日本教育工学会論文誌
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44 巻, 4 号
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論文
  • 位置・向き情報を用いた関心推定の試み
    山田 徹志, 宮田 真宏, 中村 友昭, 前野 隆司, 大森 隆司
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 365-376
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    本論文では,保育分野(就学前教育・養育)において「子どもの育ち」を解釈する為の新たな方策として,子どもの位置・向き情報から関心を推定する分析手法の開発について報告する.我々はこれまでの研究から保育者が経験的に子どもの関心を読み取る際,子どもの位置・向きという行動特徴量を参照することを示した.同時に,人による関心状態の評価に対してベイズ推定を用いることで定量化できることが示唆された.これらをうけ本研究では,記録した保育活動場面の映像データ中の子どもの位置・向き情報と関心の対象について保育者によるアノテーションを実施した.その後,人手による関心記述の行動尤度と機械学習(HMM 法,LDA 法)による行動尤度を比較分析した.結果,取得した保育活動場面における幼児18名の関心の傾向は位置・向き情報から推定可能であることが示された.

  • 城戸 楓, 仲矢 史雄, 片桐 昌直
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 377-386
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    地震や台風など災害の多い日本において,国民の防災に関連した知識や技能の習得は最も重要な課題の一つである.また,防災教育では,学習直後ではなく,災害場面まで学習が持続している必要がある.そのため本研究では,ゲームを取り入れた遊びながら防災に関連する知識や技能を学ぶことが出来る防災教育イベントを通して,小学校児童の防災知識の学習に関する向上効果の持続についての検討を行った.調査では,2019年度の防災教育イベントの終了後およびその半年後に,ポストテストとレイターテストと呼ばれるペーパー形式の確認テストを行い,その得点を用いて学習効果の持続を測定した.その結果,防災教育イベントの後,一定の期間が経過していても,防災に関連する知識や技能の向上効果は持続していることが確認された.

  • 椿 美智子, 増井 洋平, 鈴木 勇歩
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 387-408
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,理工系女性のキャリア形成とwell-being の関係について,現在社会で活躍している理工系女性に実施されたアンケートデータに基づきLatent class trees を用いてモデル化を行い,検討を行っている.LCT を用いて潜在クラスの木構造化を行うことで理工系女性のタイプ分類を行い,算出した各クラスの各変数の回答確率に基づいた平均回答に対し,ウォード法を用いたクラスタリングを行うことでモデル全体における変数の分類を行うことを提案し,仮説を与えるのではなく,データから導かれた各変数群(潜在変数)と各潜在クラスの解釈をシステマティックに行うことを容易にした.分析の結果,8タイプに分類され,階層的に比較しながらタイプを解釈し,更に,学部卒業者・大学院修了者,子育て経験の有無の2つの視点から比較検討を行うことで,理工系女性のキャリア形成とwell-being の関係性のより詳細な把握を行うことが出来た.

  • 渕上 ゆかり, 杉田 菜穂
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 409-418
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,裁量労働制のもとで教育,研究,大学運営など多岐にわたる業務に従事している大学教員のワーク・ライフ・バランス実態と求められる職場環境改善支援を明らかにする.規模と形態の異なる3大学に所属する大学教員を対象に行われた調査結果の中から,ワーク・ライフ・バランスと職場環境に関する選択式設問結果の解析と,求める研究支援に関する自由回答のテキストマインニングを行った.大学教員のワーク・ライフ・バランス満足度は一般業種よりも高い傾向があり,「研究活動の阻害」という研究者特有の要因を職業性ストレスとして感じている.具体的には,ライフイベントに関わる個人の研究中断や研究時間の不足,研究以外の業務負担,そして支援対象周辺への支援不足による弊害がある.また,業務量に対する不安が,上位職登用への否定的な意識に繋がっており,特に女性は,ジェンダー・バイアスによって自身の上位職への登用に消極的である.

  • 安田 晶子, 小方 博之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 419-429
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/01/12
    ジャーナル フリー

    大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.

