歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
38 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 第2報膜電位感受性の相違による機能的種類とその原因機構存在部位
    高橋 雅幸
    1996 年 38 巻 2 号 p. 151-163
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    電顕的に同一形態のfastfiberのみで構成される (第1報) ニホンアカガエル下顎下制筋において, その収縮性が筋線維間で異なることが見い出された。すなわち, K濃度 (膜電位)-張力関係曲線より, 同一膜電位に対する発生張力や張力発生閾値 (膜電位感受性) が異なる3群の筋線維が見い出された。3群間では収縮曲線の形状も異なり, 膜電位感受性の高い群ほど, 活性化・不活性化過程も速い傾向を示した。各群の筋線維の出現率は, 膜電位感受性高が51%, 中が38%, 低が11%だった。
    膜電位感受性の相違の発生原因の場は, 各群とも膜興奮およびcaffeine拘縮に差がないことより, 興奮収縮連関と同一のtriadic junctionにあることが示唆された。しかし, 電顕的に各群のtriadic junctionに形態的差異を認めず, 膜電位感受性の相違はtriadic junctionに存在する分子レベルの興奮収縮連関機構の機能的相違によるものと考えられた。
  • Hirosuke Inuzuka, Atsuhito Okina, Chao Gao, Tadashi Yano, Kazutoshi Oh ...
    1996 年 38 巻 2 号 p. 164-172
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    白人小児に特有に発症するCystic fibrosisの動物モデルであるレセルピン (Res) の連続 (1-7日間) 投与実験を行い, 唾液腺に存在するレセプターの水分分泌機能あるいはタンパク質の分泌機能の変化を検索した。水分の分泌機能は分泌唾液量およびFlow rateから, タンパク質の分泌機能はタンパク濃度, 総分泌タンパク量 (mg/hおよびμg/mg腺湿重量/h) およびタンパク成分の分泌型から調べた。実験動物にはSD系の成熟雄性ラットを用い, 分泌刺激薬にはフィサレミン, ピロカルピン, クロニジン, ノルアドレナリン (Norad), チラミンおよびイソプロテレノールを用いた。分泌唾液量は, Res投与後, 1日目および2日目に有意に増加した。また, 刺激薬によっては7日目でも有意に増加した。しかし, チラミンの催唾作用は投与量の多少にかかわらずRes 投与により完全に抑制された。タンパク濃度には大きな変化は認められなかったが, 総分泌タンパク量はNoradとフィサレミンにより有意に増加した。特にNoradは顕著な促進作用を示した。タンパク成分はNoradのみ大きい影響を受け, 対照群にみられるβ 型をα 型に完全に変換した。
    以上のことから, Res投与はバイオアミンの作用を著しく促進することが示唆された。しかし, 本分析法では異常タンパク質の分泌は観察できなかった。
  • Katsufumi Nanba, Kazuo Todoki, Eiichiro Okabe
    1996 年 38 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Bradykinin (BK) に対するイヌ舌動脈の反応メカニズムを検討した。BKはnorepinephrine (NE) によって前収縮した舌動脈輪状標本を内皮依存性に弛緩させ, この反応はB2-受容体アンタゴニスト [D-Phe7] BKで抑制された。また, BKに反応して引き起こされる内皮依存性弛緩は, 一酸化窒素 (NO) を不活化するhemoglobin, 可溶性guanylate cyclase阻害薬methylene blue, そしてNO合成酵素阻害薬NG-monomethy-L-arginineによっても有意に抑制された。NE非存在下で, BKによって生ずる内皮除去標本平滑筋張力と細胞内Ca2+濃度の増加は, [D-Phe7]-BK抑制性であった。BKは内皮除去標本を濃度依存性に収縮させるが, これもまた [D-Phe7]-BKによって抑制され, 同様に, protein kinase C阻害薬H-7, phospholipase C阻害薬neomycin Bによっても抑制された。しかし, indomethacinは効果的ではなかった。
    以上の結果から, BKは内皮細胞B2-受容体を刺激することによるNO産生を介して舌動脈を弛緩させ, 一方, 平滑筋のB2-受容体にリンクしたphospholipase C活性化に連動して舌動脈を収縮させるが, この収縮反応にはprostanoidsは関連しないことが示唆された。
  • Genichiro Kariya, Noriyoshi Shimizu
    1996 年 38 巻 2 号 p. 182-191
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はheterogeneousな細胞集団である歯根膜細胞の培養中に出現する特異な細胞群の変遷について検討すると同時に, これら細胞群の一部を簡便な方法で分離培養しその性質を検討することである。
    ラット歯根膜細胞を培養すると, 培養8日で細胞中に数個のフォーカスが出現し, 経日的な増大に伴いオステオカルシン (Osc) の発現が認められ, 24日では石灰化結節を形成した。しかしフォーカス以外の細胞ではOscの発現は認められなかった。ペトリパーム培養皿に培養した歯根膜細胞のフォーカスとそれ以外からの細胞を先端を鋭利にしたパスツールピペットにより採取し分離培養した結果, フォーカスより得られた細胞はOsc発現が強く認められたが, フォーカス以外の細胞ではまったく認められなかった。以上より, ラット歯根膜細胞にはOscを強く発現する細胞群と, まったく発現しない細胞群が存在し, 分離培養したこれら細胞群は歯根膜細胞機能や細胞間の相互作用を検討するために有用であると考える。
