蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
55 巻, 4 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 原稿種別: 表紙
    2004 年 55 巻 4 号 p. Cover1-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App1-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App2-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App3-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 増井 暁夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 243-250
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    近年,ラオス産のソルディダコムラサキChitoria sordida(Moore,1866)に関する研究が進み,北部のシェンクアンXiang Kouang,ポンサリPhong Sali,サムヌアXam Neuaに分布する北部個体群と,東部のラクサオLak Saoに分布する東部個体群が明瞭に区分されるようになった.後者に対しては,亜種名vietnamica Nguyen,1979を適用すべきことが指摘されている.両個体群は,成虫の斑紋ならびに幼生期の形態的・生態的特徴により互いに別種の地位を占めるべきと理解されてきたものの,北部個体群に適用すべき名称は未確定であり,単にChitoria sordidaの一亜種,と記述されたことが多かった.以上の状況により,所謂ソルディダコムラサキの分類に関する再検討が迫られていた.今般,著者は各地産の所謂ソルディダコムラサキの標本を入手し,小岩屋敏氏の示唆により,それらをロンドンおよびパリの自然史博物館に保管されるタイプ標本と比較する機会を得た.その結果,北部個体群は,北東インドのナガランドを基産地とする独立種Chitoria naga(Tytler,1914)に帰属すべきことが判明した.雲南省シーサンパンナを基産地として命名されたChitoria sordida hani Yoshino,1999は,Chitoria nagaのシノニムである.真のソルディダコムラサキChitoria sordida(Moore,1866)はシッキムからベトナム北部にかけて2亜種が分布し,標高500m程度の低山地に棲息する.シッキムからミャンマー北部まで原名亜種を産し,ベトナム北部とラオス東部には亜種vietnamica Nguyen,1979を産する.亜種vietnamicaは,原名亜種と比較して♂翅表が広く茶色味を帯び,前翅表の中室端明色帯が黄色くなることで区別される.ナガランドコムラサキ(新称)Chitoria naga(Tytler,1914)は北東インドのナガランド州を基産地とし,ミャンマー北部,雲南省,タイ北部,ラオス北部にかけて分布し,ソルディダコムラサキの分布圏と部分的に重複するが,標高1,000-2,000m程度の高地を好む.一見ソルディダコムラサキChitoria sordidaとよく似た外観を有し,Antram(1924)を除けば,今まで本種に対して常にソルディダコムラサキChitoria sordidaの名称が誤用されてきた.♂♀ともソルディダコムラサキとは翅型が異なり,前翅裏面の中室端暗色条の存在などの斑紋で区別されるだけでなく,母蝶が卵塊を形成し,幼生期における群居性が著しいといった点でも明確に異なる.本種は地理的変異が小さいと考えられる.なお,従来しばしばC.sordidaの亜種とされてきたC.modesta(Oberthur,1906)は,上記の両種のどちらにも帰属しない独立種であると考える.
  • 神保 宇嗣
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Geogepa属は旧北区東部および東洋区より6種が知られる小さな属で,日本からはG.stenochordaホシオビハマキ1種が知られていた.著者はホシオビハマキに近縁な新種Geogepa monticolaミヤマオビハマキ(新称)を記載した.本種はホシオビハマキに似るが,前翅の中横線が太く濃色であること,♂交尾器のuncusが短く,根本はくびれないこと,♀交尾器のsterigma側方の突起が短く,ostium bursaeが小さいことから区別できる.本州中部亜高山帯に広く分布し,これまでに秩父山地・八ヶ岳山塊・飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈の標本を検討できた.日本産の2種は姉妹種関係にあると考えられる.この2種のvesicaにはヤスリ状の棘が観察されたが,この形質の系統学および分類学的な重要性は今後の検討課題である.
  • 平田 将士, 宮川 崇
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Agrias aedonは南米北西部(コロンビア・ベネズエラ)から中米メキシコ南部まで分布する.原名亜種を含め2亜種に分類され,南米北西部に原名亜種,コスタリカからメキシコ南部にかけて亜種rodriguezi(模式産地は中米グアテマラ)が分布する.前者は大型(♂前翅長41.8mm),前翅赤紋はアーチ型に発達し,外縁に達する.前後翅ともに青紋の発達は良くない.後者はやや小型で(♂前翅長40.1mm),前翅赤紋は縮小しアーチ型とならず,発達した青紋によってその周囲を囲まれる.後翅の青紋は外縁部まで大きく発達する.南米北西部からは,コロンビアを中心にschultei,salvini,petitoensis,denheziといったいくつかの型が記載され,それらの中にはときに亜種として扱われるものもあるが,コスタリカ以北の個体群の斑紋は安定しているようで,rodrigueziの元に記載された型やrodrigueziに近縁として記載された亜種はなかった.筆者らは亜種rodorigueziの分布圏に近接するコスタリカ北西部より本種を得たが,その斑紋はrodrigueziとも原名亜種とも異なるので,新亜種Agrias aedon toyodaiとして記載した.本新亜種は亜種rodrigueziとほぼ同大.裏面も酷似しているが,前翅赤紋は原名亜種グループと同様にアーチ型に発達し,これに伴ってrodrigueziに見られる青紋は後角部に向けて幅狭くなる.後翅はrodriguezi同様に発達した青紋を有する.コスタリカにおいて本種は中央山脈のカリブ海側標高約600-1,200mに極めて局地的に亜種rodrigueziが産することが知られている.本新亜種の産地はそれらの既知産地とは異なり,太平洋側標高約300m地点である.なお,亜種名toyodaiは日本におけるコスタリカ名誉領事を勤められ,日本とコスタリカの友好関係に大きな貢献をされた豊田章一郎氏に献名されたものである.
