土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
75 巻, 6 号
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土木計画学研究・論文集 第37巻(特集)
  • 伊藤 将希, 高野 裕作, 川崎 薫, 谷口 守
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_537-I_546
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    地方部を中心とした人口減少・モータリゼーションの進行による公共交通の撤退・縮小とそれに伴う生活利便性の低下が大きな問題となっている.それらへの対応策として公共交通を主軸としたネットワークの強化を図る「モビリティ政策」が重要視されている.その中でも,立地適正化計画と地域公共交通網形成計画に関しては計画の見直しが求められている時期にある.しかし,策定状況と自治体の様々な属性との関係性については十分に言及されていない.そこで,本研究ではモビリティ政策の策定状況と自治体属性の関係性について定量的に分析した.結果,計画策定には各自治体の一般的な統計値からもある程度説明はつくが,都市計画系の部署の有無や様々なモビリティ政策への取組状況等の独自調査項目を配慮することで説明力が向上することが明らかとなった.

  • 橋本 申, 吉井 稔雄, 坪田 隆宏, 全 邦釘
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_547-I_554
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    道路舗装は車両の快適・安全な走行を担うなど,道路交通を支える重要な基盤であり,将来の劣化進行度を把握し効率的に補修することが求められる.路面性状測定データを利用して路面劣化予測を試みる取り組みは数多くなされているが,ディープラーニングを用いた予測モデルは十分な検討はなされていない.そこで本研究では,ディープラーニングを用いて路面劣化予測モデルを構築し,RMSEを用いて重回帰モデルとの比較を行うことで,予測再現性を定量的に評価した.その結果,ディープラーニングによって従来より高い再現性を持つモデルを構築することができる可能性が示された.また,本研究で構築したモデルは空間移転性を有していなかったが,その一因として過学習が起きていることが確認された.

  • 平野 里奈, 土井 健司, 猪井 博登, 青木 保親, 山崎 晴香
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_555-I_564
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    利用者が減少傾向にある地方都市の公共交通の維持においては,行政や交通事業者だけでなく,住民を始めとする地域の関係者のエンゲージメントを高める必要がある.そのためには,公共交通が住民の生活や地域社会にもたらす変化を住民の実感として把握し,共感形成を促す必要があるとして,本稿ではPDARUサイクルを重視した社会的インパクト評価を公共交通に適用することを試みた.まず,わが国の内閣府が提示している一連の評価プロセスに倣い,交通分野に対して社会的インパクト評価を実施している英国の先駆事例を参考に,近年,公共交通の大幅な再編がなされた小豆島を対象とした評価を実施した.そして,公共交通がもたらす社会的インパクトを住民の生活実感の変化として把握するとともに,社会的インパクトが発現する構造を把握した.

  • 高山 宇宙, 岡野 舜, 森本 章倫
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_565-I_574
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,都市部での自動運転車の導入時に増加が予想される道路上での乗降に着目し,路肩空間の整備形態が道路交通環境へ与える影響について定量的に把握した.分析では,第4種第1級・第2級道路を対象に,駐車頻度や路肩空間の形態を変化させて単路部での交通シミュレーションを行い,旅行速度や遅延時間を評価指標とした.結果より,停車帯のない路上駐車型は,高い駐車頻度の場合に大幅な旅行速度の低下と遅延時間の増大を引き起こすことを確認した.また停車帯を設けた場合においても,乗降可能な区間が長いほど減速機会が生じやすくなることから,乗降場を限定して道路上での乗降を抑制していくことが,都市部での自動運転車の導入の際に重要となることを明らかにした.

  • 鳥居 祐乃介, 小早川 悟, 菊池 浩紀
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_575-I_582
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,東京都市圏物資流動調査のデジタルタコグラフデータと警視庁交通部の路上駐車実態データを用いて,東京都内における貨物車の着トリップの多いメッシュと路上駐車の多いメッシュを重ね合わせ,貨物車集中メッシュを抽出した.そのうえで,貨物車集中地区を 8 種類に分類し,23 区内に多く存在する 3 種類のメッシュにおいて詳細分析を行った.その結果,このような異なる 2 種類のデータを用いることで貨物車の集中地区を抽出することが可能であり,それぞれに分類された地区により貨物車の集中実態が異なっており,その対策の考え方も異なってくる可能性があることがわかった.

