日本教育工学会論文誌
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47 巻, 2 号
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論文
  • 石本 雄真, 原田 新, 山根 隆宏, 日潟 淳子, 王 松, 田仲 由佳
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 185-195
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    日本の大学生は多くの時間を正課外活動に費やしており,正課外活動での経験が大学生のさまざまな発達に寄与していることが予想されるが,これまでの研究では正課外活動経験が大学生の発達にどのように影響しているのかは明確でなかった.本研究は,大学生を対象としたアンケート調査を用い,正課外活動経験を多面的に捉え,その経験が大学生の発達にどのような影響を与えるのかについて検討したものである.その結果,正課外活動経験をもつ者は,正課外活動に不参加の者やアルバイトのみの者に比べて汎用的技能が高いことが示された.また,正課外活動経験を複数の側面から捉え汎用的技能への影響を検討したところ,一部の先行研究に反し,参加期間や活動時間は汎用的技能に影響せず,正課の学習との関連づけのみが汎用的技能に影響することが示された.これらの結果を受けて,大学生の汎用的技能を高めるためにどのような教育が可能なのかについて考察した.

  • 尾原 健太, 氏間 和仁, 小田 凌也, 福井 敬祐
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 197-205
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    デジタル・リーディングにおけるスクロール操作の際の指の動かし方の方略であるスクロール方略の分類を行い,分類されたスクロール方略を判別するためのアルゴリズムを開発することを目的に,晴眼参加者20人を対象に2つの拡大率の条件において,スクロール操作を伴う文章を音読する実験を行なった.スクロール方略の分類では,低拡大率条件と高拡大率条件の両方で画面に指が接触する時間が短い「Point Swipe」と画面に指が接触する時間が長い「Wide Swipe」の2つが得られた.スクロール方略の判別モデルの検討では,低拡大率条件と高拡大率条件の両方でサポートベクターマシンを用いた判別アルゴリズムによって,高い判別的中率が得られた.これらの結果によって得られた知見を活用することで,拡大を必要とする人のデジタル・リーディングにおける読書の効率化について,スクロール方略の影響を検討することができる.

  • 加藤 走, 木村 充, 田中 聡, 中原 淳
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 207-216
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/06/07
    ジャーナル フリー

    大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にweb による質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.

  • 大学生を対象としたリフレクション尺度の開発を通して
    大山 牧子, 畑野 快
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 217-228
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.

  • 上岡 伸
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/01/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,初任教員が受講する校外研修の転移プロセスを自己調整学習の概念によって定義し,研修の改善に取り組む際の指標として行動意図が有用であるかを検討することである.初任教員145名の回答を用いた因子分析の結果,「教育クラウドの活用」を目標とする職場での行動・認知活動に関する項目群は,自己調整学習因子とフィードバック探索因子の2因子構造と判断された.そして,小学校教員と高等学校教員について多母集団同時分析を行うと,行動意図は,自己調整学習とフィードバック探索の潜在因子である「転移の試行」に対して正の大きい効果量を示した.このことから,行動意図は校外研修と職場における自己調整学習とを橋渡しする役割を果たすと考えられ,研修改善に取り組む際の指標として有用であることが示唆された.

  • 岩間 徳兼
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 237-248
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    近年,様々な学習場面において相互評価が用いられるようになっている.しかしながら,評価者特性や評価者における評価負担などの問題があり,教育評価のための利用はあまり行われていないのが実情である.そこで本研究では,厳しさや一貫性といった評価者特性を組み込んだ項目反応モデルの利用を前提に,モデル母数の推定精度の点から評価数をどの程度減らせるかを実践に即したシミュレーションから確認した.また,その結果に基づいて20名規模の大学の授業における教育実践として,評価数を計画的に減らして相互評価を行わせ,そのデータの分析を通じて教育評価のための情報を得ることを試みた.実データの分析から,評価数を抑えつつも,課題の特性,評価者の特性,能力について,教育改善に資するような情報が得られることが示された.

教育実践研究論文
  • 前年修了者の継続的な熟達化を目指したワークショップの改善とその効果
    高橋 暁子, 根本 淳子, 竹岡 篤永, 市川 尚, 鈴木 克明
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 249-258
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究では,Instructional Design(ID)の専門家の養成を目指した「大学版上級ID 専門家養成講座」のワークショップを題材に,修了者の継続的な参加が修了者自身にどのような意義があるのかを明らかにしようとした.参加者アンケートから,前年修了者がファシリテータとしてワークショップに参加したことで,参加者は有用なアドバイスを得られたと感じていることが示唆された.また,前年修了者に対するフォーカスグループインタビューでは,ワークショップへの継続参加がリフレクションの機会になっていることなどが示唆された.一方で,継続参加の効果についてさらなる分析が必要であることが確認された.

