以上では,多摩川低地を例にとり,一つの河川のつくる低地における微地形分布の上流から下流への変化を,地形分類の立場から把握し,地形地域区分を行い,低地の地形誌的記載を試みた。同時に,低地地形に関する新しい用語の設定,地形発達について試案をのべ,地形分類と表層地質,地盤高分布との関係あるいは地盤沈下との関係など地形分類の応用的な面についても若干ふれて来た。内容を要約すれば,ほぼ次の通りである。(1)低地の地形地域区分に際して,地形分類図に表現された地形面,特に自然毘防などの微高地ど旧河道の示す分布のバターンは有力なポイソトとなる。(2)地形面分布のパターンと平野面の成因,構成物質,平均傾斜の変化などとの間にはかなり密接な関係がある。(3)多摩川低地は,地形面分布のバターンの特徴から上流部,中流部,下流部の3地形地域に分けられる。上流部は網状流跡と砂礫堆の分布に特徴のある扇状地性平野であり,中流部は自然堤防と後背湿地との組合せよりなる自然堤防帯型平野である。下流都は円弧状デルタの地域であるが,東京デルタなどに比較して砂洲,自然堤防などのつくる微起伏が著しく,地盤高もかなり大きい。中流部と下流部との差は,砂洲など海成堆積面の分布の有無と,地形形成環境の差にある(付表)。(4)低地の地形分類と埋没地形,地盤高分布との聞にはかなり密接な関係があり,地形分類図によって沖積層の構成あるいは地盤沈下の進行しやすい地域をある程度読みとることができる。
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