  • 杉原 豪, 塚井 誠人
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_583-I_589
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    限られた税収を効率的に投資するために,社会基盤整備では特にストック効果の高い事業への重点化が求められている.本研究では特に道路整備によるストック効果に着目する.ストック効果の発現メカニズムについては,これまで経済理論に基づくモデル構造が仮定されることが多かったが,仮定した構造が実際の地域データにおいて成立するか否かに関する検証が行われることは,ほとんどなかった.本研究では,分析に統計的因果探索を用いて,個別地域・主体での社会基盤の整備と経済成長の因果関係を明らかにすることを目的とする.分析対象地域は,平成 27 3 月に全線開通した尾道松江線として,経済成長とアクセス性向上の因果関係の同定を試みる.

  • 浦田 渡, 南 貴大, 石村 直人, 藤生 慎, 福岡 知隆, 高山 純一
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_591-I_598
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    国土交通省により高齢化が急速に進んでいる橋梁に対する予防保全的な維持管理が重要視されており,全ての橋梁に対して定期点検が義務付けられている.現在実施されている点検手法である近接目視点検は予算・人員の問題により効率化が見込めないことから,その代替手法となる様々なシステムが研究されている.本研究では,超高解像度のカメラを用いることで視覚的に現在の点検と遜色ない環境を構築し,人が画像上で損傷の診断を行う「画像目視診断システム」を提案する際に生じた課題である「点検スキルが診断結果に与える影響」と,より効率的な点検のために必要な「点検スキルと検出に要する時間の関係性」について明らかにした.

  • 中村 裕貴, 萩原 亨, 永田 泰浩
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_599-I_607
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    冬の北海道では,吹雪による交通障害を防ぐための視界情報が必要である.国道沿いの固定カメラ画像をWIPSにより分析すると,視界不良を検知できることが分かった.しかし,固定カメラはドライバーの目線と異なり,カメラがない箇所での視界情報の把握が難しい.そこで,吹雪時に撮影した車載カメラを分析し,WIPSによる視界評価が道路管理の支援に有為かを検証した.最初に,WIPSとドライバーの評価の関係を知るために前方の見やすさやなどを評価する実験を行った.実験より,車載カメラのWIPSとドライバーの運転感覚は評価が近いことが分かった.次に,国道40号豊富~幌延間の固定カメラ画像と車載カメラの走行映像を分析した.その結果,視界不良が発生しやすい区間を把握し,固定カメラでは難しい密な視界情報の生成に有効なことが分かった.

  • 横関 俊也, 萩田 賢司
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_609-I_613
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,自転車の通行方向(左側通行・右側通行)の遵守状況の変化について知見を得るために,平成19年と平成29年の千葉県の自転車事故における自転車当事者の通行方向等を比較した.歩道のある単路部における,第1当事者が自動車で第2当事者が自転車である事故に着目したところ,自動車が直進時の事故において,車道・左側通行の自転車が相手当事者となる割合は74.2%から86.6%に上昇していることが確認された.このことから,左側通行を遵守する自転車が増加していることが類推された.また,右側通行の自転車が相手当事者となりやすい自動車が駐車場等の路外から車道に進入時に発生する形態の自転車事故は,発生件数が38.7%減と他の形態と比較して大きく減少していた

  • 萩田 賢司, 嶋村 宗正, 萩原 亨
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_615-I_623
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    20086月に改正道路交通法が施行されて,四輪車の後席乗員にもシートベルトが着用義務化され,高速道路上での後席シートベルト非着用は,行政処分が課されるようになった.JAF/警察庁の路側調査によると,道路交通法改正直後は高速道路,一般道とも後席乗員のシートベルト着用率が大きく増加しているが,その後は,着用率があまり上昇していなかった.交通事故統計データを分析したところ,後席シートベルトの着用者率の上昇により,年間500人程度の死亡重傷者が減少したことが推定された.属性別に後席シートベルトの着用者率を分析したところ,若年層,男性は着用者率がやや低かった.運転者がシートベルト非着用や第一当事者の場合,タクシー・ハイヤー,普通貨物車などは後席乗員のシートベルト着用者率が非常に低かった.

