胆道
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22 巻, 1 号
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第43回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 田尻 孝
    2008 年 22 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    胆道癌は悪性度が高くその診断, 治療は未だ困難な場合が多く, 分子生物学的特色を捉えることが重要であると考えられる. 我々は胆道癌の増殖にサイトカインhepatocyte growth factor (HGF), interleukin-6 (IL6) が関与していることを見出した. また, 正常胆管上皮細胞にアポトーシスを惹起するサイトカインtransforming growth factor beta (TGFβ) が胆管癌においては増殖因子として働いていることを明らかにした. さらに, TGFβのシグナルを抑制するために, そのII型のレセプターを遺伝子レベルでノックダウンするRNA interference (RNAi) 分子を作製し, TGFβシグナルが関与しているとされる肝障害モデルにおいてマウス生体内外で効果的にそのシグナル伝達を抑制することを確認した. これらを胆管癌治療, 早期診断に応用することがこれからの研究目標であるが, 胆道癌治療における分子ターゲットが明らかになりつつあると考えられる.
原著
  •  
    調 憲, 安部 智之, 梶山 潔, 赤星 和也
    2008 年 22 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    われわれの化学療法による胆嚢癌治療の成績向上の試みを示す. 胆嚢癌30例をA群 (9例) : best supportive care群, B群 (n=3) : gemcitabine, CDDP, 5-FUによるGFP療法群, C群 (n=18) : 切除群にわけ検討した. A群の生存期間の中央値は68日であった. B群の効果は全例SDで, 平均観察期間460日全例生存中である. pN3の1例は化学療法後切除し, 切除後2年1カ月無再発生存中である. C群のI~IVaの16例は生存中で, IVbの2例は癌死した. A群に比し, B群では16番リンパ節転移, 肝十二指腸間膜浸潤例 (Binf) の生存期間が延長し, 術前化学療法としても効果を認めた. C群の16番転移, Binf例の予後は不良であった. したがって, GFP療法は手術不能例, 予後不良が予想される16番転移, Binf例に有効であり, 今後進行胆嚢癌の術前化学療法としての適応を考えている.
  • 向井 強, 塩屋 正道, 安田 一朗, 岩田 圭介, 冨田 栄一, 森脇 久隆
    2008 年 22 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    非切除肝門部胆管癌における金属ステント (MS) とプラスチックチューブステント (TS) の開存期間を比較し, さらにそれぞれのステントの1本留置と2本留置の治療成績を自験例においてretrospectiveに比較検討した. MS, TSともに1本留置群と2本留置群で開存期間に有意な差は認めなかったが, TS群ではほとんどの症例で内視鏡的に入れ替えができたのに対して, MS群では1本留置群の83%, 2本留置群の75%に経皮経肝的処置が必要であり, さらに2本留置群では33%がMSの破損などにより再内瘻化が困難であり, 外瘻維持を余儀なくされた. MSの開存期間は確かにTSよりも長期であるが, 再閉塞時治療に難渋することが多い. したがって, 抜去不能なMSを選択する際には, 閉塞時治療が容易に行えるような工夫が必要である.
  • ―デヒドロコール酸投与による描出能向上について―
    酒井 裕司, 露口 利夫, 土屋 慎, 杉山 晴俊, 宮川 薫, 福田 吉宏, 宮崎 勝, 横須賀 收
    2008 年 22 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    MRCP描出能向上のため胆汁分泌促進作用のある水利胆剤であるデヒドロコール酸 (DHCA) を投与し描出能が向上するか比較検討を施行した. DHCA1000mgを静注し, 投与前, 投与後30分にMRCPを撮像した. MRCP raw dataはworkstation (Virtual place advance AZEMOTO社) を用い胆道領域の体積を計測した. 男性6例, 女性8例, 計14症例. 年齢22~76歳 (平均55.3歳). 症例の内訳は胆管結石内視鏡治療後6例, 胆道拡張症術後3例, 肝内結石3例, PSC1例, 胆摘後症候群1例であった. 14症例中11症例 (78.6%) で描出能が向上し胆道, 結石, 吻合部の明瞭化を認めた. DHCA投与により末梢胆管の描出が可能となり直接造影と比較しても遜色のない画像を得ることが可能であった. また胆道領域のvolumeの有意な増大 (p=0.007) を認めた. しかし, DHCA投与前から胆道領域に十分胆汁が満たされている2症例 (14.3%), 胆汁性肝硬変をきたしている1症例 (7.1%) は描出能の向上を認めなかった. MRCP撮影時DHCA投与により胆道領域の描出能が向上する可能性が示唆された.
