杏林医学会雑誌
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43 巻, 4 号
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原著
  • Hiroshi MIYAUCHI, Kenji YAMADA, Hideaki GOTO, Takehiko TARUI, Takeaki ...
    2013 年 43 巻 4 号 p. 85-92
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    Objective: Circulatory system complications such as blood pressure fluctuations and arrhythmias often affect the prognosis of patients admitted to critical care medical centers and those requiring intensive care. Elucidating the influence of disease on the autonomic nervous system (ANS) is clinically important. We have conducted research with the aim of devising a novel method to monitor ANS dysfunction caused by disease.
    Patients and methods: Subjects comprised 12 healthy volunteers (10 men, 2 women; mean age, 35.9 years; range, 26-50 years). After obtaining informed consent from each subject, Allen's test was performed to ensure arterial patency. Absence of problems such as peripheral blood flow disturbance or bleeding diathesis was then confirmed. After subcutaneous infiltration anesthesia of the palmar aspect of the wrist, a 24-gauge micro-electrode was inserted using a technique for invasive indwelling monitoring of arterial pressure. The investigator held and touched the electrode tip against the radial artery wall, detecting micro-action potentials. Each subject underwent a Valsalva maneuver and tilt test, and the induced potential changes were recorded.
    Results: Testing showed micro-action potentials in 8 of the 12 subjects at rest. On Fast-Fourier Transform (FFT) waveforms, waveform patterns showed peaks at low frequencies, gradually decreasing at integral multiples. Amplitudes of action potentials were clearly increased in 6 subjects with the Valsalva maneuver, and in 7 subjects with the tilt test. Detected micro-action potentials likely represented perivascular sympathetic nerve activity (SNA). Moreover, no complications occurred after testing.
    Conclusion: The radial artery is often used clinically for invasive catheter insertion for arterial pressure monitoring. In the periphery, we were able to detect micro-potentials thought to represent sympathetic nerve activity. The subjects of this qualitative study were healthy volunteers. In future, adding evaluation of integrated peripheral blood flow and quantifying both integrated waveform (IW) and micro-action potentials (MP), we will be able to verify the significance of this achievement by examining the disease associated with ANS, such as sepsis and spinal cord injury.
  • 大河戸 光章
    原稿種別: 原著
    2013 年 43 巻 4 号 p. 93-105
