食道生検組織標本79例を対象に,ISH法を用いてHPV DNAの検出を試みた。さらに症例別にHPV DNAの頻度ならびにDNA typeを検索し,食道病変との関係を考察した。HPV DNAは79個中11例(13.9%)に検出され,その内訳は16/18型が2例(2.5%),31/33/51型が9例(11.4%)であり,6/11型は検出されなかった。患者の組織診断別にみたHPV DNAの検出頻度とDNA typeは以下のとおりで,軽度異形成は19例中3例(15.8%)・(3例とも31/33/51型),中等度異形成は12例中2例(16.7%)・(16/18型,31/33/51型が各1例),扁平上皮癌は40例中6例(15%)・(16/18型が1例,31/33/51型が5例)に認めたが,癌組織には認められず,周囲の異形成部位のみに認めた。正常食道扁平上皮はすべて陰性であった。以上の成績から,31/33/51型は食道上皮に高い親和性があり,異形成病変の発生になんらかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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