スポーツの指導は,広い空間において学習者と教授者が身体の動きを伴いながら行なう.そのため,教授者は,空間認知や学習者の身体認知,授業の勢いの認知,予測認知といった認知が,教室の授業以上に必要となる.そこで本論文は,現在,大学サッカー部監督とJリーグユースチームのコーチを兼務している対象者に,Jリーグの試合を監督になったつもりでピッチレベルから観てもらい,状況認知を探った.「今この時」にピッチレベルで監督として何を観ているのかの語りと,「今この時」に頭の中で描いている図(スケッチ画)をリアルタイムで採取して,試合終了後に,この語りとスケッチ画の裏づけの再現認知を行った,その結果,ピッチレベルで視覚としては水平上に観える空間を,ピッチを真上から観る鳥瞰図や若干高い場所から奥行きをもって観るワイドビューの図としてとらえ,その図を次から次へと重ね合わせながら次に起こることの予測を行なうことが明らかとなった.
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