歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
34 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 坪井 明人
    1992 年 34 巻 3 号 p. 247-265
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    α-クロラロース麻酔ネコのオトガイ叩打により, 外側翼突筋から潜時3.8±0.6msecの応答 (L1) と潜時18.4±1.3msecの応答 (L2) が記録された。L1は低閾値であり, その潜時は咬筋伸張反射のそれとほぼ同一であった。またLlはオトガイ部, 顎関節部の局所麻酔により振幅の減少, 消失がみられないこと, 外側翼突筋の直接電気刺激により単シナプス性のH波が記録されたことから, L1は外側翼突筋中の自己受容器の興奮による伸張反射であると結論された。一方, L2は潜時および刺激強度-応答関係, 局所麻酔の影響などの点で, 顎二腹筋の長潜時の開口反射応答と同一の性質を有しており, オトガイ部, 顎関節部に存在する機械受容器による非侵害性の反射応答と考えられた, すなわち, オトガイ叩打により外側翼突筋に閉口反射・開口反射に同期した2種の反射応答が惹起された。これから, ネコ外側翼突筋は顎運動のあらゆる相において, その円滑化に関与するものと考察される。
  • I. 漢方薬, 立効散と唾液の影響
    日高 三郎, 阿部 公生, 新名 正明, 劉 勝彦
    1992 年 34 巻 3 号 p. 266-273
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    著者らはpH電極を用いたリン酸カルシウム沈澱物形成の簡便測定法を考案し, この方法を用いてリン酸カルシウム沈澱物形成反応に与える漢方薬・立効散の影響と, さらに, 立効散+ヒト全唾液の影響を研究した。
    立効散はその濃度が0.1-0.5mg/mlの時, Indnction time (対照との比) と, ハイドロキシアパタイト (HAP) への転換反応 (対照に対する%) を有意に抑制した。漢方薬, 立効散は副作用が少ないことが知られており, 安全使用濃度を考慮に入れると, 立効散が抗歯石形成剤としての可能性が大きいことを示していた。ヒト希釈全唾液 (2-10%) はInduction timeを1.4~3.7倍延長させた。ただし, HAPへの転換反応の減少を伴っていなかった。立効散と全唾液を同時に加えると, それぞれが独立して抑制効果を発揮し, 相加的な結果を示していた。
  • Ichizoh Itoh, Hiroshi Saito
    1992 年 34 巻 3 号 p. 274-279
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究はウマの歯冠セメント質の構造的特徴を検索したものである。特に歯冠セメント質内の膠原線維束 (シャーピー線維) の構造と配列そして血管分布, さらにセメントエナメル境の形態について屠殺直後のウマの機能歯である下顎臼歯12本を用いて光顕と走査型電顕で観察した。ウマの臼歯は歯冠が長く歯根は短い高位歯で長期にわたって萌出し, 歯冠セメント質の形成は歯肉縁付近で盛んで周期的な層構造をなしていた。シャーピー線維は歯冠セメント質表面で直径が約50μmで深層では周囲が石灰化して直径が約20-25μmのものがみられた。血管系は歯冠頬舌面の陥凹で発達しており, セメントエナメル境に沿って比較的太い血管が進入し, 経過の途中で多くの枝を出し, セメントエナメル境部で静脈洞様を呈していた。セメントエナメル境は波状面を呈し, 吸収された窪みとなったエナメル質表面に歯冠セメント質が強固に接着していた。
  • Kengo Nagata
    1992 年 34 巻 3 号 p. 280-290
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マウスの口蓋形成過程においてI型およびIII型コラーゲンとフィプロネクチンの分布を免疫組織化学的手法を用いて検索した。I型およびIII型コラーゲンは横紋を有するコラーゲン細線維に共存していた。口蓋突起内でのコラーゲンの分布は場所により異なっていて, I型コラーゲンは口腔側よりも鼻腔側に多く分布していたが, III型コラーゲンにはそのような差が認められなかった。III型に対するI型の割合は場所や胎齢により異なっていて, 口腔側よりも鼻腔側に多く, さらに鼻腔側では胎齢16日よりも14日に多かったが, 口腔側においては胎齢による差が認められなかった。フィプロネクチンは不定形物質として間葉細胞の表面やコラーゲン線維の間に存在し, 細胞間質においては線維状構造物として認められた。また口腔上皮の基底膜にも存在していた。以上のことからI型およびIII型コラーゲンとフィプロネクチンは密接に関係しながら口蓋形成に関与しているものと考えられた。
  • 瀬戸口 浩彰, 小野 夫倶子, 北島 俊秀, 須賀 昭一
    1992 年 34 巻 3 号 p. 291-306
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    微小管を選択的に障害することが知られているコルヒチン (colchicine) を体重1009のウイスター系ラヅトに一回注射し, それによって起こった上顎切歯の形成期エナメル質の変化を, 非脱灰研磨片についてマイクロラジオグラフィー, テトラサイクリンラベリング, トルイジンブルー染色像, などによって, また, 脱灰切片のhematoxylin-eosin染色像によって, 比較観察した。
