人工臓器
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27 巻, 2 号
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  • 戸部 道雄, 近藤 治郎, 井元 清隆, 坂本 哲, 鈴木 伸一, 内田 敬二, 野一色 泰晴, 松本 昭彦
    1998 年27 巻2 号 p. 537-540
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    国産の超極細ポリエステル繊維製人工血管(東レ・グラフト)を用いた腹部大動脈瘤に対する, 手術成績, 遠隔成績を検討した. 1992年1月から1996年5月までに, 54例に本グラフトを用いた人工血管置換術を行った. 瘤破裂による緊急手術は21例, 38.9%だった. 手術死亡率は緊急手術19%, 待期手術3%だった.死因はグラフトに起因したものではなかった. 待期手術では術後平均11.7日でCRPは正常化し, 再上昇はなかった. 平均観察期間2.8年での累積生存率は1年93%, 2年85%だった. 遠隔期の死因は多発性動脈硬化によるものが多数を占め, グラフトに起因するものはなかった. 遠隔期のCTおよびDSA検査ではグラフト内径は半数以上で規格サイズに比して10%以上の拡張を認め, CT上は27.7%で新生内膜様の肥厚を認めた. 今後さらに長期の経過観察が必要である.
  • 伊藤 嘉浩
    1998 年27 巻2 号 p. 541-544
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、細胞の高次機能の制御を目指して、遺伝子発現、すなわち分化やアポトーシスを制御できるような人工材料を、神経成長因子(NG正)や腫瘍壊死因子(TNF)をパターン状に固定化して調製した。フォトリソグラフ法でNGF或いはTNFを高分子膜上にパターン状に固定化した。固定化がフォトマスクのパターンに従っておこっていることは、蛍光標識抗体による染色により確認した。NGF固定化膜上では、分化が誘導されると神経突起を形成する褐色細胞腫由来PC12細胞を、TNF固定化膜上では、接着依存性でアポトーシスが観察されやすい横紋筋肉腫細胞A673を培養した。PC12細胞は、NGF固定化領域でのみ分化が起こり神経突起を形成することが明らかになった。さらに、細い線幅にNGFを固定化した場合は、PC12細胞は、NGF固定化領域に従って神経突起を形成した。一方、A673細胞は、TNF固定化領域でのみアポトーシスが誘導され、DNAの断片化が起こることがわかった。
  • 岩崎 清隆, 梅津 光生, 藤本 哲男, 井街 宏
    1998 年27 巻2 号 p. 545-550
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Jellyfish弁の耐久性を低下させる要因と考えられる弁葉へのカルシウム沈着の発生メカニズムを検討するため, 力学的特性に着目して弁閉鎖時の弁葉に生じるひずみを有限要素法を用いて解析した. 弁葉材料の物性値は単軸引張試験から取得し, 弁閉鎖荷重は動物実験から得た弁閉鎖時の平均大動脈圧を用いた. 4節点膜要素を使用し, 解析は幾何的対称性を考慮して全体の1/12のモデルについて行った. その結果, ひずみは主に2ヶ所で集中することが確認された. そこで, さらにこの2ヶ所の厚さ方向のひずみ分布を調べるために8節点六面体要素を使用して簡易化したモデルで弾性解析を行った. これらの結果, 解析で判明した高引張ひずみ域と動物実験結果で観察されたカルシウム沈着位置は見事に対応していた.
    以上より, 変形によって生じる引張ひずみがカルシウム沈着現象の発生に大きな影響を与えるということが, 数値解析および動物実験の両面から明確にされた.
  • 西田 博, 西中 知博, 前田 朋大, 北村 昌也, 冨澤 康子, 川合 明彦, 青見 茂之, 八田 光弘, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1998 年27 巻2 号 p. 551-554
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    実用性の高い人工臓器開発には産学の密接な共同作業が不可欠である。国内企業との連携の強みには対外国意識の共有に加え迅速な相互フィードバックの容易さがあげられる。単なる臨床試用ではなく教室で開発段階から共同作業を続け上市された循環器系人工臓器の経緯をたどると、(1)IABPバルーン・…本邦人に過長なバルーンによる合併症防止、(2)遠心ポンプ…・全回路抗血栓性左心バイパス回路作成のための国産化、(3)PCPS system…・人工肺・遠心ポンプ両者を製作し得る国内企業との連携により簡便に導入可能なpreassembly system作成、(4)silicon薄層コーティング中空糸人工肺・…耐久性に優れる新技術導入に際する流路設計等、臨床のニーズやデータが動機に占める要素大である。今後の日本発人工臓器に向けての臨床側からのKey Wordsは大規模・長期的展望にたつプロジェクトのみに固執しない、cost effectiveness、QOL等患者の視点も含む実用性・普遍性を取り入れたバランス感覚と考える。
  • 三田村 好矩
    1998 年27 巻2 号 p. 555-560
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    日本発のアイデアに基づく完全埋込型人工心臓システムの多くの研究、開発が行われている. すなわち、拍動性ポンプでは摩擦ポンプを使用する電気流体式全人工心臓、新しい波動ポンプを使用する電気機械式全人工心臓、リニアモーター式全人工心臓、ボールネジを使用する電気機械式補助心臓がある. また定常流ポンプとしては、磁気浮上式遠心ポンプ、1個のピポットのみをもつ磁気浮上遠心性ポンプ、心臓など血管系内に植え込まれる軸流ポンプ、振動流ポンプがある. また経皮的エネルギー情報伝送システムとしては、強磁性材料を使用する経皮トランス、赤外光による情報通信がある. これらを使用した動物実験でも全人工心臓で10日間、定常流補助人工心臓で537日の優れた成績が得られている. 日本発の完全埋込み型人工心臓の開発は可能といえる.
