歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
17 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 内海 順夫, 王 毅, 佐藤 精一, 山口 洋二
    1975 年 17 巻 4 号 p. 311-332
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    水溶性グアヤアズレンの亜急性毒性実験をおこなった。実験は投与量20mg/kg, 60mg/kg, 140mg/kgの3群とし, それぞれWistar系雌雄ラットの皮下に4週間連続投与した。対照群は5%アラビアゴム溶液を投与した, 大量投与群では体重増加の抑制, 赤血球数の減少および脾における顕著な臓器重量増加を認めた。このほか, 肝でも若干の重量増加をみた。病理組織学的には肝, 脾, 骨髄において赤血球造血に関する異常所見が認められた。肝では線維化による肝実質の破壊とGlisson鞘での血液性細胞の軽度の浸潤をみた。脾は被膜の肥厚, erytholoblastの増生, リンパ濾胞の萎縮消失などがみられた。骨髄ではnormoblastとmegakaryocyteの顕著な減少がみられた。なお, 赤血球に多染性赤血球や菲薄赤血球, および大小不同が若干認められた。これらの所見はとくに雌で著明であった。しかし, 20mg/kgおよび60mg/kg投与群ではこれらの所見は認められなかった。
  • 猪木 令三, 林 毅, 松本 憲
    1975 年 17 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    合成bradykininの外頸動脈内投与によって誘発されるイヌ犬歯下歯槽神経でのfiringに対するmorphineの作用を検討した。Bradykininによって発火される線維は, 歯齦の圧, 触刺激によって発火するactive fiberでなく, 歯髄電気刺激に反応し, 或いは反応しないsilent fiberであった。Morphine前処置は, このbradykinin発火を抑制しなかった
  • 田中 延佳
    1975 年 17 巻 4 号 p. 339-370
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    オス101, メス107頭のカニクイザルの下顎骨を歯牙年齢法によって3年代群に区分し, 下顎の成長過程を投影径20, 実径26, 計46項目の成長変化型にもとづいて調査した。メスの成長期間は短かく, 第3大臼歯萌出前にオトナの状態に近づく。オスは成長期間が長く, 第1大臼歯萌出後の下顎各部の変化量は大きい。下顎の成長期間中に第1大臼歯の近心移動がみられる。この種の動物の下顎の成長は近遠心方向への下顎体の成長変化に特色があり, オスは下顎体の近・遠心端で成長がみられる。メスでは近心端よりも遠心端の成長が盛んで, 近心端は早い時期に成長が終わる。下顎枝の成長はHunterの所見にほぼ合致し, 下顎の上端・後縁・前縁での変化が著しい。下顎の左右間の幅径は下顎体の前後径の成長に比例するものではない。第1大臼歯萌出後下顎枝角には大きな変化はない。下顎体の高さは下縁での成長よりも歯槽突起の自由端での成長におうものである。
  • 特に味細胞間結合部, 味細胞一神経間接合部, 神経間接合部について
    野村 嶬, 宗岡 洋二郎, 菅野 義信
    1975 年 17 巻 4 号 p. 371-384
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    味細胞間結合部, 味細胞一神経間シナプス, 神経間シナプスを中心にカエル味覚器の微細構造を調べた。味細胞の細胞体は感覚円盤の中央部より基底側に位置し, 細長い細胞質突起を乳頭表面に伸ばし先端は微絨毛で終っている。味細胞の基底部は多数のpedicleに分かれ味神経と2種類のシナプス様構造を形成する。一つは味細胞側に直径約100mμ の有芯小胞が集積する求心性のものと他の一つは神経側にclear vesicleが見られ味細胞側にシナプス下槽が存在する遠心性のものと推測されるものである。基底部に近い味細胞間接面部では細胞間隙が拡張し, 両側の味細胞内にシナプス下槽類似の小胞体が位置する結合様式が多く観察された。また軸索軸索間シナプスも観察した。味細胞内の有芯小胞はゴルジ野に多数存在し, ゴルジ嚢の内腔にも見られることより, 有芯小胞はゴルジ装置で生産され味細胞のpedicle内集積部位へ移動するものと推察した。
  • 森田 倡子, 桐村 和子, 小積 昭則, 毛利 嘉彦, 三代 幸彦
    1975 年 17 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    唾液中には少量のacetic acidおよびpropionic acidが存在し, これらはインキュベートにより増量した。この他, インキュベートによりisobutyric acid, n-butyric acid, isovaleric acid, n-valeric acid, crotonic acid, isocaproic acidが現われ, 増量した。これらの酸はおもに唾液タンパク質に由来するものと思われる。唾液にglucoseやmaltoseのような発酵性の糖質を加えると, lactic acidが生成するが, aceticacidからisocaproic acidまでの低級脂肪酸の生成は, 糖質を加えない唾液より小さかった。さらにインキュベートすると, lactic acidが消失すると同時に, acetic acid, propionic acidが増量した。これらの酸の一部は, lacticacidに由来するものと思われる。難発酵性のdextranやisomaltoseを加えた場合, 乳酸はほとんど検出されないが, acetic acidからisocaproic acidまでの酸はglucose添加時より多量にできた。