  • 江川 直人, 屠 聿揚, 神澤 輝実, 鶴田 耕二, 岡本 篤武
    2008 年 22 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    当院では, 1989年より進行胆嚢癌に対し温熱・化学・放射線の三者併用療法 (TCRT) を行い, 非治癒切除術と同等な生存期間の延長を得ている. 2002年以降は, ゲムシタビン (GEM) による全身化学療法も行ってきた. 今回, 2006年までの切除不能Stage IV胆嚢癌のうち, GEMによる全身化学療法を行った14例 (G群), TCRTを施行した29例 (T群), GEM以外の抗癌剤による全身化学療法を行った30例 (NG群) を比較検討した. 各群とも, Stage IVbが大半を占めた. 生存率曲線では, G, T群はNG群と比べて有意に良好であったが, GとT群間では差は認められなかった. TCRTは, 短期局所制御療法であり, 肝十二指腸間膜浸潤が問題となる局所進行癌がよい適応であり, 同療法後にGEMを投与する治療法も検討の余地があると思われる. 一方, Stage IVbについては, 外来治療が可能なGEMの利便性が高いと考えられた.
  • 浦田 孝広, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 小山内 学, 松崎 晋平, 深澤 光晴, 栗田 亮, 土屋 貴愛, 一箭 珠貴, 桜 ...
    2008 年 22 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    粘液産生胆管腫瘍の臨床病理学的検討に加え, 画像診断成績および胆管ドレナージを含めた治療成績について検討した. 自験例は全て, 胆管内の乳頭状増殖と粘液の産生を特徴とし, 胆管のびまん性あるいは限局性, 嚢胞状の拡張形態をとり, 膵IPMNに類似した病態であった. 切除5例の病理組織所見はPapillary adenocarcinoma3例, Borderline malignancy1例, Papillomatosis1例, であり, 明らかな浸潤を呈したのは1例でリンパ節転移例は認めなかった.
    画像診断においては, US, CT, 直接胆道造影による腫瘍部の指摘率は67% (4/6) であり, 乳頭状隆起高の低い例や表層進展の診断には胆道鏡検査を要した. しかしながら, 粘稠な粘液が存在するため, 胆道鏡検査前あるいは黄疸・胆管炎に対するドレナージ法が今後の課題である.
  • ―無作為二重盲検比較試験―
    深見 保之, 寺崎 正起, 坂口 憲史, 村田 透, 大久保 雅之, 西前 香寿
    2008 年 22 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    【目的】 腹腔鏡下胆嚢摘出術 (以下, LC) 後の吐き気・嘔吐に対する術前デキサメサゾン投与の有用性を検証する.
    【方法】 2006年1月から2007年8月までに56例のLC患者を術前デキサメサゾン (8mg) 投与群とプラセボ生食群に無作為化した. そのうち5例が除外症例となり, 残る51例について分析した. 術後の吐き気・嘔吐, 制吐剤使用量を記録した.
    【結果】 デキサメサゾン投与による明らかな副作用は認めなかった. デキサメサゾン群では25例中4例 (16%), プラセボ群では26例中11例 (42%) (p=0.039) に吐き気を認め, デキサメサゾン群25例中1例 (4%) とプラセボ群26例中6例 (23%) (p=0.116) に嘔吐を認めた. 平均嘔吐回数はデキサメサゾン群では0.04±0.20回, プラセボ群では0.65±1.41回であった (p=0.021). 平均制吐剤 (塩酸メトクロプラミド10mg) 使用回数はデキサメサゾン群では0.20±0.49回, プラセボ群では0.54±0.84回であった (p=0.045).
