歯髄の炎症発現機構において, 如何なるchemical mediatorが主たる役割を演じているかを, 薬理学的見地より検索し, 歯髄の保存療法に役立てることを目的に行なった。
1. kallikrein, histamine, serotonin, bradykininを, ラットの歯髄に直接貼布し, 色素漏出法によってその起炎性を調べた結果, kallikrein, bradykininに強い起炎性を認めた。
2. formalin, carrageenin, dextranの起炎剤の中で, 2%formalin溶液が歯髄に対して最も強い起炎性を示したので, この炎症歯髄で, 上記mediatorの活性阻害物質による炎症抑制を調べ, kallikrein活性抑制物質に強い抑制効果を認めた。
3. 2%formalin起炎のラット歯髄中に含まれる子宮収縮活性物質が, 熱処理, α-chymotrypsin処理, carboxypeptidase B処理, trypsin処理の結果, bradykininであると推定された。
以上のことから, 歯髄の炎症発現機構においては, kallikein-kinin系の活性化が, 最も重要な役割を担っていると考えられる。
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