  • 八木澤 史子, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 431-442
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,1人1台の情報端末を活用した小学校の授業で用いられる教師の教授知識の特徴を明らかにするため,授業で観察された教師の教授行動の背景にある意図について授業者にインタビューを行い,その内容を「授業についての教師の知識領域」(吉崎 1988a)の枠組みを参考に分類した.その結果,1人1台の情報端末を活用した授業においても,情報端末を用いる以前から示されていた枠組みが授業者の教授行動の背景として存在する教授知識あるいは考え方を分類するうえで適用可能であることが示唆された.また,授業者が用いた教授知識の中には,学習活動や学習機会,学年,教科の影響を考慮する必要がある特徴をもつ知識も示された.さらに,ICT に関する知識を吉崎が示した知識領域との関連の中に見出した.その結果,ICT に関する知識は4つに分類され,吉崎が示した知識領域の拡張と捉えられるものとそうでないものがあることが示唆された.

教育実践研究論文
  • 教職協働初任者研修の実践とその評価
    富岡 直美, 田中 智子, 大野 宏之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 443-451
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    本研究は,USR への意識を醸成するためにFD・SD で実施した教職協働初任者研修の実践とその評価を行うことを目的としている.研修は,大学の社会的価値を向上させる方法について初任教職員がディスカッションする形式で2019年2月に実施した.ルーブリック,アンケート,感想の記述を分析した結果,次の2点の成果が見られた.第1に,USR をベースとした研修内容により参加者が大学での仕事に社会的な価値を見出すことができたことである.このことは,「教職員のUSR への意識を醸成することは,仕事の価値を感じることにつながる」という本研究の仮説を支持している.第2に,教職協働で多様な価値観を持つ人々と対話する研修方法により,参加者の視野を広げる機会となったことである.あわせて,研修が初任者同士の感情の共有や情報交換の場としても機能したことも示唆された.

  • 村山 隆, 大島 崇行
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 453-468
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,「学習者全員が学習目標を達成することを目指し,自由に学習方略を決めることができる学び」を「個に応じた学び」と定義し,「個に応じた学び」を保障する学習デザインが児童の音読技能の向上に与える効果を調べた.実践では,小学6年生を対象に,モデル音声を再生できるタブレット端末や音読補助教材を活用可能にする,個人・協同での学習に制限を設けない等,学習方略を自由に選択できる環境で英語の音読練習を帯活動として行い,音読技能の変化と学習者の学びの実態を調査した.その結果,学習者全体の音読の発音・抑揚・速度の技能が有意に向上した.また児童がO’MALLEY et al. の分類による認知ストラテジーや社会・情意ストラテジー,メタ認知ストラテジーの学習方略を自発的に用い,自らの学びをコントロールして学習する様子が見られた.以上のことから,本研究の「個に応じた学び」を保障する学習デザインにおいては,学習者が自分に適した学習方略を主体的に決定して学びを進め,音読技能を向上させたことが明らかとなった.

  • 西条 正樹
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 469-482
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    近年,スポーツ分野で海外留学を目指す日本人が増えている.本実践報告では,ジャンル準拠タスクを用いた英語教授法により,将来,海外でサッカーの選手や指導者になることを目指す学生または社会人の6名が,サッカーのトレーニング指導で外国語コミュニケーション能力をどのように高めたかを報告する.参加者は,全15週にわたる学習の中で2回(中期と後期)タスクパフォーマンス・テスト(英語でのサッカーのトレーニング指導)が課された.本研究では,参加者の英語による発話の変化の様子を,「語彙・文法」と「ジャンル構造」の観点から2種類の質的調査(学習ログ記録,半構造化インタビュー)を用いて分析した.その結果,ジャンル準拠タスクを用いた英語教授法により,参加者たちは分野に特化した語彙・文法やジャンル構造への認識を深め,タスクパフォーマンス・テストに応用したことがわかった.

  • 園内研修を通した保育者相互の力量形成
    金子 智昭, 金子 智栄子, 植草 一世, 金子 功一, 清水 優菜
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 483-496
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,現職保育者を対象にマイクロティーチング(MT)を用いた園内研修を実施し,研修の有効性を検証することであった.分析1では,1回目と2回目の模擬保育を発話分析により比較し,保育者役と子ども役の行動変容を検討した.その結果,保育者役の子ども役に対する指導や態度がポジティブに変容するとともに,子ども役は保育者役の指導を受け入れて意欲的に参加するようになったことが示された.分析2では,研修直後と研修2ヶ月後の効果を検討した.その結果,研修直後は特に幼児理解と学習意欲に関するMT の効果が認められ,研修2ヶ月後は態度や技能に関する力量が形成されることが示された.