    【結論】術前デキサメサゾン投与はLC患者に安全に使用可能であり, 術後の吐き気・嘔吐を軽減させる可能性が示唆された.
総説
  • 古瀬 純司
    2008 年 22 巻 1 号 p. 86-93
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    癌化学療法の重要性が強調される中, 胆道癌は化学療法が効かない癌としてその開発は進んでこなかった. しかし, これまで切除不能胆道癌患者において化学療法による生存期間の延長やQOLの改善を示した報告もあり, 全身状態が良好かつ黄疸・胆管炎がコントロールされている場合には十分有効性が期待される. 胆道癌化学療法の後ろ向き研究では, gemcitabineやcisplatinの有効性が示唆されている. わが国では第II相試験の結果, 2006年6月gemcitabineが, 2007年8月S-1がそれぞれ胆道癌に対し保険適応の承認を受けた. さらに, gemcitabineを中心とした併用療法や分子標的薬など新しい治療開発も進んでいる. 切除後補助療法も含め, これらの薬剤をいかに有効に使うかが次の課題である. 今後胆道癌に対する標準化学療法の確立に向け, 胆道癌の多いわが国で質の高い臨床試験の実施が望まれている.
症例報告
  • 田畑 智丈, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治, 上原 圭介, 夏目 誠治, 青葉 太郎
    2008 年 22 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    右胃大網動脈 (以下RGEA) を用いた冠状動脈バイパス術後の3症例に対し, 腹腔鏡下胆嚢摘出術 (以下LC) を施行した. 上腹部開腹歴のある患者に対して胆嚢摘出術を施行する場合, 癒着などによる臓器損傷の危険性などを考慮して, 開腹胆嚢摘出術 (以下OC) を第一選択とする施設が多い. しかし, 我々は術前にRGEAグラフトの走行経路を検討した結果, グラフト損傷の危険を回避するためにはOCよりもLCの方が安全であると考えた. 右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術後の患者ではあったが, 安全にLCが施行でき, 合併症なく良好な結果を得た.
  • 高良 大介, 早川 直和, 山本 英夫, 梛野 正人
    2008 年 22 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性で平成14年9月より多発性肝嚢胞として近医で経過観察中, 黄疸と肝機能障害を指摘され当院紹介となった. 腹部超音波検査では, 胆管は肝内胆管から総胆管まで著明に拡張し, 総胆管内に不整形の腫瘤を認めた. 腹部造影CTでは肝内胆管及び総胆管の著明な拡張と下部胆管に僅かに造影効果を認める腫瘤像を認めた. ERCPでは下部胆管に陰影欠損を認め, EUSでは総胆管内に粘液と思われる陰影も認めた. 当初は手術を拒否されたため, 胆管ドレナージで経過観察していたが, 胆管炎による発熱が続くため平成15年3月幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 切除標本では下部胆管に3.0×3.0×1.7cmの隆起性病変を認め, 病理組織学的には粘液湖の中に癌細胞が浮遊する低分化型粘液癌の所見であった. 本例は術中胆管切開時に粘液塊も認め, 粘液産生胆管癌の特徴も有する症例であった.
  • 松元 淳, 竹元 千代美, 山元 隆文, 船川 慶太, 今給黎 和幸
    2008 年 22 巻 1 号 p. 105-112
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は54歳 男性. 胆道出血の原因精査のために紹介入院となった. 経口胆道鏡で総胆管粘膜に毛細血管拡張病変を認め, 同部位からの出血を確認した. 繰り返す鼻出血, 家族歴等よりRendu-Osler-Weber病と診断し, 胆管粘膜病変に対して動脈塞栓術を施行し良好な結果を得た. 胆道出血の原因疾患としてRendu-Osler-Weber病は稀であり, さらにこれまでに胆管粘膜の毛細血管拡張病変を胆道鏡で観察した報告はなく, 極めて貴重な症例であると考えられた.
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