  • 酒井 紫帆, 塩見 康博, 寺澤 洋子
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_625-I_636
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    交通渋滞の有効な対策を実現するためには交通状態の急変予兆を検知し未然に防いでいくことが求めら れる.しかし,渋滞の予兆検知を試みた研究事例は少なくないものの,検知精度に課題が残る.本研究では微細な変化検知への有効性が示されている可聴化アプローチに着目し,適用可能性に関わる基礎的な検討として,交通流データの可聴化による交通状態の識別可能性を検証する.具体的にはボトルネック箇所とその上流箇所の 2 地点の交通流データの速度を周波数,交通量を音量に変換した.自由流,臨界流,渋滞直前の臨界流,渋滞流を可聴化したデータの聞き分けが可能か評価実験を行った.その結果,被験者は交通状態を音の印象として識別し,渋滞直前の交通流データの判別において可視化よりも可聴化の方が高い精度での判別が可能であることが示された

  • 田平 優太, 塩見 康博
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_637-I_646
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    近年,走光型視線誘導灯(PML)の運用による渋滞軽減効果が報告されつつあるが,その詳細なメカニズムは把握されておらず,PMLが追従車両に与える影響は不明確な点が多い.本研究ではPMLが設置された阪神高速神戸線深江サグを対象に実道追従走行実験を行った.得られたデータからPMLの運用条件別による相対速度変動に関する定量分析を行った上で,実際の相対速度とドライバーが認知する相対速度の乖離を考慮した追従挙動モデルを構築し,パラメータを推定した.その結果,定量分析からはPMLがドライバー全体の追従挙動の均一化に寄与すること,追従挙動モデルによる分析からはPMLの運用により相対速度変化の認知感度が高まること,さらにそれに基づくシミュレーション分析により追従車両群の対象区間の通過時間がやや短縮することが確認された.

  • 山科 卓摩, 瀬谷 創, 喜多 秀行
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_647-I_655
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    車線変更挙動はドライバー間の相互依存行動であるため,ゲーム理論に基づくモデル化が有用である.しかし,既往モデルは直面するギャップのみを対象とし,後続のギャップと比較して選択するという行動を考慮できない.そこで本研究では,複数ギャップの選択を二段階のゲームとして記述することによりモデル化し,シミュレーションデータを用いた分析により,提案モデルが既往モデルより高い現象説明力を有することを確認した.

  • 作中 祐介, 阪本 真, 屋井 鉄雄
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_657-I_666
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    新興経済国を中心に世界の航空需要は年々増加しており,首都圏空港では早急な機能強化が最優先課題となっている.海外では効率的な管制処理システムの導入といったソフト面の整備が進んでおり,管制官のワークロード改善や燃料消費の削減,環境負荷の低減などの効果を上げている.本研究では,羽田空港に適した新たな管制処理システムを検討し,その導入効果を分析することを目的とする.そこで,管制処理システムの導入効果を管制面や運航面,環境面に関して,定量的に評価できる空域シミュレータの開発を行った.次に,都心上空を活用した管制処理システム案を作成し,その導入効果について開発した空域シミュレータによるシミュレーション分析を行った.分析結果から管制処理システムの導入効果に関して検討を行った.

  • 西内 裕晶, 倉内 慎也, 吉井 稔雄, 大藤 武彦, 小澤 友記子
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_667-I_674
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,道路利用者が持つ交通事故リスクに対する知覚バイアスの傾向を把握する.具体的には,松山都市圏におけるドライバーを対象として,生活道路の利用状況や幹線道路の利用意図などに加えて交通事故リスクに対する知覚に関するアンケート調査を企画,実施し,道路利用者が幹線道路と生活道路の交通事故リスクをどのように知覚しているのかを把握するものである.分析の結果,交通事故の引き起こしや巻き込まれ,死亡事故率に対して正しい知覚をなしている人が約45割存在していることがわかった.また,本研究で対象とした3種類の知覚について知覚バイアスをもたらす要因をモデル分析すると,生活道路の方が交通事故を起こす危険性を回避しやすいと思っている人ほど,幹線道路の死傷事故率を過大方向に評価する傾向にあることが分かった.