  • 林 一真, 梅田 恭子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 497-511
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/01/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,1人1台のタブレット端末を活用した情報活用能力を育成する授業設計の留意点の提案である.この目標を達成するため,情報活用の場面を教育活動に応じて7つの区分に分け,公立小学校第6学年を対象として,1人1台のタブレット端末を活用した社会科の授業実践に取り組んだ.1学期は児童が自ら情報を収集し,整理,分析する「考える授業」,2学期は分析の結果を生かす「表現・伝達」をゴールに見据えた「探求的な学習」に取り組んだ.4回のスキル調査や評価テスト,5回のワークシートの内容や文字数の調査で,授業実践による児童の情報活用能力の変容を測り,分析を行った.その結果,ICT スキルや学習に対する力や意識を含め,情報活用の6つの場面で有意な向上が見られ,本授業実践の学習支援や3つの授業形態が有効であることが明らかとなった.ここから「情報活用能力」を育成する授業設計における留意点を提案した.

教育システム開発論文
  • 庵 愛, 竹川 佳成, 平田 圭二, 寺井 あすか
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 513-525
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本稿では,文章の階層構造を考慮した,より大域的な一貫性に関する評価指標を提案する.一般に,技術文書は複数の粒度の異なる段落や章などの構造が一貫性をもって階層的に配置されている.そのため,文章の一貫性は1つの構造ごとに評価する必要がある.提案手法では,文が文章を構成する最も小さい単位として考え,文間類似度を用いて,文を接点,類似関係を枝としたグラフを作成する.このグラフを文章構造ごとに作成し,文章全体の一貫性を,文のレベルから階層構造を考慮してボトムアップに計算する.評価実験では,Discrimination とInsertion を用いた文章の並び替え実験と,学生によって執筆された推敲過程における学術論文の評価値を比較する実験を行い,従来手法と性能を比較した.その結果,従来手法と比べて提案手法の評価性能が有意に高くなる傾向は見られなかったが,推敲支援へ適用する場合において提案手法の方が適切なフィードバックが期待できることが示唆された.

資料
  • 北別府 孝輔, 池辺 諒, 菅 広信, 増田 貴生, 政岡 祐輝
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 527-534
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,実践活用レベルで明記されていない臨床のOn-the-Job Training(以下:OJT)における指導者のコンピテンシーについて明らかにすることを目的とした.文献レビューにより,4項目の領域,13項目のコンピテンシー,39項目の行動記述が明らかとなった.文献レビュー後にコンピテンシーのドラフトを作成し,複数施設の教育的役割を担っている指導者や教育分野のエキスパートを対象にしたアンケートを行い,明らかにしたコンピテンシーの表面妥当性,内容妥当性を確認した.最終的に,教育分野のエキスパートによる内容妥当性指数(Content Validity Index:以下CVI)の調査結果から示唆を得て修正を加えた1項目とCVI 得点が80%以上得られた全ての項目で内容妥当性が確保できた.今後は,これらのコンピテンシーを実際に習得できるような場の提供や評価が必要であると考えている.

  • 三島知剛 , 一柳智紀 , 坂本篤史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 535-545
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,教育実習において実習生の指導を担当する教員が,教育実習指導を通した自身の学びや教師としてのその後の力量形成につながるかどうかについての認識を検討することであった.その際,小学校及び中学校教員の認識の違いについても着目した.教育実習指導を経験したことがある小中学校の教師を対象とした質問紙調査(有効回答133名)の結果,(1)全体的に学びや力量形成に対する得点が高く,校種間では小学校教員の方が学びや力量形成を高く認識していること,(2)実習指導における指導形態と学びや力量形成の関連が多く見られ,特に実習生と協働して実習を進めるという指導形態が学びや力量形成と関連していたこと,(3)校種別では,実習指導における指導形態と学びの関連については中学校教員の方が多く,実習指導における指導形態と力量形成の関連については小学校教員の方が多いこと,等が示された.

