歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
35 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 高橋 茂
    1993 年 35 巻 2 号 p. 115-146
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    損傷を受けた唾液腺の再生過程を明らかにする目的で, YAGレーザーをラット顎下腺に照射して, その損傷と修復過程を形態学的に検索した。
    YAGレーザー照射後, 照射部は壊死巣となり, その周囲には肉芽組織の増生がみられた. 肉芽組織中には残存している導管様構造がみられ, 間もなく, 増殖活性の高い扁平上皮様胞巣や導管様構造を形成した。これらの上皮細胞は電顕的に内外2種類の細胞に区別され, 内側の細胞は導管上皮への分化傾向を示していた。腺葉の形態回復時には, 線条部導管細胞, 介在部導管細胞, 幼弱な腺房細胞, 筋上皮細胞への分化傾向が電顕的に認められた。以上のような所見より, 唾液腺に加えられた障害が局所に限局している場合には, 唾液腺は比較的旺盛な修復能力を有しており, 腺組織の修復は, 壊死巣周囲に残存している導管様構造より起こり, これらの増殖と分化によって再生されることが示唆された。
  • Mieko Sashima, Yoji Abe, Masanobu Satoh
    1993 年 35 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    老化促進モデルマウス (SAM) の抵抗系 (R/1/Iw) と促進系 (P/2/Iw) を用いて, それぞれ若齢と老齢の第1臼歯近心の歯一歯肉接合部を透過電顕と走査電顕によって検索した。若齢のSAMでは接合上皮はエナメル質に結合し, 内側基底板と半接着斑は規則正しく配列していたが, 外側基底板の基底部はしばしば消失していた。根セメント質は微細で均一な球状構造からなり, 小さくて浅い吸収窩が散在性にみられた。老齢のSAMでは長い付着上皮がセメソト質に結合し, 内側基底板と半接着斑は不規則に配列していた。歯槽骨の高さは減少し, 歯根セメント質の露出が高度であった。セメント質表面は凹凸を呈し, 深くて大きい吸収窩がみられた。SAMの両系統とも第1臼歯近心では加齢変化として付着上皮の深部への増殖と根セメント質の吸収がみられた。しかし, 今回の研究ではR/1/IwとP/2/Iwにおける歯一歯肉接合部の超微構造の差はみられなかった。
  • 尾田 充孝
    1993 年 35 巻 2 号 p. 157-185
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    糖尿病の骨代謝に及ぼす基本的な影響を明らかにする目的で, Streptozotocin誘発糖尿病ラットの抜歯窩外側の骨膜性骨新生を対象に形態学的に検索した。
    組織学的, 組織計量学的検索により糖尿病群では, 骨形成能や骨の改造機転に異常のあることが示唆された。電顕的にも, 骨芽細胞や骨細胞の細胞小器官の発達は不良なものが多く, 粗面小胞体の不規則な拡張やミトコンドリアの膨化をはじめ, 膜の崩壊や細胞質の空胞化などの微細構造的変化が経時的に著明に観察された。また, 骨芽細胞周囲の類骨組織の形成障害や石灰化骨基質の異常が認められた。
    本研究において観察された糖尿病群の抜歯窩外側の骨膜性骨新生の障害は, 高血糖によりもたらされた個々の骨芽細胞の微細構造的変化に基づく基質の産生障害および石灰化の異常によるものと思われた。
  • 里吉 正徳, 寺中 敏夫, 岩本 次男, 今井 喜良, 川瀬 俊夫, 斎藤 滋
    1993 年 35 巻 2 号 p. 186-196
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    enzymogram上におけるみかけの分子量は, ゲル基質の濃度によって異なることが判明した。われわれは, この変化は電気泳動中の酵素と基質の親和性に基づく泳動速度の遅延が原因であり, ミカエリス定数 (Km) 値に依存するのではないかと推察し, それに基づいて電気泳動上での真の分子量を推定する関係式を検討した。みかけの分子量から真の分子量を推定する方法としてゼラチン濃度を変化させ, その関係を調べたところ, 基質濃度およびKm値により導き出される関係式