  • 小林 秀紀, 岸田 泰則
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Mangea gemina gen.et sp.nov.を台湾南投縣廬山温泉より記載した.Torigea beta Schintlmeister,1997とTorigea belosa Wu et Fang,2003をMangeaへ移した:Mangea beta(Schintlmeister,1997),comb.nov.,Mangea belosa(Wu et Fang,2003),comb.nov.この新属はTorigeaとは交尾器と翅脈で区別でき,新種Mangea geminaとM.betaとM.belosaが属する.M.geminaでは前翅中程に2つの黒斑を持つことで,1つしか持たない他の2種と区別できる.ゲニタリアではM.betaとは第8腹板と第8背板が大きく違う.M.belosaとはsociiとsacculus projectionに明らかな違いを認める.
  • 井上 寛
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 266-268
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ボルネオからMilionia androconiataという新種を記載した.同じ地域に産するM.borneensis Inoueに似ているが,一層小型で前翅の赤帯は細く雄では後縁部に達せず,雄の後翅裏面には2つ発香鱗のかたまりがあり,雌では前翅表面の亜外縁部には色彩の淡化した部分が各室内にあって帯状に並んでいる.雄交尾器にcornutusを欠くのはMilionia属ではborneensisと本種だけである.
  • 間野 隆裕
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Four species of plume moths (Pterophoridae) are dealt with. Three of them, Hellinsia tephradactyla (Hubner, 1813), Hellinsia didactylites (Strom, 1783) and Oxyptilus chrysodactyla ([Denis & Schiffermuller], 1775), were recently recorded from Japan, Hokkaido (Arenberger, 2002; Ijima & Kawahara, 2003), and adults and genitalia are illustrated. Albino specimens of Cnaemidophorus rhododactyla ([Denis & Schiffermuller], 1775) are recorded from Hokkaido and adult and genitalia are also illustrated.
  • 吉尾 政信, 石井 実
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    温帯および亜熱帯産のPapilio属アゲハチョウ類では,幼虫期の光周期によって蛹休眠が誘導されることが知られている.一方,熱帯産のアゲハチョウ類の休眠性に関する研究は少なく,休眠の誘導条件などについては不明な点が多い.Ishii(1987)は,オナシアゲハPapilio demoleus L.のサバ個体群(マレーシア,サバ州)の幼虫を20℃,10時間日長で飼育することにより,蛹休眠を誘導しているが,長日区を設けていないため日長の役割については明確ではない.そこで本研究では,熱帯産アゲハチョウ類の休眠性における光周期の役割を明らかにするために実験を行った.1995年2月にサバ州でナガサキアゲハP.memnon L.とシロオビアゲハP.polytes L.の幼虫を採集し,柑橘類Citrus spp.の生葉で飼育した.羽化した成虫をハンドペアリング法によって交尾させた後に採卵し,孵化した幼虫を20℃の12時間および14時間日長で飼育し,幼虫および蛹期間を記録した.その結果,両種とも幼虫期間は約1ヶ月で日長による差はなかったが,蛹期間については日長条件で差が認められた.ナガサキアゲハの蛹期間は,14時間日長で23-24日,12時間日長では23-27日で,わずかではあるが短日で有意に長かった.シロオビアゲハについては,14時間日長では19-21日であったが,12時間日長では蛹化後20-22日に羽化したグループと,羽化までに29-92日を要したグループに分かれた.すなわち,シロオビアゲハでは20℃の短日条件下では休眠する個体が存在した.シロオビアゲハのサバ個体群は25℃では短日条件下(10時間日長)でも休眠に入らなかったが(Ishii,1987),20℃という熱帯では冷涼な気温と短日の組み合わせによって蛹休眠が誘導されることが明らかになった.Denlinger(1986)は,1年を通じて日長の変化の小さい赤道付近では,光周期は休眠誘導の季節信号として機能しないことを示唆しているが,少なくともシロオビアゲハのサバ個体群においては光周期は重要な季節信号であることが示された.
