人工臓器
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27 巻, 1 号
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  • 下田 誠也, 西田 健朗, 一ノ瀬 賢司, 今野 由美, 上原 昌哉, 榊田 典治, 七里 元亮
    1998 年27 巻1 号 p. 233-237
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    携帯型人工膵島の長期臨床応用を目的に既に開発した超速効型インスリン・アナログ(Insulin Lispro)を用いた血糖値に対する比例(P)・微分(D)の各動作に基づいたclosed-loopインスリン皮下注入アルゴリズム(PD式)を組み込んだ携帯型人工膵島を用い、皿)DM患者に対し、7日間の血糖日内変動の制御を試みた。その結果、本アルゴリズムの応用は、糖尿病患者の血糖応答反応をほぼ生理的な範囲に制御し得た。以上、この事実は超速効型インスリン・アナログ(Insulin Lispro)を用いたclosed-loopインスリン皮下注入アルゴリズムを組み込んだ携帯型人工膵島は糖尿病患者の治療システムとして極めて有効であると考えられた。
  • 上村 毅郎, 榊田 典治, 西田 健朗, 一ノ瀬 賢司, 今野 由美, 下田 誠也, 上原 昌哉, 七里 元亮
    1998 年27 巻1 号 p. 238-243
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    光学的手法を用いた血糖計測法は, 携帯型血糖モニタリングシステムや携帯型人工膵島の計測部門として, 一最適のシステムと考えられる。著者らは, 減衰全反射(ATR)プリズムを組み込んだカルコゲナイド光ファイバーをフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)に導入し, 口唇粘膜との接着圧を一定とし, より高精度の非侵襲的血糖計測法の開発を試みた。その結果, in vitroにおいて, 1080cm-1の頂点吸光強度とブドウ糖濃度との間には高い相関を認めた。さらに, in vivoにおいて, ATRプリズムと口唇粘膜との接着圧を一定とした場合, 1080cm-1の頂点吸光強度(Y)と血糖値(X)との問にはY=(0.3X+8.0)10-5, r=0.95と高い相関を認めた。以上, ATRプリズムを口唇粘膜に一定圧で接着させることにより, 高精度の計測が可能となり, 本システムを用いた非侵襲的血糖計測法の有用性が示唆された
  • 土生 拓史, 酒井 清孝, 金森 敏幸
    1998 年27 巻1 号 p. 244-249
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞培養媒体として有用なコラーゲンゲルの微細構造を変化させることにより、物質の拡散透過性の制御を試みた。豚皮由来のtype Iアテロコラーゲン溶液をキャストした後に乾燥させ、さらにグルタルアルデヒド(GA)により架橋することによりコラーゲンゲル平膜を得た。ゲル膜の微細構造を迷宮細孔モデルで検討したところ、架橋時のGA濃度が膜構造因子に及ぼす影響は少なく、微細構造は変化しないと考えられた。一方、77~96wt%まで濃縮したコラーゲン溶液において製膜を行った結果、架橋時のコラーゲン濃度に依存して拡散透過性が大きく異なるゲル膜を作製することができた。さらに、架橋時のコラーゲン濃度と膜構造因子の間に相関性があり、曲路率により膜の微細構造の均質性を推測できた。したがって、架橋時のコラーゲン濃度により微細構造を制御することができ様々な拡散透過性を持つコラーゲンゲル膜が作製可能である。
  • 神宮 啓介, 川上 浩良, 長岡 昭二
    1998 年27 巻1 号 p. 250-253
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    官能基にフッ素基を有し、さらに分子内・分子間で電荷移動(CT)錯体を形成するために特異な表面電荷状態をとる含フッ素芳香族ポリイミド(PI)膜の血漿タンパク質吸着特性をポリスチマレン(PSt)膜と比較してin vitroで評価した。生理的な条件下において、PI膜はPSt膜に比べ、アルブミン(BSA)、フィブリノーゲン(Fbg)吸着量を1/2以下に抑制することが明らかとなった。さらに溶液pHが変化した時のPI膜表面へのタンパク質吸着性を評価した。PSt膜へのBSA、Fbg吸着はいずれも等電点で極大値を示した。一方、PI膜の場合には等電点より酸性側で極大値を示した。このことからPI膜がタンパク質の吸着を抑制したのは主に膜表面の電荷密度に起因すると考えられる。非対称電気泳動法により測定した純水中におけるPI膜の表面電位はPSt膜に比べ大きな負の値を示し、PI膜表面は強い負電荷で覆われていることが明らかとなった。以上の結果、PSt膜に比べPI膜がタンパク質の吸着を抑制したのは、PI膜とタンパク質との強い静電的な相互作用によるものと思われる。
  • 田中 利明, 小柳 哲也, 大沢 久慶, 池田 勝哉, 深田 穣治, 伊藤 真義, 森下 清文, 安倍 十三夫, 数井 暉久