  • 小松 浩一郎, 千葉 元丞
    1996 年 38 巻 2 号 p. 192-202
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    咬合および非咬合ラット下顎切歯横断切片を用い, 0.5mm/24hあるいは1.0mm/24hの引張り速度で, 歯を顎骨から萌出方向に引抜くことによって得られた歯根膜の応か歪曲線の解析を行った。同一の引張り速度では, 咬合切歯の方が非咬合切歯よりも大きな最大勢断応力を示すこと, 速度の増加に伴う最大剪断応力の増加率についても, 咬合切的歯方が非咬合切歯より大きいことが判明した。弾性係数および破壊エネルギーは最大剪断応力とほぼ同じ傾向を示した。光顕および走査電顕観察により, 歯根膜は中間付近で分離していること, 分離面は滑らかで, 歯の長軸と平行に走る多数の線維が認められた。これらの結果から, 咬合および非咬合切歯歯根膜は, 歯の移動速度の違いにより異なる抵抗力を示すこと, 抵抗力の変化により歯の萌出率を自動的に制御している可能性, 更に萌出率に近い速度で歯を引抜くと歯根膜線維束は中間付近で滑りを起こす可能性が示唆された。
  • 奈良 一彦
    1996 年 38 巻 2 号 p. 203-212
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ウシガエル交感神経節を用い, 節前交感神経幹の順行性刺激により得られるcompound action potential (CAP) を細胞外記録した。全身麻酔薬のペントバルビタール (PB) の投与により, CAPの振幅は著しく減衰した。縦軸にPB存在下でのCAPの振幅の相対値, 横軸にPBの濃度を対数目盛でとり, dose-inhibition curveにより阻害様式の分析を試みた。低Ca2+リンガー液を用いて伝達物質の放出量を減少させた条件下では, PBのCAPに対するdose-inhibition curveはノーマル・リンガー液の場合よりも左方に移動し, PBの見かけ上の阻害様式は競合的であることが示唆された・一方, 3, 4-ジアミノピリジン (3, 4-DAP) で伝達物質の放出量を増大させた条件下ではdose-inhibition curveはどちらの方向にも移動せず, PBの見かけ上の阻害様式は非競合的であることが示唆された。次に交感神経節細胞にアセチルコリン (ACh) を直接投与したときに発生する脱分極応答を細胞内記録し, これに対するPBの効果を調べた。ACh応答もPBの存在下では著しく抑制された。ノーマル・リンガー液中, および, 低Ca2+リンガー液中で測定したdose-inhibition curveは両条件下において右方にも左方にも移動せず, 非競合的な阻害様式であることが示された。以上のシナプス伝達とACh応答に対するPBの阻害様式の違いから, PBはシナプス前膜からの伝達物質の放出機構と, シナプス後膜でのAChレセプターの活性化の両者を阻害することが示唆された。しかし, ノーマル・リンガー液中での実際のシナプス伝達の抑制作用の発現では前者に対するよりも後者に対する寄与が大きいと推測された。
  • Flora M. Fabian
    1996 年 38 巻 2 号 p. 213-225
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    分泌期エナメル芽細胞でのエナメルタンパク質の合成分泌機構を検索するために, 器官培養歯胚にBrefeldin Aを投与して, エナメルタンパク質の合成分泌過程を免疫組織化学的に観察した。培養12日目のマウス臼歯歯胚では, 分泌期エナメル芽細胞のゴルジ空胞, ゴルジ顆粒, 分泌顆粒にエナメルタンパク質による金粒子のラベルが観察されたが, 粗面小胞体には認められなかった。Brefeldin A投与群では, 粗面小胞体からゴルジ装置への輸送が阻害されるため, ゴルジ層板は小胞化し, ゴルジ装置の構造が消失した。また, 粗面小胞体は膨大化して空胞状を示した。この空胞の内部に微細顆粒状構造物が認められ, エナメルタンパク質による金粒子のラベルが観察された。
    以上の観察結果から, Brefeldin Aの投与により, 合成されたエナメルタンパク質は粗面小胞体腔内に存在し, 粗面小胞体からゴルジ装置へ輸送されることが免疫組織化学的に証明された。
  • 内田 昌徳
    1996 年 38 巻 2 号 p. 226-234
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    スナネズミ味細胞の甘味情報変換機序をホールセルパッチクランプ法を用いて研究した。脱分極性パルスにより誘発される外向きK+電流は, 10mM Na-saccharinにより抑制されたが, 甘味を呈するアミノ酸であるD-tryptophanは外向きK+電流を増大させた。Ca2+-ionophoreである5μM ionomycinを細胞外に与えたり, パッチ電極内液に5μM IP3 (inositol-1, 4, 5-trisphosphate) を加えると, 外向きK+電流は増大した。これらの結果から, Na-saccharinとD-tryptophanはそれぞれ異なる味細胞受容体に作用すること, およびNasaccharinの甘味情報伝達機序は細胞内のcAMPレベルを増加させるが, D-tryptophanの情報伝達機序は細胞内のIP3レベルの上昇によって細胞内Ca2+濃度を増加させることが示唆された。甘味抑制物質であるgurmarinは, Na-saccharinのK+電流抑制効果と拮抗したが, D-tryptophanの電流増強効果には影響を与えなかった。これらの結果から, Na-saccharinの受容サイトとD-tryptophanの受容サイトは異なることが示唆された。
  • Takashi Inoue, Masaki Shimono
    1996 年 38 巻 2 号 p. 235-238
    発行日: 1996/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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