  • 平成29・30年改訂学習指導要領の分析から
    泰山 裕, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 547-559
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/12/21
    ジャーナル フリー

    平成29・30年改訂学習指導要領において,情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力と位置付けられ,教科等横断的な育成が求められている.しかし,各教科等の学習活動を通して指導可能な情報活用能力やその各教科等相互の関連は十分に整理されていない.本研究では,文部科学省による情報活用能力のIE-School 体系表をもとに小学校,中学校,高等学校の各教科等の学習指導要領本文を分析した.分析の結果,各教科等にはIE-School 体系表で整理された情報活用能力の項目のうち「問題解決・探究における情報活用の方法の理解」が多く求められているのに対して,操作技能や情報メディアの特徴,情報モラル等の知識及び技能,態度などは,各教科等の学習と対応づく数が少ないことが明らかになった.また,各教科等の学習活動を通して指導可能な情報活用能力とそれらの各教科等相互の関連が明らかになった.

  • 澁川 幸加
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 561-574
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/19
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,ブレンド型授業との比較・従来授業における予習との比較を通して,反転授業独自の特徴と定義を検討することである.検討の結果,反転授業は対面授業時の学習活動の質を向上したり新たな学習活動を取り入れたりするために授業外学習の時間の使い方を変えることに重きを置いているが,ブレンド型授業は対面学習と個別学習の組み合わせとテクノロジーの使用に重きを置いているという相違を明らかにした.また,従来授業における予習とは異なり,反転授業における事前学習には教師による学習内容の解説と丹念な設計という要素が含まれることを明らかにした.さらに反転授業は事前学習と対面授業の間に順序性,主と主の関係,不可分性があることが独自の特徴であると述べた.最後に,反転授業では事前学習と対面授業を連関させた授業設計をする必要性と,反転授業を契機に「対面」の価値を再考する議論の必要性を示した.

  • 五島 脩
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 575-582
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    病弱教育を受ける児童生徒は,入院治療により学習活動に多大な制限や制約を受ける.それらを軽減するための手段として近年ICT(Information and Communication Technology)を活用した教育活動が期待されている.本研究では,直近6年間に我が国で報告された実践研究15編について,ICT を活用する上でどのような困難さが指摘されているかという観点で分析し,課題の整理を行った.その結果,ICT を活用する上での課題として【通信面の課題】と【費用の課題】について,計12のカテゴリーに分類された.特に,通信環境の充実等,学校のみでは対応できない課題が多くあることが示された.今後,病弱教育におけるICT 活用に関する実践研究をさらに蓄積していく必要がある.また,およそ20年前から指摘されている費用の課題が継続して挙げられていることから,制度として早急な対策とさらなる対策の具体化が求められる.

  • 久木山 健一, 伊藤 弥生, 山口 祐子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 4 号 p. 583-590
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル フリー

    SST は生徒指導や教育相談における重要手法とされるが,教師自身による実施は多いとはいえない.本研究では,教師によるSST の広範な実施に向けて,教師がSST に対してどのようなイメージを有するのかについて検討した.本研究は,①SST に対するイメージ(以下SST イメージ)とSST を自分で実施することに対するイメージ(以下SST 実施イメージ)の個別での検討,②SSTイメージとSST 実施イメージの関連の検討,③SST の経験の有無によるSST イメージやSST 実施イメージの相違についての3つの視点で検討を行うことを目的とした.教師160名に質問紙調査を行った結果,SST イメージとして「有意義」「個性否定」「変化期待」「個性発揮」の4因子,SST 実施イメージとしては,「意欲」「職場での実施可能性」「実施に対する自己効力感」「技術習得」の4因子がみいだされた.SST イメージは勤務校でのSST 実施経験の有無に関わらず全体的に良いイメージであった.一方,SST イメージの良さは,SST 実施への高い意欲にはつながりやすいが,技術習得や実施に対する自己効力感の高まりにはつながりにくいことなどが確認された.これらのことから,多忙な学校で教師が実施しやすく準備・実施コストが低いSST の開発の重要性が示唆された.

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