  • 東江 良昭
    1975 年 17 巻 4 号 p. 391-407
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    フェノールやインドールは歯周疾患の病態に関係が深く, また口臭物質のひとつである。著者はフェノール, インドールの分解を抑制する唾液因子の本態を調べた。
    唾液微生物浮遊液にフェノール, インドールを負荷すると, フェノールは3~5日, インドールは1日で分解されるが, 唾液透析濾液を添加すると, その分解が抑制される例, 逆に促進される例がみられた。そこで, このように分解に影響をあたえる因子は脂肪酸であると考え, 促進型唾液と抑制型唾液に含まれる低級脂肪酸についてガスクロマトグラフィーで同定および定量をおこなったところ, 抑制型唾液 (新鮮およびインキュベート唾液) には低級脂肪酸が多いことがわかった。
    種々の脂肪酸を用いてフェノール, インドール分解の抑制効果をみたところ, C1~C18のすべての脂肪酸に抑制作用がみられ, 炭素数の多い脂肪酸ほど強力であった。
  • 加藤 侑
    1975 年 17 巻 4 号 p. 408-417
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    象牙質コラーゲンは, 一般のコラーゲンと異なって不溶性が強く無膨潤性などの特徴をもっていることから, 特異な架橋結合の分布様式が予想される。そこで架橋結合の線維内での位置を追求するため, 象牙質コラーゲンをNaB8H4で還元し, CNBr, Trypsin処理することによって98%可溶化し, このCNBr-TrypsinペプチドをSephadex G 50 F, Phosphocellulose, Aminex A-5, AG 1×2, P-30の5段階のクロマトによる精製を経て, 電気泳動的に単一なbandとして, アミノ酸残基数約60の架橋ペプチドを単離した。アミノ酸組成はdihydroxylysinonorleucineを1個含み, 久保木らが骨コラーゲンから単離したα1-CB 6とα1CB 4-5を含む架橋ペプチドに非常によく似ているが, 明瞭な違いとしては, メチオニンの欠如が挙げられる。この事とその他のアミノ酸組成の特徴から, この架橋ペプチドはVeisらが単離した象牙質中のIII型コラーゲンα1 (III)-CB 4, 5とα1-CB6とが架橋結合した部位から得られたものと推定される。
  • 川越 昌宜
    1975 年 17 巻 4 号 p. 418-431
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯髄の炎症発現機構において, 如何なるchemical mediatorが主たる役割を演じているかを, 薬理学的見地より検索し, 歯髄の保存療法に役立てることを目的に行なった。
    1. kallikrein, histamine, serotonin, bradykininを, ラットの歯髄に直接貼布し, 色素漏出法によってその起炎性を調べた結果, kallikrein, bradykininに強い起炎性を認めた。
    2. formalin, carrageenin, dextranの起炎剤の中で, 2%formalin溶液が歯髄に対して最も強い起炎性を示したので, この炎症歯髄で, 上記mediatorの活性阻害物質による炎症抑制を調べ, kallikrein活性抑制物質に強い抑制効果を認めた。
    3. 2%formalin起炎のラット歯髄中に含まれる子宮収縮活性物質が, 熱処理, α-chymotrypsin処理, carboxypeptidase B処理, trypsin処理の結果, bradykininであると推定された。
    以上のことから, 歯髄の炎症発現機構においては, kallikein-kinin系の活性化が, 最も重要な役割を担っていると考えられる。
  • 高木 亨, 斉藤 滋, 久保木 芳徳, 佐々木 哲
    1975 年 17 巻 4 号 p. 432-441
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯根膜, 歯肉および歯髄は硬組織としての歯に, 構造的, 機能的に, 密接に関連している軟組織であり, 歯の生理的機能発現および, その病変の主要な場をなしている。これら結合組織の主成分はコラーゲン線維であり, すでに著者らが報告したように, そのコラーゲン線維の架橋結合の状態は上記各組織で著明なる差異が存在している。そこで, 本報告ではこれらの架橋結合が加齢によって如何なる変化をうけるかを検討した。その結果, 主要架橋結合としてDihydroxylysinonorleucine (DHLNL), とHydroxylysinonorleucine (HLNL) はいずれの組織でも加齢と共に減少することがわかった。さらに架橋結合の比, DHLNL/HLNLは1歳から4歳の歯根膜で減少, 歯髄は増加, 歯肉では穏やかな減少傾向を示し, 各組織特有のコラーゲン架橋結合の変遷を有することが明らかになった。またCNBr法によるサブユニット構成の分析から, これら3組織には, 幼若組織に特有なIII型コラーゲンが見出され, これらは歯根膜および歯肉では1歳から4歳の間でいずれも同程度の量存在したが, 歯髄においては逆に増加し, 各組織においてIII型コラーゲンは経年的にも特異な分布にあることが示唆された。
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