日本教育工学会論文誌
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44 巻 , 2 号
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論文
  • 安斎 勇樹, 東南 裕美
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 155-174
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ワークショップ熟達者のファシリテーションの実践知を構造的に明らかにすることである.本研究では,3名の熟達者を対象とした観察調査とインタビュー調査を行った.分析の結果,熟達者はファシリテーションの場面において知覚した情報を,個人の心理や集団の性質・関係性に関する概念的知識に照らし合わせ,参加者の観察・プログラムの調整・情報伝達の調整・関係性の調整・リアクションの調整に関する手続的知識を用いて具体的な行為を決定していることが明らかになった.また,これらの背後には,ワークショップが権威や規範から解放された民主的な手法であることに価値を置くメタ認知的知識が共通して存在していること,またそれらのメタ認知的知識同士には葛藤関係があり,それによる熟達者固有のファシリテーションの困難さが存在していることも示唆された.分析結果から,実践者育成に関するいくつかの示唆が得られた.

  • 清水 優菜
    2020 年 44 巻 2 号 p. 175-187
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,中学校数学の図形領域における証明の問題解決に対して,エンゲージメントと図形の困難さが及ぼす影響を定量的に明らかにすることであった.中学2年生162名を対象に,質問紙調査を行った.その結果,次の4点が明らかとなった.(1)図形の困難さは,「平行線と角の性質」,「平面図形の計量」,「証明の方法」,「作図と図形の移動」の4因子から構成される.(2)証明の方法に関する困難さが低いほど,および認知的エンゲージメントが高いほど証明の問題を解決できる.(3)作図と図形の移動に関する困難さが低いほど証明の問題を解決できない.(4)図形の困難さの中でも,証明の方法に関する困難さが低いほど,エンゲージメントが高かった.以上の結果から,証明の問題解決とエンゲージメントを促進する上で,証明の方法に関する困難さを低下させることの重要性が示唆された.

  • ニュージーランドの授業の分析をもとに
    古賀 竣也
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 189-201
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    [早期公開] 公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,統計情報の内容を適切に解釈する統計的リテラシーの授業において,どのような批判的思考に関する学習や指導が含まれているのかを明らかにすることである.そのために本研究では,ニュージーランドの統計的リテラシーに関する単元であるEvaluate Statistically Based Reports(ESBR)の授業を分析した.授業で用いられていた教材と授業での発話を分析した結果,ESBR は多面的な視点からレポートを読み取れるように,様々な統計の学習が展開されていることが考察された.また,ESBR の「非サンプリングエラー」と「観察研究と実験研究」の授業での,レポート内の統計に関する情報や,データや調査結果から導出された主張およびその根拠について妥当性・信頼性を判断するといった際の学習や指導に,「多面的な検討・評価」と「確かな証拠や文脈,価値などに基づいた判断」における批判的思考を含むことが考察された.

  • 池田 めぐみ, 池尻 良平, 鈴木 智之, 城戸 楓, 土屋 裕介, 今井 良, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 203-212
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    [早期公開] 公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,上司による業務プロセスへのフィードバックとジョブ・クラフティング,若年労働者の職場における能力向上の関連を明らかにすることである.そのために,インターネット調査を行い取得したデータをもとに,構造方程式モデリングを用い,仮説の検証を行った.分析の結果,第1に,上司による業務プロセスへのフィードバックがジョブ・クラフティングの全ての因子及び職場における能力向上の全ての因子に正の影響を与えること,第2に,ジョブ・クラフティングの次元によって,影響を与える能力に違いがあることが確認された.以上より,若年労働者の職場における能力向上および,ジョブ・クラフティングを促す上で,上司による業務プロセスへのフィードバックが有効である可能性が示唆された.

教育実践研究論文
  • 大前 佑斗, 古屋 達朗, 松下 将也, 水越 一貴, 八代 一浩, 高橋 弘毅
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 213-223
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    人工知能は社会に蔓延する様々な問題の解決に寄与する可能性がある.そのため,早期の段階から人工知能に対する知識を獲得させ,キャリアを意識させておくことが望ましい.したがって本研究では,初等教育機関においてキャリア形成を目的とした人工知能の教育実践を実施した.教育効果の検証項目としては,内発的価値,獲得利用価値,成功期待,キャリア形成,上記4項目を採用した.分析の結果,採用した項目の上昇が確認された.以上より,本研究で提案する教育実践は,動機付けやキャリア形成の観点で有効な教育効果をもたらすと考えられる.

