歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
42 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • Jiro Kawada, Koichiro Komatsu
    2000 年 42 巻 3 号 p. 193-205
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    ラット臼歯横断標本をコラゲナーゼ溶液 (0, 8, 16および24units/ml) によって処理した後, 歯根膜の機械的性質の測定および形態学的観察を行った。コラゲナーゼ処理によって, 濃度依存性に歯根膜の最大剪断応力, 最大剪断歪, 剪断弾性率および破壊エネルギーが減少した。機械的性質測定後に作製した組織切片を光学顕微鏡にて観察したところ, 対照標本において歯根膜は中央部または歯槽骨側で破断していたが, コラゲナーゼ処理標本においては主にセメント質表面付近で破断していた。また, 走査電子顕微鏡観察により, 歯根膜コラーゲン線維や原線維の大部分が, 酵素によって分解, 除去されたことが判明した。偏光顕微鏡像の計測においては, コラゲナーゼ処理後, リターデーション値および複屈折性を示すコラーゲン線維の占める面積が著明に低下した。これらの結果から, コラゲナーゼ処理によって, コラーゲン線維の量と密度が減少し, また線維の配列が乱れたために, 歯根膜の強度, 伸展性, 硬さおよび粘り強さが低下したものと推察された。今回の実験によって, コラーゲン線維は荷重を支持するための重要な成分であり, 歯根膜の構造と機能を維持するために主要な役割を担っているという考えを実証することができた。
  • Yuji Amagai, Hiroyuki Yagi, Tomijiro Isari, Shuzo Fujii, Mitsuru Tsuji ...
    2000 年 42 巻 3 号 p. 206-212
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    コイ味覚上皮より調整した膜標品へのアミノ酸結合実験を行い, その結合特性を12種のアミノ酸を用いた交差順応実験でこれらのアミノ酸受容機構が6つに分類されるという電気生理学実験の結果と比較した。その結果, 膜標品へのアミノ酸結合量はアミノ酸濃度依存的であった。また, 味蕾をもたない頭皮膜標品へのアミノ酸結合は無視できる程度で, 結合は味覚上皮の膜標品に特異的であった。実験に用いた各アミノ酸の結合特性から, コイの顔面味覚系にそれぞれのアミノ酸に対する特異的味覚受容部位が存在することが示された。しかしながら, 用いたアミノ酸のほとんど全部の結合を阻害したL-システインの例に見られるように, ある種のアミノ酸は他のアミノ酸の結合を競合阻害する場合もあった。今回の結合実験そのものが電気生理学的に得られたアミノ酸応答特異性をすべて解明するという結果とはならなかったが, コイ味覚系におけるアミノ酸応答特異性は各アミノ酸が味細胞膜上の特異的受容部位に結合することにその根拠を置くことが示唆された。
  • 會本 弘一郎, 田松 裕一, 井出 吉信
    2000 年 42 巻 3 号 p. 213-224
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    上顎骨を中心とする顔面頭蓋における外面緻密質の局所的な縦弾性係数を測定するとともに, 組織構造との関係を考察した。成人男性乾燥頭蓋骨において, 眼窩周囲, 梨状口周囲, 頬骨下稜, 犬歯窩, 歯槽突起の5カ所の測定領域を設定し, 各部位から微小試験片を採取して3点曲げ試験を行い, 試験後に顕微鏡にて試験片表面を観察した。縦弾性係数の値は, 眼窩周囲の辺縁方向 (M) で11.9±3.9GPa, 直交方向 (P) で9.0±3.3GPaであった。同様に, 梨状口周囲は12.6±4.1GPa (M), 10.4±3.2GPa (P), 頬骨下稜部は14.8±3.4GPa (M), 7.2±2.8GPa (P) であった。犬歯窩は, 上下方向 (V) が11.9±3.3GPa, 水平方向 (H) が10.8±3.7GPaであった。同様に, 歯槽突起は9.2±4.1GPa (V), 7.6±4.3GPa (H) であった。顕微鏡による観察では, 値が大きい部位では層板構造が明瞭で密な骨構造を呈し, 値が小さい部位では層板構造は不明瞭で空孔に富む粗槌な構造を呈していた。
  • Keigo Ogata
    2000 年 42 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    糖尿病によって生じる生体防御機能低下の原因を解明するため, マウスを用いてマクロファージ (Mφ) に及ぼす糖尿病および高血糖と高浸透圧の影響を検討した。Mφに及ぼす高血糖と高浸透圧の影響は, 浸透圧を等しく調製したグルコースと塩化ナトリウム2系列のメディウムを用いて検討した。非糖尿病マウスと比較すると, ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスの血漿浸透圧と血糖値は有意 (p<0.001) に高く, Mφの貪食率 (PR) と貪食係数 (PI) は有意 (p<0.01) に低かった。血糖値に対して血漿浸透圧は正の, PRとPIは負の相関を示した。2系列のメディウム中では, PRとPIおよび遊走能 (CTX) は浸透圧に対して負の相関を示した。しかし, PR, PI, CTXそれぞれの値は, 浸透圧が等しければメディウムの種類による有意の差を示さなかった。以上の結果から, 高浸透圧がMφに影響を与え, 糖尿病マウスの生体防御機能を低下させる結果が示唆された。
  • 戸塚 実, 千葉 美麗, 三谷 英夫
    2000 年 42 巻 3 号 p. 233-244
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    顎顔面骨格形態の形成と咀嚼筋を含む軟組織は密接な関係を有している。機械的伸展刺激が筋の成長を引き起こす重要な因子であることは知られているが, その機序については不明な点が多い。本研究は, 筋組織の構築に果たす機械的伸展刺激の影響を明らかにすることを目的とし, マウス骨格筋細胞株 (C2C12) に対して15%伸張 (1秒伸展/1秒弛緩) の機械的伸展刺激を加え, 経日的に, 総核数, 筋管細胞融合率, ミオシン重鎖 (MHC) のアイソフォーム発現について検討した。その結果, 伸展刺激により, 初期には筋芽細胞の細胞増殖活性は亢進し, その後少ない細胞数で飽和状態に達し, 筋管細胞への分化を促進した。筋管細胞は周期的伸展刺激のベクトル方向に対して垂直に配列した。さらに, 伸展刺激は筋管細胞のMHCの発現を亢進した。以上より, 筋の分化において機械的伸展刺激が重要な因子であることが示唆された。
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