    1998 年27 巻1 号 p. 254-256
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1994年8月より1997年8月まで55例の心大血管手術例に対しgelatin-resorcin-folmarin (GRF) glueを組織接着および止血剤として用い, その有用性について検討した。急性期死亡は心原性ショック3例, 多臓器不全2例および腹部大動脈再解離による出血性ショック1例で, 遠隔死亡は縦隔炎1例でありGRFに起因するものはなかった。急性大動脈解離例における断端形成では, 解離腔の接着効果は良好であり, かつ人工血管との吻合において適度な強度, 弾性を有し運針も容易で, 操作性に問題はなく, 針穴からの出血はみられなかった。また, 術後のCT検査においても吻合部のleakは37例中1例(2.7%)と満足すべきものであった。止血目的として用いた18例では, 大動脈人工血管吻合部, 心房心室切開縫合部, 人工血管同志の吻合部および人工血管冠状動脈吻合部に用いたが, 適用部位を可及的に乾燥させることにより良好な止血効果が得られた。また, 重篤な副作用や血液および生化学検査における異常値も認められなかった。GRFの接着効果および止血効果は良好で, また操作性に優れた安全性の高い生体接着剤と考えられた。
  • ―術後縦隔炎合併の危険因子となるか―
    梶原 博一, 市川 由紀夫, 山崎 一也, 岡本 雅彦, 神 康之, 森 琢磨, 浜田 俊之, 佐藤 順
    1998 年27 巻1 号 p. 257-261
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1992年1月から1997年6月までに施行したCABG 434例を対象としてGore-tex心膜シートの術後前縦隔炎に対する安全性を検討した。心膜シート使用例は329例で非使用例は105例であった。両群を比較すると心膜シート使用例は有意に両側内胸動脈使用が多く、手術時間、人工心肺時間も長かった。しかし、前縦隔炎の発生は心膜シート使用例7例(2.1%)、非使用例3例(2.9%)と有意の差はなかった。前縦隔炎の起炎菌はMRSA 4例(使用例3例、非使用例1例)などで両群に差はなかった。前縦隔炎の治療は創部郭清し、心膜シートを除去した。術中所見では心膜シート使用例1例のみに心膜腔への感染の波及が認められたが、両群に著しい差異は認められなかった。両群とも死亡例はなく、再手術から退院までの期間は前縦隔炎以外の重篤な合併症を有した2例の除くと使用例平均55.2日、非使用例46.3日と差はなかった。以上の結果よりGore-tex心膜シートの使用は術後前縦隔炎の危険因子となっていないと思われた。
  • 山本 恭通, 松本 和也, 上田 寛樹, 劉 愉, 関根 隆, 李 永浩, 清谷 哲也, 中村 達雄, 清水 慶彦
    1998 年27 巻1 号 p. 262-268
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    熱架橋繊維化コラーゲンを用い繊維径15-25μmで繊維長0.5cm(以下0.5小径材)、1.0cm(以下1.0小径材)、3.0cm(以下3.0小径材)と繊維径20-40μmで繊維長3.0cm(以下3.0大径材)の綿状止血材を作成した。正常および低血圧状態のイヌ脾臓被膜を切除し、ガーゼに染み込んだ血液の描く円の平均直径を計測し、止血材使用前後での比率を止血率とした。インテグラン®とオキシセル®を対象とした。10分後の平均止血率は正常血圧群で3.0大径材とオキシセル®100%、0.5小径材68%、1.0小径材77%、3.0小径材67%、低血圧群で3.0大径材、3.0小径材とオキシセル®100%、インテグラン®77.8%であった。2分後の平均止血率は正常血圧群で3.0大径材66.0%、オキシセル®7.5%、低血圧群で3.0大径材85.3%、オキシセル®20.5%であった。3.0大径材は他の止血材より優れた止血率を示した。コラーゲン製止血材を留置した組織には著明な炎症所見を認めなかった。
  • 水本 大悟, 野尻 知里, 猪俣 依子, 大西 誠人, 千秋 和久, 城戸 隆行, 杉山 知子, 内田 勝美, 酒井 清孝, 阿久津 哲造
    1998 年27 巻1 号 p. 269-274
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体材料のポリエーテルタイプポリウレタン(PEU)に劣化が起こることが明らかとなっている。PEUの優れた機械的特性と生体適合性を温存し、しかも劣化を減少させる目的で、最近ポリエーテルタイプに代わりポリカーボネートタイプのポリウレタン(PCU)が開発されている。本研究では、これらPCUのin vitro加速劣化試験と、我々が開発したepifluorescent video microscopy (EVM)装置を用いた抗血栓性評価を行い、従来のPEUと比較した。加速劣化試験後、PEUは表面が物理的・化学的に劣化することが明らかとなった。一方、PCUではこのような変化は認められなかった。EVM実験の結果より、PCUはPEUに比べ同等またはそれ以上に血小板の粘着を抑制することがわかった。以上の結果から、埋込み型人工心臓をはじめとする長期使用の循環系デバイスの構造材料としてセグメント化ポリウレタンを選択する場合、現状ではPCUを第一選択とするべきであると考える。