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    HPV(human papillomavirus)が宿主DNAにintegrationするイベントは子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia, CIN)の進展に必須であるとされていたが,近年,子宮頸部細胞診陰性材料において高頻度にintegrationの混在が認められている。しかし陰性材料でintegration formが存在することが,CIN発症および進行に関わるものなのかは明らかになっていない。そこで筆者は短間隔で3年以上経過観察した女性19名のうち,HPV16型が1回以上検出された11名(持続感染者3名,一過性感染者8名)を対象とし,リアルタイムPCR法でintegrationを検出し,その検出意義を調べた。その結果,持続感染者にはmixed formが認められ,一過性感染した女性やHPVが持続感染から脱して消失する検体ではepisome formが検出された。よってHPV16型のphysical statusは持続感染の有無に関与することが考えられた。
  • 速度論および分子軌道計算からのアプローチ
    岡田 洋二, 首藤 亜紀, 丘島 晴雄, 吉澤 清良, 大澤亜 貴子, 紅林 佑介, 大瀧 純一
    原稿種別: 原著
    2013 年 43 巻 4 号 p. 107-114
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     唐辛子の辛味成分であるカプサイシン(capsaicin,CAP)の抗酸化活性部位を特定することを目的に,CAPの主要骨格であるグアヤコール構造を有する3種化合物の抗酸化活性( kinh) を速度論的に比較検討した。また,CAP分子表面上の静電ポテンシャルエネルギーの最大値(maximam potential energy,MPE)を分子軌道計算で求めて同様に検討した。速度論的に求めたグアヤコール誘導体のk inh値は4.4×10 3 ~ 1.2×10 4 M1sec 1で,CAPでは5.6×10 3 M1sec 1とほぼ同じ値であった。また,グアヤコール骨格を持たずCAPのacetamide部位を有するN -benzylacetamideには抗酸化活性が全く認められなかったことから,CAPの抗酸化活性を有する部位はグアヤコール骨格部分のフェノール性水酸基であることが推測された。この結果は,CAP分子表面上のMPEを分子軌道法に基づいた計算の結果からも確認することができた。以上,速度論的研究と分子軌道法に基づいた計算結果より,CAPの抗酸化活性部位はそのフェノール性水酸基であることが強く示唆された。
症例報告
  • 澁谷 裕美, 高木 崇子, 西ケ谷 順子, 百村 麻衣, 松本 浩範, 原 由紀子, 小林 陽一, 岩下 光利
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 43 巻 4 号 p. 115-119
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     子宮内膜間質腫瘍は子宮体部間質性腫瘍の中でも10%以下と稀な腫瘍である。WHOの分類では子宮内膜間質腫瘍は形態学的に子宮内膜間質結節(Endometrial stromal nodule:ESN),低悪性度子宮内膜間質肉腫(low-grade endometrial stromal sarcoma:LGESS),未分化子宮内膜間質肉腫(undifferentiated endometrial sarcoma:UES)の3つに分類される1)ESNは非常に稀な腫瘍で,予後が異なるESSとの鑑別が重要となる。
     症例は38歳,2経妊2経産。不正出血を主訴に近医を受診した。粘膜下筋腫または子宮内膜ポリープを疑われ,前医を紹介受診し,経腟超音波やMRI検査にて3cm大の粘膜下筋腫様病変を認め,手術目的に当院紹介となった。血液検査ではHb 9.5g/dlと軽度の貧血を認めたが,生化学検査では異常を認めなかった。
     経腟超音波検査,MRI検査にて子宮内膜に突出する30mm超の腫瘤で,変性を伴う子宮筋腫と考えて子宮鏡下手術を施行した。
     病理組織検査にてESNとLGESSとの鑑別が困難で子宮内膜間質腫瘍と診断されて経過観察中であるが,術後10ヶ月経過した現在まで再発は認めていない。
悪性腫瘍第1集
  • 杉山 政則
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
  • 古瀬 純司
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 123-125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     杏林大学病院は東京都がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて,2008年4月に「がんセンター」を開設した。がん治療は外科切除,化学療法,放射線治療,さらに緩和医療や地域連携など診療科の垣根を超えた包括的な医療が大切である。当がんセンターでは,診療科間の緊密な協力関係を構築し,集学的ながん治療の実施体制を目指している。がんセンターは,運営委員会,外来化学療法室,化学療法病棟,レジメン評価委員会,緩和ケアチーム,がん相談試験室,がん登録室,キャンサーボードからなる組織で活動している。特に進歩の著しいがん化学療法では安全かつ確実な治療を行うための専門的な病棟や外来治療室を整え,化学療法レジメン評価委員会による客観的な評価に基づく治療を実施している。
  • 窪田 靖志
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 127-131