  • 名知 秀斗
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 259-269
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,批判的思考態度育成の機能を加えた動画を視聴させる動画学習と,動画学習後に質問活動を取り入れた対面授業の実践と評価を行った.評価の結果,次の(1)から(3)が明らかとなった.(1) 質問活動を設けることで,68.0%の生徒の動画学習に対する動機づけを高めることが明らかとなった.(2) 生徒の批判的思考態度尺度の得点は,学習進度遅群と速群の両群ともに,事前よりも事後の方が高くなることが明らかになった.(3) 実践した対面授業には,トゥールミン・モデルが取り入れられていたが,授業を通じて,93.0%の生徒がトゥールミン・モデルとして適切な記述が書けるようになることが明らかとなった.

  • 学習観・学習方略・動機づけの変容に着目して
    篠ヶ谷 圭太, 福本 雅俊, 山本 愛美, 坂本 登
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 271-279
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    本実践では,生徒自身が歴史の論述問題を作る「問題作成演習」を通じて,生徒の学習観,学習方略,動機づけの変容を目指した.関東圏の高校に通う2年生1学級(37名)に,歴史における深い問いの型を教えた上で,1学期の定期考査前に世界史の論述問題を作って提出させ,教師が各問題にコメントを付けて学級全体で共有するといった介入を加えた.しかし,1学期の介入では不十分である様子が見て取れたため,2学期の問題作成演習の際には,生徒が作成した良問をいくつかピックアップして全員が解くようにし,さらに,その問題を作った生徒に出題の意図や,問題を解く上で有効な学習方法を説明してもらうようにした.問題作成演習にこのような介入を加えた結果,丸暗記志向や結果志向といった非認知主義的な学習観が有意に低下し,説明方略の使用得点が有意に増加した.最後に,問題作成を行わせる際の注意点や残された課題について考察を行った.

  • 岩﨑 千晶
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 281-296
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,教員が「初年次教育で学習支援に従事する学生スタッフ」に対して求める能力・経験と彼らの育成方法を明示することである.教員5名にインタビューをし,分析考察をした結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員に担えない学生ならではの能力を含んでいた.また教員は能力別にレベル分けをする段階性の方法ではなく,複数の学生スタッフが足りない部分を補い合える学びあいや模倣学習を重視し,どの学生スタッフも活動できる場を提供し,活動にフィードバックをすること等による方法で学生スタッフを育成していることが示された.

  • 森田 和行, 瀬戸崎 典夫, 森田 裕介
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 297-308
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/02/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,光学顕微鏡とテーブルトップ型顕微鏡画像提示システム(以下,MT スコープ)を用いた実践授業における顕微鏡観察時の活動場面を分析し,MT スコープの有用性を評価した.また,児童の協同作業に対する認識からMT スコープを用いた授業を評価した.その結果,光学顕微鏡を用いた授業では,教師の発問に対して児童が気づくという様子がみられた.MT スコープを用いた授業では,児童同士がお互いの発言に気づき微生物を観察していく様子が明らかになった.また,協同作業に対する意識が低い児童は,光学顕微鏡を用いた授業よりMT スコープのほうが,気づきや意欲において有用であることが示唆された.そして,協同作業に対する意識が高い児童は,光学顕微鏡を用いた授業やMT スコープを用いた授業にかかわらず,協同作業に対する意識が低い児童と比較して,楽しみながら小さな生き物を観察していたことが明らかになった.

  • Epistemic Network Analysis による分析
    脇本 健弘, 佐々木 博史, 平山 涼也, 望月 俊男, Eagan Brendan , 結城 菜摘, 舟生 日出男, 久保田 善彦, 鈴木 ...
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 309-324
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究は,タンジブル人形劇によるマイクロティーチング支援システム「えでゅーすぼーど」の教師の専門性向上への有効性を検討したものである.本研究では,教員養成課程において実施された「えでゅーすぼーど」を用いたマイクロティーチングにおける学生の談話を分析した.学生は3回のマイクロティーチングに取り組み,2回目に「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングを体験した.学生の談話をEpistemic Network Analysis により分析し,特徴的な変化を抽出し,さらに質的な分析を行った.その結果,「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングでは,教師役の学生が児童役の学生の学習を深めるとともに,授業を円滑に進めるために即興的な働きかけを行っていたことが示された.

資料
  • 平 和樹, 宮本 友弘
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 325-332
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/01/19
    ジャーナル フリー

    全国の公立小学校2,000校の学級担任を対象に,タブレット利用時の児童の健康に関して質問紙法による調査を行った.2021年8月1日から約1か月間の調査期間において,1,321名から回答が得られた.健康管理の懸念事項として,「児童の目や体の疲れ」,「目の距離が近いこと」,「児童の姿勢が良くないこと」の選択率は48~61%と回答者のほぼ半数に留まった.タブレット利用時の配慮・指導事項では,「机上の整理」を「いつもしている」と回答したのは78%であったのに対し,タブレット調整に関する「映り込み防止のための位置・角度調整」は23%,「表示画面の明るさ調整」は16%に留まるなど大きなばらつきが生じた.これらの実施頻度向上に向けては,教員用に文部科学省が発行した「児童生徒の健康に留意してICT を活用するためのガイドブック」の周知と内容理解が促進要因であることが示唆された.