  • 熊野 浩
    1998 年27 巻2 号 p. 561-566
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンコーティング(HC)回路使用, ヘパリン減量下の炎症性メディエーターの変動からみたHC回路の生体適合性を検討した. 待期的開心術30例を従来回路使用10例(N群), HC回路使用10例(H群), HC回路を使用し, かつヘパリンを減量した10例(L群)に分け, 顆粒球エラスターゼ(GEL), C3a, インターロイキン6(IL-6)および8(IL-8)を, 術前から体外循環(CPB)終了24時間後までの11時点で測定した. N群とH群は初回投与ヘパリンを300U/kg, L群は150U/kgとした. その結果, N群のGEL, C3aはCPB中にH群, L群よりも有意に高値であったが, H群とL群の間に差がなかった. IL-6, IL-8はCPB後にL群では他の2群よりも有意に低値であり, N群ではHC回路の2群よりも高値をとる傾向がみられた. HC回路使用により白血球・補体活性化, サイトカイン上昇は抑制され, ヘパリン減量に伴いこれらの抑制効果はさらに向上することが示された.
  • 深谷 幸雄, 高野 環, 天野 純, 守屋 俊浩, 矢沢 裕美子, 得間 恒雄, 柳沢 安毅, 鎌田 実
    1998 年27 巻2 号 p. 567-570
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ローラーレスシステムを基本的コンセプトとした一体型non-roller体外循環装置(以下NR-ECC)を独自に開発作製した. 今回NR-ECCの溶血防止効果について, モック実験を行い検討した. モック実験用プールを作成し, NR-ECCによる体外循環と, ローラーポンプによる従来の体外循環回路を作製した. 吸引系統は4系統とし, 各々の回路を同一のウシから得られた血液で充填し, 5時間の体外循環を同時に進行させ, 遊離ヘモグロビンの推移を比較検討した. この上昇率はローラー群で0.415±0.157mg/dl/minであり, NR-ECC群で0.215±0.105mg/dl/minで有意にNR-ECC群の遊離ヘモグロビンの上昇が抑制された(ρ=0.0479). 遊離ヘモグロビンの上昇はNR-ECCで有意に抑制され, NR-ECCの溶血防止果が示唆された.
  • 中谷 勝, 古吉 重雄, 高田 覚, 谷 敍孝
    1998 年27 巻2 号 p. 571-577
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析アミロイドーシス(DRA)治療用の直接血液灌流型吸着器(リクセル)に充填されている吸着体の吸着特性を, 初罐γoにて評価した. 本吸着体は(1)主として分子量4,000~20,000のペプチド・タンパク質を吸着する(2)分子量4,000以下のペプチドは分子量の低下に伴い, また分子量20,000以上のタンパク質は分子量の増加に伴い吸着性が低下する(3)分子量1,000以下の低分子物質や電解質はおおむね吸着性が低い, という吸着特性を有していた.また, DRAとの関連が指摘されている炎症性サイトカインの吸着に関しても, 上記の吸着特性に準ずる結果であった. リクセルは通常の透析時に回路内に組み込むだけで, 中分子領域物質の強力な除去が期待できることから, DRA治療の有用なデバイスとなりうると考えられた.
  • 三澤 吉雄, 布施 勝生, 川人 宏次, 小西 宏明
    1998 年27 巻2 号 p. 578-581
    発行日: 1998/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    キャピオックスEBSはオートプライミング機能を備え, 回路全体がヘパリンコーティングされたPCPSシステムである. 術後心不全に対して本システムを使用した連続10例, 18キットを対象とし, 回路の抗血栓性, ポンプや人工肺の耐久性, システム装脱着の簡便性を検討した. 回路に起因する合併症は18キット中6キットにみられた. 2例では補助循環開始5日, 7日後からポンプ回転に伴うノイズが聴取され, 1例では補助循環開始36時間後から著明な溶血がみられた. 3例とも回路の交換によりノイズや溶血が消失した. また, 人工肺のガス交換能の低下は3例にみられ, それぞれ補助循環開始後46時間, 48時間, 92時間で回路交換した. 他の12キットでは平均142時間の使用で回路に起因する合併症はなかった. また, 回路交換に要した時間は10分以内であり, 本システムは長期補助循環に適していると考えられた.
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