口腔細菌による金属イオンの吸着を, 二つの重金属, 水銀および銅についてpH4.0と7.0域で調べた。しかしながら, 二つの金属のうち, 水銀イオンは, 中性およびアルカリ域では, 蒸発や容器壁への吸着のためイオンの損失が起こるので, pH4.0で吸着率を検討した。
高い水銀イオン吸着を示した菌種は, pH4.0域の際に, 供試菌の内で,
Propionibacterium acnes, Treponemadenticolaおよび
Eikenella corrodensであった。銅イオンの吸着については, pH4.0と7.0域において,
P. acnes, Peptostreptococcus anaerobiusおよび
Coryneba6cerium matruchotiiが高い吸着を示した。
これらの口腔細菌の金属イオン吸着能は, 同じ金属イオン濃度では, 従来ウラン等を高率に吸着すると報告されている
Actinomyces levorisぱりも高い値を示した。また, 100度で10分間加熱処理した凍結乾燥菌体への銅イオンの吸着は, 無処理の菌体と比較して, 著しい差異を示さなかった。
また, 細菌への金属イオン吸着は, 金属イオンの添加直後に起こり, 5分後にはプラトに達した。
得られた成績は, いくつかの口腔細菌が金属イオンの高い吸着能を有すること, また, これらの吸着現象は, Freundlichの吸着等温式に従っていることからも物理化学的作用によると考えられる。
抄録全体を表示