新入生が有している情報に関する基礎知識を測定するための調査を開発した.高等学校普通教科「情報」を参考に,情報教育の目標の3つの観点(情報活用の実践力,情報の科学的な理解,情報社会に参画する態度)に基づき40問を作成した.5大学の2年度分の新入生を対象とし,入学時とその1年後に同じ問題を用いて調査を実施した.その結果,1年後の調査の平均点が有意に上昇しており,成績下位群において上昇幅が大きかった.また,情報教育科目で扱われることの多い話題に関する問題の正答率が大きく上昇した.本調査が,入学時と1年後の差を明らかにする,または,学生の学修状況を把握するために有用であることが示唆された.
本論文では,大学のアクティブラーニング教室で授業を支援するテクニカル・ティーチング・アシスタントを対象に,テクニカル・ティーチング・アシスタントの業務を通じた学びを調査した.その結果,業務内容に直結する設備機材の知識を学んでいるだけでなく,授業方法などのアクティブラーニングを導入した授業に関することや,自身の態度・能力について学んでいることが明らかとなった.一方で,過去の経験といった個人特性が学びに影響する可能性が考えられたため,さらなる検討が必要である.
本研究では,高等学校の理科の授業において,知識構成型ジグソー法を取り入れたヘルスリテラシー教育の効果について検討を行った.具体的には知識構成型ジグソー法を用いたグループ活動で感染症について知識を統合し,発表をもとにディスカッションした後,学校で一番の脅威になる感染症を投票で決定する授業を行った.そして,授業の実施前後で意識の変化と事後・遅延テストで知識の変化を調査した.その結果,感染症への関心・理解が高まり,情報収集をして冷静に対処できる等ヘルスリテラシーが向上したことが示された.
本研究では,空間共有可能な遠隔映像対話環境「超鏡」(HyperMirror)を用いた奈良-シンガポール間の遠隔学習が,その後の対面交流にどのように影響するかの質問紙調査をもとに分析を行った.まず,事前交流時における「超鏡」を利用した影響を探るために重回帰分析を行ったところ,「コミュニケーションがとれる」「相手の雰囲気が伝わる」「相手の声が分かる」ことが重要であることが示唆された.さらに,これらをもとに対面交流への影響を分析した結果,交流相手の雰囲気を知っておくことが,対面交流時の緊張を和らげることが示唆された.
近年,学習者同士による課題の相互評価に対する注目が高まっている.しかし,他者の課題を正確に評価できる能力がどのような能力であるのか明らかになってはいない.そこで本研究は,他者評価の正確性と理解度との関係を調査した.まず,他者評価の正確性と理解度には相関が示唆されることを明らかにした.その後,他者評価の正確性の算出を容易にするため,受講者全員が共通して採点するレポートを導入した.その結果,共通するレポートを用いて求めた他者評価の正確性と理解度にも同様の相関がみられることが明らかになった.また,教員がレポートを評価することなく,理解度と相関のある他者評価の正確性を求めることができた.