Ca代謝異常を伴うことなく成長期ラットの骨成長や体重増加が抑制される事が確認された。またこれらの副作用は隔日投与を行うことによって効果的に軽減される可能性が示唆された。
  • Immunohistochemical localization of c-myc oncogene protein correlated with malignancy of oral epithelium
    Hiroyuki Kumamoto, Kiyoshi Ooya, Hironobu Sasano
    1991 年 33 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Histological and histometric observations of rat jaw bone after implantation of synthetic hydroxyapatite
    Nobuyoshi Takeshita, Masahisa Inoue, Tetsundo Nojima, Osamu Ishida, Ma ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 320-322
    発行日: 1991/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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