    注目すべき変化は, 成熟期中期以降に出現したエナメル質の表層から深層に及ぶ低石灰化部と高石灰化部のくり返しの出現である。前者の占める範囲は後者のそれよりはるかに長い。
    成熟期の中期以降のエナメル芽細胞に配列不整やエナメル質表面からの剥離それに続く嚢胞の形成がみられた。しかし, その出現とエナメル質石灰化異常部との位置的関係, また本来, この段階でみられたエナメル芽細胞のRAからSAへのくり返しとの関係を明らかにすることはできなかった。
  • 桑島 治博, 中村 康則, 野田 誠記, 荒川 勉, 安田 英之, 増原 泰三
    1992 年 34 巻 3 号 p. 307-316
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    GTase阻害作用のあるカカオハスク抽出物を齲蝕誘発飼料に0%(対照群), 0.2%, 0.2%添加した飼料でS. sobrinus接種ラットを鮪する齲蝕実験と, in vitro実験で菌塊の電顕観察を行った.S. sobrinusの歯面定着度は対照群と添加群の間に差はなく, これを反映してプラーク量も3群間でほぼ同等であった。しかし, 齲蝕の発生は対照群に対し, 0.02%群では7%, 0.2%群では31%と明らかな抑制効果が認められた。一方, 菌塊の形態観察をすると, 菌体を覆うグルカンは本抽出物の添加により粗となり, 随所で菌体が明瞭にみられた。この所見はin vivoにおける歯質脱灰に関与する菌産生の酸の歯面貯留を少なくして齲蝕を抑制する可能性を示唆した。なお, 本齲蝕実験の条件では本抽出物による毒性はみられなかった。以上より, カカオハスク抽出物には鰍抑制効果があることが明らかとなり, その経口毒性も低いことを考え合わせると, 齲蝕抑制剤として有用性が期待される。
  • Hideaki Sakai, Takashi Saku, Yuzo Kato, Kenji Yamamoto
    1992 年 34 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    正常ラットロ腔領域において, 2つの細胞内アスパルティヅクプロテイナーゼ, カテプシンDおよびカテプシンEの局在を, 免疫沈降法による活性測定と免疫組織学的手法により検索した。歯肉と舌におけるヘモグロビン水解活性 (pH 3.8) は, すべてカテプシンDに対する抗体で沈降でき, カテプシンE活性はほとんど存在しなかった。一方, 頸部リソパ節においてはカテプシンE活性が優位を示し, 全ヘモグロビン水解活性中80%を占めていた。顎下腺においては両酵素とも存在していたが, カテプシンE量はカテプシンD量よりもはるかに少なかった。免疫染色の結果, カテプシンDは粘膜上皮の顆粒層, 歯根膜の線維芽細胞, 歯槽骨表面の骨芽細胞, 歯髄の象牙芽細胞および顎下腺導管の線条部に多く認められた。一方, カテプシソEは顎下腺導管の線条部と間葉系組織中のマクロファージ様細胞に認められた. このようなカテプシンDとカテプシンEの異なる局在は, 同じ細胞内アスパルティックプロテイナーゼに属しながらも細胞内における両酵素の機能がそれぞれ異なっていることを示唆している。
  • Scanning electron microscopy and electron microprobe analysis of enamel structure in the agamid lizard, Japalura polygonata
    Mikio Ishiyama, Yoshimi Teraki
    1992 年 34 巻 3 号 p. 325-329
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    The enamel structure of the agamid lizard, Japalura polygonata, was examined by scanning electron microscopy and electron microprobe analysis. The enamel with no prismatic structure was 20μm in thickness at the apical portion of the cusp. The pseudo-prism showing the sinusoidal arrangement of crystallites found usually in the mammal-like reptiles, and the pre-prism with a seam found in certain primitive mammals, were common structural features of the enamel in Japalura. These structures may be regarded phylogenetically as secondary or convergent developments rather than essential characteristics with an evolutional significance.
    High concentration of iron was detected in the surface enamel layer 2μm in thickness. This layer was acid resistant and caused probably the pigmentation of the teeth.
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