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     終末期医療≒緩和医療であった時代から,がんの診断とともに並行して行われる緩和医療の時代へ。そして海外では最近,緩和医療の介入により生命予後を改善するといったエビデンスも報告され始めており,手術療法,化学療法,放射線療法とともにがん治療の重要な柱となっていくと考えられる。2006年,がん対策基本法が成立し,杏林大学の地域がん診療連携拠点病院指定,杏林大学がんセンターの設立に後押しされながら杏林大学における緩和医療も発展して来た。緩和ケアチーム運営委員会では,評価の難しい緩和医療の活動評価に取り組み,チーム活動の成果を確認しながら活動を行っている。  今後さらなる緩和医療の質の向上と対象患者の拡大,緩和医療の普及,緩和医療における地域連携に取り組んで行きたい。
  • 田中 昭文, 徳永 健吾, 高橋 信一
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 133-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     1994年,世界保健機構(World Health Organization: WHO)の下部組織である国際癌研究機関(International Agency for Resarch on Cancer: IARC)は,主に疫学的検討に基づき,Helicobacter pyloriH. pylori)は胃癌の確実な発癌因子であるdefinite carcinogen(group 1)と認定した。その後,H. pylori感染と胃癌の関係は疫学的検討だけでなく,スナネズミによる動物実験および前向き臨床研究により証明された。ほとんどの胃癌は萎縮性胃炎や腸上皮化生を含むH. pylori感染胃粘膜を背景に発生する。また,Japan Gast Study Group(JGSG)による早期胃癌内視鏡治療後症例における臨床研究において,H. pylori除菌は異時性発癌を約1/3に減少する事を示した。そこで,日本ヘリコバクター学会は“H. pylori感染の診断と治療のガイドライン”2009改訂版を発表し,「H. pylori感染症」はすべて除菌適応とした。わが国におけるH. pylori除菌の保険適用は胃・十二指腸潰瘍,早期胃癌内視鏡治療後胃,胃MALTリンパ腫,特発性血小板減少性紫斑病の4疾患のみである。今後,わが国の胃癌予防戦略をH. pylori除菌による一次予防と内視鏡検査などの画像診断による二次予防の組み合わせに変更して行かなければならない。
  • 井本 滋
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 145-150
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     乳房温存療法,センチネルリンパ節生検,ラジオ波焼灼治療,遺伝子発現に基づく薬物治療,そして分子標的治療の現状と展望について概説する。外科治療は乳房部分切除とセンチネルリンパ節生検によって,乳房を喪失し,術後リンパ浮腫などの後遺症に悩まされる患者を半減させた。また,マンモグラフィ検診や超音波検診によって,早期乳癌の発見率が高まっている。そこで,ラジオ波焼灼治療は乳管内進展が限局した早期乳癌において,乳房温存療法と同等の治療効果が期待されるため,現在臨床試験を行っている。一方,薬物治療はER,HER2,Ki67の分子マーカーを指標とした特性に基づいて治療方針が決められている。よりきめの細かい薬物治療の個別化として遺伝子発現に基づく薬物治療と分子標的治療の開発が進められている。
  • 永根 基雄
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 151-168
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     頭蓋内及び中枢神経系に発生する脳腫瘍のうち,神経膠腫や中枢神経系原発悪性リンパ腫などの原発性悪性脳腫瘍は依然治癒が困難であり,手術,放射線療法,化学療法の集学的治療が必要となる。近年の医療技術の進歩に伴い,これらの悪性脳腫瘍の治療成績も向上がみられてきており,的確な診断と標準的化学療法の施行が極めて重要となってきている。脳には血液脳関門が存在するため,他臓器がんとは異なる薬剤や治療法が開発されてきている。悪性神経膠腫には,経口アルキル化剤であるテモゾロミドが中心となり,最近ベバシズマブの効果が検証されてきている。また中枢神経系悪性リンパ腫では,大量メソトレキセート療法を基盤として,多剤併用療法や地固め療法などが検討されている。本稿では,これらの代表的悪性脳腫瘍に対する化学療法の現状を概説する。
  • ―細胞診の限界に挑戦―
    岡山 香里
    原稿種別: 悪性腫瘍第1集
    2013 年 43 巻 4 号 p. 169-176
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
     近年,米国では30歳以上の女性に対してHPV-DNA検査を併用した一次スクリーニングが始まり,日本をはじめ諸外国も形態学的検査だけでなく,より感度の優れた分子生物学的手法を導入する方向にある。この理由の一つは,形態学的検査による上皮内病変の検出感度が分子生物学的手法より劣ることが明らかにされたからである。しかしながら,細胞診検査による検診を実施しなければ子宮頸癌死亡率の減少は実現できないことも事実である。そこで筆者は,細胞診による上皮内病変の検出感度を向上させるべく明らかなHPV感染所見をさらに追求すべきと考えた。そして筆者らは,意義不明な異型扁平上皮細胞(atypical squamous cells of undetermined significance; ASC-US)症例におけるハイリスク型HPV感染所見として初めて圧排二核細胞を見出した。さらに,HPV初期感染像として氷河的空胞細胞(glacial vacuole cell; GV)を報告した。これらの結果より,細胞診検査の際に圧排二核細胞やGVの有無を確認することは,細胞診検査でのHPV検出感度向上に貢献できるものと思われた。
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