  • 2021年度リテラシーレベル認定78校の事例から
    新原 俊樹
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 333-342
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    リテラシーレベルの数理・データサイエンス・AI 教育プログラム認定制度(MDASH)に注目し,2021年8月までに認定された78校の教育プログラムを調査した結果,次の4点が明らかになった.(1)各校のカリキュラム編成は,あらかじめ指定した授業科目を履修させる形態のものが最も多かったが,多くは既存の特定の科目を履修させるものであった.(2)修了要件は,2~4単位が最も多かったが,1~24単位まで幅があった.同じ認定制度でありながら各校の修了要件に差があることは,公平性の観点で懸念すべきことである.(3)データ分析の学習手段は,大半の学校で表計算ソフトウェアを用いていることが判明した.この結果は高等学校での情報教育の実状を受けたものと考えられる.(4)先導的なプログラムに選定されるには,授業内容や学生への学習支援より,明確な枠組みの中で推進される地域連携や産業界連携の取組が評価される傾向があった.

  • 阪上 弘彬, 山下 義史, 清水 優菜, 徳島 祐彌, 殿岡 貴子, 清遠 和弘, 永田 智子, 森山 潤
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 343-354
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/02/14
    ジャーナル フリー

    本研究では,JANG and TSAI(2012,2013)がTPACK の概念に「文脈に関する知識」(Context Knowledge)を付与し開発したContextualized TPACK 尺度の日本語版を,中学校教員向けに作成し,妥当性を検証した.邦訳した項目を用いて中学校教員615名に調査を実施した.MESSICK(1995)に基づき,尺度の構造的,内容的,一般化可能性,外的側面に関する証拠を検討した結果,TPCKCx(文脈におけるテクノロジーと関わる教育的内容知識),PCKCx(文脈における教育的内容知識),CK(内容に関する知識),TK(テクノロジーに関する知識)からなる日本語版Contextualized TPACK尺度の妥当性が確認された.また,担当教科や情報担当経験等の属性による差異を検討したところ技術・家庭科教員のTPCKCx とTK など一部に有意差が認められたもののPCKCx やCK には教科間の顕著な差は認められなかった.これに対して情報担当経験のある教員では,経験のない教員に比べて全ての下位尺度の水準が有意に高かった.

  • 木村 明憲
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 355-370
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    [早期公開] 公開日: 2023/03/07
    ジャーナル フリー

    近年,教員養成コースに,情報リテラシーを育成するための科目が設置されるようになっている.そこでは,情報活用の指導力を育成することが求められている.また,大学の授業では,アクティブ・ラーニングに基づいた学修を行うことも求められている.これらの目的を達成するため,1年次に履修する「情報リテラシー1,2」において,スチューデント・エージェンシー(以下,エージェンシー)を考慮したアクティブ・ラーニング型のシラバスおよび授業設計案を開発し,実施した.本研究では,「情報リテラシー1,2(通年)」の前期,中期,後期の3回にわたって,ICT 活用指導力に関する意識を調査した.加えて,授業に関わるエージェンシーを年度末に調べた.それらを基に,意識の変容とエージェンシーの実態が明らかになり,それらの相関が算出された.結果,ICT 活用指導力についての意識は,年間を通して高まることが明らかになり,また,一定程度の相関が見られた.

  • 自己調整学習教材“Text Detectives”を対象とした再生刺激法による授業分析
    細矢 智寛, 狩野 悠也
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 371-386
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自己調整学習を意図して開発した授業における生徒の興味の変化を,再生刺激法で明らかにする.この授業では,毎授業2〜4場面における生徒の興味有無とその理由を報告してもらった.その情報は次のような手続きで検討した.まず,生徒の興味有無データを集計して授業の全体傾向を考察した.次に,生徒の興味の全体傾向が特徴的な授業を選定して,授業展開を示しながら生徒の興味の有無要因を考察した.その結果,次のような事柄が明らかになった.第一に,生徒の興味に影響を与える5つの要因が明らかになった.第二に,授業における生徒の主体的学習態度において重要な要素として,到達度の明確な方略指導,方略指導における授業展開と学習形態の工夫,知的好奇心を誘発する教材づくり,生徒の既有知識の存在が明らかになった.

  • 宮迫 将吾, 谷田 親彦
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 47 巻 2 号 p. 387-396
    発行日: 2022/10/06
    公開日: 2023/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究は,ボストン科学博物館により開発・実践されている初等エンジニアリング教育のカリキュラム:Engineering is Elementary で使用される特徴的な教材であるストーリーブックの構造や特徴を分析することを目的とした.20のストーリーブックに示される各物語に共通する事象であるスキーマは,『問題発生』『解決策の手がかり』『解決策の構想』『専門家との出会い』『エンジニアリングデザインプロセス(EDP)の説明』『調査』『製作・改良』『実行・使用』と特定できた.また,物語の深層的な対立関係を【問題の発生⇔問題の解決】【経験的な知識⇔テクノロジーに関する知識】【独自の解決方法⇔適切な解決方法】として訴求構造を図示した.その結果,各物語の主人公がテクノロジーに関する知識とEDP を習得して問題解決する過程に,読者である児童が共感して学習することが期待されていると考えられた.

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