日本教育工学会論文誌
Online ISSN : 2189-6453
Print ISSN : 1349-8290
ISSN-L : 1349-8290
44 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
総説
  • 齊藤 智樹
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 281-296
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,STEM/STEAM 統合の本質である構成概念のシステムをもとに,統合的なSTEM/STEAM 教育の各類型についてレビューし,それぞれの類型において成される研究と,その課題を検討した.歴史的に示された類型に加えて,統合がどこで起こるのかに焦点を当てた研究を基に,ディシプリンを中心に考えるDisciplined Approach と,学習者のあらわれ(Appearances)を中心に考えるCreative Approach を提示した.

展望
  • 北澤 武, 赤堀 侃司
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 297-304
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    米国を中心に海外で普及しているSTEM/STEAM 教育について,我が国でも文部科学省や経済産業省を中心に議論がなされてきた.そして,2020年度から小学校から段階的に施行する新学習指導要領を踏まえつつ,教科横断的な側面と既存の教科内で扱われる問題の文脈を他の領域と関わらせる側面がある統合型STEM 教育に,リベラルアーツの考え方に基づきながら美術,音楽,文学,歴史に関わる学習を「A」として取り入れた日本型STEAM 教育の議論が行われているが,これを実践できる教員を養成することが課題となっている.本稿では,我が国で議論されているSTEM/STEAM 教育に着目しながら,教員養成に求められるSTEM/STEAM 教育の展望を述べる.

教育実践研究論文
  • 小俣 海斗, 今井 慎一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 305-314
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校プログラミング教育の授業としてIoT 教材を用いたPBL 型授業を行い,児童はIoT 教材を活用して問題解決を行えるのか,また,PBL における活動人数の違いによる児童の反応の特徴を明らかにすることを目的として調査を実施した.全11回の授業を行い,児童の最終成果物を4観点(4点満点)で評価した分析と,自由記述の感想に対するテキストマイニングによる分析を行った.成果物の分析から,提出者129名の平均得点は3.42であり,113名(88%)の児童が3観点以上を満たしていたため,5年生の児童はIoT 教材を活用して問題解決を行うことができることが明らかになった.また,感想の分析から,問題解決を個人で行う場合は,考える時間を十分に確保する必要があり,難しさを感じる児童への支援が必要なこと,グループで行う場合は,児童が自分の意見を言えるような環境を整えることが必要であることが示唆された.

資料
  • 谷田 親彦, 磯部 征尊, 大谷 忠
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 315-324
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,イングランド地域にあるAQA 試験局(Assessment and Qualifications Alliance)が発行したテクニカル・アウォード資格STEM のシラバスを分析・検討することを通して.日本におけるSTEM 教育の計画・実施・評価に関する参照基準を検討する資料を得ることを目的とした.資格STEM はキーステージ4(14~16歳)での学習が想定され,現実的な職業や仕事などの文脈を通して学習する3つの単元から構成されていた.実践的な学習活動を伴う単元では,STEM に基づいた産業を調査する学習や,製品やサービスを創造する学習が想定されており,STEM 教育の学習過程などに対する示唆を得ることができた.また,各単元では,適用されるべき科学,技術,工学,数学に関する固有の知識や理解が明示されており,資格STEM とナショナル・カリキュラムの教科との関連性や位置づけが推察できた.

  • 松浦 李恵, 岡部 大介, 渡辺 ゆうか
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 325-333
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,高等学校のコンピュータルームに3D プリンタやレーザーカッターといったデジタル工作機械を取り入れ,「情報科」の授業カリキュラムを実施した事例を報告する.授業を受けた生徒は182人である.本授業実践において,生徒らはアイデアを発想し,形にする方法を学んだ.制作過程は生徒らによってドキュメント化された.調査者は,実践者として授業に関わりながら,授業の動画撮影,生徒への質問紙調査と,生徒と教員への半構造化インタビュー,フィールドノートへの記述を行った.本論文では,学習者の成果や学習者の振り返りに関するデータを示すことを通して,デジタル工作機械を用いたSTE(A)M 教育について議論を深める.

  • 大石 智広, 望月 俊男
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 335-349
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    筆者らは,高等学校共通教科情報科「社会と情報」のデータ通信方式を学ぶ単元において,参加型シミュレーションによる実験と,事例対比(contrasting cases)の読解とを通して,回線交換方式とパケット交換方式の特徴を科学的かつ探究的に理解することを目指した3時間の授業を設計し,実践した.この評価をするため,a) ミッションを提示した上でモデルを使った参加型シミュレーションと事例対比で学習するクラスと,b) ミッションを提示した上でアニメーションモデルの観察と事例対比を行うクラス,c) ミッションの提示もモデルを使った実験・観察も事例対比もなく,調べ学習により学ぶクラスで比較した.その結果,ミッションを提示した上でモデルを使った学習と事例対比を組み合わせた探究型の授業実践では,生徒がデータ通信方式の特徴を根拠にして自分で説明・提案することができていた.また,パケット交換方式で実装されている複数の通信を同時に実行できる特徴を理解していた.このことから,モデルや事例対比を用いた探究的な情報科の授業実践の可能性を論じた.

寄書
  • 棚橋 沙由理
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 351-356
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    大学博物館は社会教育と学校教育の交差点に位置し,フォーマル教育とインフォーマル教育のそれぞれの特徴を具有する特殊な研究教育機関である.近年,海外の大学博物館でモノを介した教授法Object-Based Learning(OBL)の利点が大きく見直されてきており,事例研究が盛んに進められている.本稿では,理工系大学博物館におけるSTEAM 教育の手法としてOBL の有効性を紹介し,フォーマル教育ならびにインフォーマル教育のそれぞれにおける具体的な実施案を提案する.そして,さまざまな研究分野を有機的に結節させる機能を果たす大学博物館におけるアクティブラーニングの一形態として,OBL の一般化を目指したい.

  • 坂口 憲一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 44 巻 3 号 p. 357-363
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/03/15
    [早期公開] 公開日: 2021/01/07
    ジャーナル フリー

    先端IT 人材が2030年に約30〜50万人不足する見込みである.我が国のIT 産業はグローバル市場で苦戦し,IT 人材の量的・質的不足が続いている.従来型IT 教育の現状から問題点を明らかにし,STEAM 教育の考え方を取り入れた「STEAM ベースのIT 教育」を提案した.さらに,実際の開発案件に基づく応用例を示した.今後は,①課題発見・解決力や創造力等を育成するための教育手法の提案,②OJT を補完する教育システムの提案,③教育カリキュラムや教材の開発を進めたうえで,実践研究を試みたい.

feedback
Top