    が成り立つことが示唆された。したがって本法は, 基質存在下で分子量が本来の値より大きく算出されてしまうenzymogramで, その基質濃度に依存しない, 基質が存在しないところの分子量を導き出す方法である。さらに, 二次元enzymographyを施行したところ, より正確な分子量を導き出せることが判明した。またこうした解析によって分子量の推定のみならず複数の酵素が共存している時でもそれぞれの酵素の基質に対するKm値を求めることが理論的に可能となった。
  • 山田 博之, 花村 肇
    1993 年 35 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    日本人の永久歯について, 第3大臼歯の欠如が他の歯の欠如にどのように影響しているかを明らかにする目的で研究を行った。調査は20歳以上の男性607名について先天欠如歯の頻度をX線写真により調査した。埋伏歯は存在歯とみなした。また第3大臼歯の存在群と欠如群について他歯欠如の頻度に変化があるか分析した。その結果, 第3大臼歯の1歯以上欠如率は28.7%, 第3大臼歯以外の歯の欠如率は6.8%であった。第3大臼歯の欠如群と存在群について他歯欠如を比較してみると, 欠如群の方が3.5倍多く他歯を欠如し, 両群間に有意差が存在していた。また歯数不足は乳歯列あるいは代生歯列の遠心端に位置する歯に多く現れていた。これらの結果から第3大臼歯の欠如と他歯欠如の間には深い関係が存在することが分かった。また先天欠如歯の発現部位から歯数不足は系統発生的意義が強いことが示唆された。
  • Koji Yashiro, Sun-Ok Shin, Atsuyoshi Himejima, Akira Mori, Masamichi Y ...
    1993 年 35 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    無刺激状態におけるラット顎下腺と舌下腺の1, 2-ジアシルグリセロールおよび関連脂質の脂肪酸組成について検討した。1, 2-ジアシルグリセロールの構成脂肪酸はパルミチン酸が最も多く, 次いでステアリソ酸が多く存在した。一方, 不飽和脂肪酸はオレイン酸を例外として微量成分であった。この脂肪酸組成は, アラキドソ酸の組成比を除いて遊離脂肪酸の組成に極めて類似していた。また, パルミチン酸やステアリソ酸が主要構成成分であり, 高度不飽和脂肪酸が少ない点ではホスファチジン酸とも似ていた。一方, トリアシルグリセロール中のステアリン酸は1, 2-ジアシルグリセロールに比較して極めて低かった。これらの結果から無刺激状態の唾液腺1, 2-ジアシルグリセロールの脂肪酸組成は主として遊離脂肪酸組成を反映していることが示唆された。
  • Role of ATP, phosphate ions and inositol triphosphate
    Toshikazu Tokuoka, Osamu Oshima, Saburo Kakuta, Masao Nagumo, Kristine ...
    1993 年 35 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, ニワトリ軟骨細胞の小胞体 (ER) のCa2+結合の特徴を検索した。すなわち, digitoninで透過性を高めた細胞を用い, ミトコンドリヤのCa2+の取り込みをrathenium redで阻害後, Ca2+の取り込みおよび放出に対するvanadate, ATP, 1, 4, 5-inositol triphosphate (IP3), glucose, glucose 6-phosphateおよび無機リン (Pi) の影響を検討した。
    その結果, Ca2+の取り込みは, vanadateで阻害されATP添加で増加すること, PiはATPに依存したCa2+の取り込みを著しく増加させること, IP3はERに蓄積されたCa2+の放出を促すことが判明した。しかし, glucose 6-phosphateはほとんど影響しなかった。また, ERにreticuloplasminと同じ分子量のCa2+結合蛋白が存在することが示された。以上の所見から, 細胞内Pi上昇させるような機構がERのCa2+維持に働いており, 細胞内Piが軟骨のCaの移動に中心的な役割を演じていることが示された。
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