  • 猪狩 次雄, 星野 俊一, 岩谷 文夫, 引地 仁, 土本 勝也, 磯山 隆
    1998 年27 巻1 号 p. 275-277
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    送血、脱血、吸引を行いうる小型回転ポンプ(ベーンポンプ)と膜型肺を組み合わせた麻酔器にも取り付け可能な人工心肺システムを試作した。前回未施行のポンプの耐久試験と溶血試験を行った。模擬循環回路に装着した連続駆動は2~3日でポンプの異常ではなく、DCブラシレス・モーターの異常により停止した。雑種成犬に本ポンプを脱血、送血に用いて240分の体外循環を行った。体外循環中のヘモグロビン値は240分時には193.5±27.6mg/dlであった。人工心肺システムとして送血、脱血、吸引で5基程度、このポンプを使用することを計画しているので、溶血が問題となるため、ポンプに改良を加えた。ローターの部分に一方向弁を装着することでローター上部を流入、下部を流出の腔とポンプ内腔をふたつに分けるアイデアのポンプである。流量はやや落ちるが灌流は可能であった。溶血に関しては検討中である。
  • 森 康真, 川上 浩良, 長岡 昭二, 窪田 倭, 金森 敏幸
    1998 年27 巻1 号 p. 278-282
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では新しい大静脈内留置型膜型人工肺(IVOX)を開発するため、6FDAポリイミド膜の優れたガス透過能と良好な血液適合性に注目し、その新しい中空糸膜を作製した。
    スピノーダル分解による相分離を利用した乾湿式相転換法により非対称構造を有するポリイミド中空糸膜を作製した。SEMより外表面スキン層の形成が確認され、外径: 約700μm、内径: 約500μmが得られた。気体-気体系でのガス透過能を測定した結果、現在IVOXに使用されている中空糸膜材料と同程度のガス透過能が得られた。また、ポリイミド中空糸膜に対する血液適合性のin vitro評価より血小板粘着の著しい抑制が確認され、家兎の下大静脈に7日間埋め込んだin vivo評価でも血栓は全く認やられなかった。
    以上より、新しく作製された6FDAポリイミド中空糸膜の高いガス透過能と良好な血液適合性が確認され、新しいIVOX材料としての可能性が示唆された。
  • ―高度難聴幼児の手術と術後評価―
    内藤 泰, 高橋 晴雄
    1998 年27 巻1 号 p. 283-286
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は3歳台の高度難聴幼児4名に人工内耳埋め込みを行い、人工内耳がこれらの幼児の聴覚言語発達に寄与することを確認した。手術適応は1995年のNIH Consensus statementに準拠し、両親の理解と同意を得て決定した。手術手技では特に皮膚切開と人工内耳格納のための側頭骨削開に特別の配慮を加えた。術後は全例、皮弁の血行、創治癒共に良好で人工内耳埋め込み部分の感染、皮膚壊死等の問題は全く見られなかった。人工内耳の使用開始後は着実に音への反応が増加し、言語の表出も徐々に始まった。特に2歳半ばまで聴力のあった症例の発達は目覚ましく、現在ほぼ通常の日常会話が可能になっている。一方、先天性高度難聴例の術後の聴覚・言語の発達は着実ではあるが中途失聴例に比べて緩やかであった。高度難聴幼児においては、早期の人工内耳の適応決定と手術が望まれる。
  • 増田 慎介, 土井 潔, 佐藤 伸一, 岡 隆宏, 松田 武久
    1998 年27 巻1 号 p. 287-292
    発行日: 1998/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    エキシマレーザーを用いて多孔質化ポリウレタンチューブ(内径15mm、壁厚100μm)を作成し、そのチューブの内外面に光反応牲ゼラチン(20mg/mlとheparin(1mg/ml)の混合溶液にvascular end othelial growth factor (VEGF)、basic fibroblast growth factor(bFGF)を溶解し、これをコーティングした後、光架橋固定した。増殖因子の種類、濃度によって、既報の対照群(増殖因子非含有群)とbFGF群(bFGF: 1μg/ml)を合わせて、VEGF群(VEGF: 5μg/ml)、VEGF5/brGF群(VEGF: 5μg/ml、bFGF: 1μg/ml)、VEGF50/bFGF群(VEGF: 50μg/ml、bRGF: 1μg/ml)の5群に分類した。作成したグラフトをラットの腹部大動脈に4週間移植した。グラフト内腔面の内皮化率では、対照群の(約30%)に比べて増殖因子を含有する4群(約50-60%)は有意に上昇していた。VEGFを含有する群のグラフト中央部では、周囲肉芽組織から微細孔を通って新生内膜に侵入する毛細血管を認めた。以上より、VEGFが経壁的内皮化を含む血管壁再構築を促進したことを示した。
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