ラット臼歯横断標本をコラゲナーゼ溶液 (0, 8, 16および24units/ml) によって処理した後, 歯根膜の機械的性質の測定および形態学的観察を行った。コラゲナーゼ処理によって, 濃度依存性に歯根膜の最大剪断応力, 最大剪断歪, 剪断弾性率および破壊エネルギーが減少した。機械的性質測定後に作製した組織切片を光学顕微鏡にて観察したところ, 対照標本において歯根膜は中央部または歯槽骨側で破断していたが, コラゲナーゼ処理標本においては主にセメント質表面付近で破断していた。また, 走査電子顕微鏡観察により, 歯根膜コラーゲン線維や原線維の大部分が, 酵素によって分解, 除去されたことが判明した。偏光顕微鏡像の計測においては, コラゲナーゼ処理後, リターデーション値および複屈折性を示すコラーゲン線維の占める面積が著明に低下した。これらの結果から, コラゲナーゼ処理によって, コラーゲン線維の量と密度が減少し, また線維の配列が乱れたために, 歯根膜の強度, 伸展性, 硬さおよび粘り強さが低下したものと推察された。今回の実験によって, コラーゲン線維は荷重を支持するための重要な成分であり, 歯根膜の構造と機能を維持するために主要な役割を担っているという考えを実証することができた。
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