  • 山本 良太, 長友 多絵子, 中谷 良規, 巳波 弘佳, 飯田 健司, 厚木 勝之, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 225-236
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    正課外学習活動への参加によって得られる学生の学習成果に関する先行研究から,学習成果には学生集団の組織化の在り方が影響することが示唆される.そこで本研究では,既存の研究では明らかにされていない「新しく集団を組織する学生がどのような課題に直面するのか,またその課題を乗り越え学習成果につながる集団を組織するための支援方法にはどのようなものがあるのか」という問いを立て,新しく学生集団を組織した学生らの約2年間の活動を対象に調査・分析した.分析の結果,抽象的な活動,二重性のある活動,参加度の違いによるフラストレーション等の課題があり,(1)具体的な活動を可能にする外部との接点を持つ機会を提供すること,(2)モデルとなるような事例や経験者の取り組みを提供し活動を具体化させること,(3)具体化しつつある活動への参加度を高めるための外部との接点を持つ機会を提供すること,の3点を支援方法として提示した.

  • 伏木田 稚子, 大浦 弘樹, 吉川 遼
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 237-251
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    [早期公開] 公開日: 2020/09/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,統計の基礎とデータ分析を扱う反転授業において,受講生の理解度と講義動画の視聴行動を検討した.実践では,講義動画と対面学習の内容に関連があり,真正性の高い問題解決を要するゲームを用いて,動画視聴の前に認識的準備活動 (EPA) を行った.EPA の実施単位として個人EPA 群と協調EPA 群を設定し,受講前,中間,受講後の理解度テストの得点を比較した後,動画視聴の比率やスタイルを分析した.その結果,(1) 個人EPA 群と協調EPA 群の違いにかかわらず,受講生全体の理解度が向上する,(2) 協調EPA 群の方が,対面での演習活動前に理解度がより向上しやすい,(3) 個人EPA 群の方が講義動画を選択的に反復視聴する傾向がみられる,などの示唆が得られた.

資料
  • 木村 千夏
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 253-264
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    初等中等教育において情報の発信者を意識させる取り組みが行われているにもかかわらず,その教育を受けたはずの大学生の多くがインターネットニュースの発信者を意識しない.その原因の1つは,インターネットニュースの発信者を漠然と捉えている大学生が少なくないことにあるのではないかと考えた.そこで,本研究では,その可能性を想定し大学生にインターネットニュースの発信者を意識させる授業をデザインした.インターネットニュースの発信者の構成は情報の発信者の構成を反映しており類似関係にある.本授業は,大学生にこの類似関係に気づかせ,初等中等教育での情報の発信者についての学習経験から類推させて,「インターネットニュースの発信者も意識するとよい」という解を生成させようとするものである.2大学で授業実践した結果,発信者を意識させることができるよう授業デザインされていることが確認され,前述の想定を裏づける傾向も示された.

  • 楠見 孝, 西川 一二, 齊藤 貴浩, 栗山 直子
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 44 巻 2 号 p. 265-275
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,プログラミング教育の授業実践に対する小中学校教員の意欲とその規定因を解明することである.小中学校教員633人にWeb 調査を行った結果,プログラミングを教える機会をもちたい小学校教員は1/3であった.残りの2/3の教員に,教える機会をもちたくない理由を尋ねたところ,半数の教員がプログラミングについてよく知らないこと,他の仕事が忙しいことをあげていた.回答者のうち,コンピュータ不安をもつ者は3割,コンピュータを苦手とする者は半数であった.パス解析によって,プログラミング教育の授業実践に対する意欲の規定因を分析した結果,(a)プログラミングスキルが高いことが人-AI の協働社会への肯定的認知に影響し,教育効果への期待を高め,教育に関与する意欲を高めていた.一方,とくに,小学校教員では,(b)プログラミングスキルの低さが,コンピュータ不安や固定的マインドセットを介して,教育への関与の意欲を低下させていた.

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