  • 杉山 大祐, 大橋 幸子, 小林 寛
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_675-I_682
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,単路部に無信号の二段階横断施設を設置しても円滑性が損なわれない道路の交通量を明らかにするため,あらかじめ設定した基本的な道路状況として1ケースを設定し,様々な交通量パターンで交通流シミュレーションを実施することにより,二段階横断施設を設置することで発生する遅れ時間を算出した.また,様々な交通条件下での遅れ時間を算出し,遅れ時間に影響を及ぼす交通条件やその程度について整理した. その結果,無信号の二段階横断施設を設置した道路で発生しうる概ねの遅れ時間が明らかになった.また,自動車速度,大型車混入率及び車群形成といった交通条件の要素が遅れ時間に与える影響やその程度が明らかになった.

  • 鈴木 弘司, 佐藤 佑我, 渡部 数樹, 池田 一星
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_683-I_693
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    近年,交差点内事故対策として,交差点のコンパクト化事業が注目されている.本研究では,近年交差点のコンパクト化が行われた5交差点と構造条件の異なる3交差点において実施されたビデオ観測調査のデータを用いて車両挙動の分析を行った.その結果,停止線セットバック量が大きくなると左折車の進入部速度が上昇すること,隅切半径が大きくなると左折車の進入部,隅角部,流出部速度が上昇することが示された.また,交差点内ゼブラ標示だけでは左折車の速度抑制効果があまりみられないことや,停止線間距離が大きくなると直進車の信号切り替わり時の危険挙動が生じやすくなることが示された.

  • 大橋 幸子, 杉山 大祐, 野田 和秀, 小林 寛
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_695-I_704
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,我が国における横断歩行者事故対策の推進のため,無信号の単路部を対象に,設置に十分な幅員を有さない道路でも設置可能となる比較的簡易な二段階横断施設について,有効で安全な横断面構成を明らかにすることを目的とし,横断面構成の異なる複数のパターンの二段階横断施設について,通行実験により交通安全対策としての有効性と安全性を調査した.その結果,今回対象とした車道部の幅員が9.5m7.0mの道路において,交通条件を加味し,必要に応じ利用条件を限定するなどすれば,交通安全の向上に有効で安全に利用できる二段階横断施設の設置可能性が考えられた.

  • 福井 智侑, 塩見 康博
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_705-I_716
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    交通事故分析は,その成果の実現可能性や細かさを考慮すると,個々の対策箇所ごとに講じることが望ましい.しかしながら,生活道路への交通流入などが事故の要因である場合,その原因は,幹線道路と生活道路の階層性や道路ネットワーク構造といった,特定交差点・単路以外の要素が事故の発生につながっている可能性が考えられ,対策箇所ごとの分析ではそれらの考慮が難しい.そこで本研究では,まず,市区町村単位での道路ネットワーク構造特性を表す指標として方向別交通容量比を提案し,ETC2.0 データによりその妥当性を判断した.その後,ポアソン回帰分析によって事故リスクとの関係を明らかにした.その結果,幹線道路の網羅的な整備が事故件数削減に有効であることなどが明らかとなり,交通安全対策としての道路高規格化の重要性が示唆された

  • 天藤 奈菜, 溝上 章志, 中村 嘉明
    2020 年 75 巻 6 号 p. I_717-I_725
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/08
    ジャーナル フリー

    利用者の利便性を向上させるシステムの普及を背景に,公共交通分野でも交通ビックデータの活用に注目が集まっている.本研究では,まず位置データと乗込調査データから運行実態や利用実態の把握を行った.これらの結果として,遅延区間や乗り継ぎの課題など利用と運行の両方から明らかにした.次にバス停間所要時間の分布から平均値を使った時刻表作成と運行データを利用した時刻表最適化の式を使った時刻表作成を行った.これらの作成した時刻表を比較し,コミュニティバスの最適な時刻表について考察を行った.

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