  • 山崎 一夫, 杉浦 真治
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    本論文では,大阪府岬町孝子において晩秋に採集した2種のゴールから得られたハマキガ科に関して報告する.1)イノコズチミフクレフシ(タマバエ科の一種によりイノコズチの胞果に形成されたゴール)をサンプリングし室内飼育すると,ホソバチビヒメハマキLobesia aelopa MeyrickとウスコカクモンハマキAdoxophyes dubia Yasudaの幼虫がゴールと胞果を無差別に摂食しているのを確認することができた.ゴールの2種のハマキガによる攻撃率は5%未満と低く,寄主のタマバエ幼虫はすでにゴールから越冬のために脱出済みか成熟して脱出直前であった.そのため,これらのハマキガ幼虫のタマバエに対する影響はほとんどないと考えられた.2)テイカカズラミサキフクレフシ(タマバエ科の一種Asteralobia sp.によりテイカカズラの実に形成されたゴール)には,ウスコカクモンハマキの幼虫が潜入していた.攻撃されたゴールはかなり劣化していたが,タマバエ幼虫はすでに脱出済みかその直前であった.また,ハマキガのゴールへの攻撃率は8.3%(N=12)であったため,タマバエに対する影響はほとんどないと考えられた.これら2種のハマキガ幼虫はゴール以外の通常の植物組織をおもに摂食する機会的えい食者である.晩秋で新鮮な葉がないために,ゴール組織を代替食物として使用していたと考えられる.
  • V. MIRONOV, A. C. GALSWORTHY, 薜 大勇, 矢崎 克己
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 285-300
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    第3報までと同じように,中国産カバナミシャク属Eupitheciaの12新種を記載した.今回記載した新種は次の通りである.E.gibbosa Mironov&Galsworthy(湖北,湖南),E.argentea Mironov&Galsworthy(四川),E.orba Mironov&Galsworthy(チベット),E.coribalteata Mironov&Galsworthy(青海,甘粛),E.viata Mironov&Galsworthy(甘粛),E.matrona Mironov&Galsworthy(青海,甘粛),E.opicata Mironov&Galsworthy(甘粛),E.primitiva Mironov&Galsworthy(甘粛),E.nigristriata Mironov&Galsworthy(チベット,青海),E.cervina Mironov&Galsworthy(チベット),E.ensifera Mironov&Galsworthy(青海),E.ultrix Mironov&Galsworthy(四川,雲南).また,次の2つのシノニム関係を整理した.Eupithecia viidaleppi Vojnits,1981=Eupithecia jezonica Matsumura,1927;Eupithecia nonpurgata Vojnits,1979=Eupithecia granata Vojnits,1979.
  • 吉尾 政信, 石井 実
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ナガサキアゲハPapilio memnon L.は,近年,日本国内において分布を北方あるいは東方へ拡大している.1940年代の北限は本州および四国の一部であったが,1990年代前半には紀伊半島に侵入した.その後も太平洋沿いに分布を拡大し,1990年代後半から2000年にかけて静岡県や神奈川県で定着が確認されるようになった(岸,2001;諏訪編著,2003).本種の寄主植物である柑橘類は西日本では古くから広く栽培されており,近年における分布拡大は柑橘類の栽培地域の拡大では説明できない.Yoshio&Ishii(1998,2001)は,本種の西日本の3個体群間では休眠性と耐寒性は明瞭な差がないことを示し,近年における本種の分布拡大には気候温暖化が関与していると報告している.本研究では,この仮説を確認するために,侵入・定着直後の静岡県(35°02'N)と神奈川県(35°16'N)の本種個体群について,その光周反応を調べた.その結果,静岡・神奈川個体群ともに長日型の光周反応を示し,短日で蛹休眠が誘起された.蛹休眠を誘起する臨界日長(CP)は,静岡個体群で約13時間,神奈川個体群では約13時間15分であり,これらはYoshio&Ishii(1998)が報告した鹿児島(31°36'N),和歌山(34°11'N),箕面(34°54'N)の各個体群と変わりなかった.温帯では,多くの昆虫で休眠性に地理的変異が存在することが知られ,冬休眠の場合,生息地の緯度が約5度違えば,CPには約1時間の差がみられる傾向がある(正木・矢田,1988).しかしながら,本種では鹿児島と神奈川個体群間でもCPに差は認められなかった.この結果はすなわち,本種の分布拡大が気候温暖化によるとする上述の仮説を支持している.本種の神奈川個体群のCPは,東京産のクロアゲハのもの(23℃で約13時間47分,Ichinose&Negishi,1979)よりも約30分短かった.一般に冬休眠を誘起する臨界日長は高温では短くなることを考慮すれば,本種は関東地方南部ではクロアゲハよりも秋遅くに休眠に入ると考えられる.近年の気候温暖化によって秋の気温が上昇し,冬の到来が遅くなっていることも,本種の関東地方での定着に有利にはたらいているのかもしれない.
  • 吉松 慎一
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ヤガ科ヨトウガ亜科のキヨトウ類は成虫の斑紋が単純で種数も多く,また過去の属の扱いも不統一であったこと等から,種レベルでの処置にシノニムやホモニムが複雑に絡んでいることも度々見受けられる.今回もそのよい例であるが,さらに雌雄の誤同定までも起こったケースである.Hreblay&Ronkay(1998)はLeucania irrorata Moore,1888をMythimna(Sablia)griseofasciata(Moore,1881)の新参シノニムと扱ったが,これは間違いで前者は確かな種である.彼らはレクトタイプとして前者についてはインド産♂をそして後者についてはインド産♀を指定したが,両種の雌雄の組み合わせを間違ってしまった.そこで両種の雌雄交尾器の一部を計測し,両種の雌雄の対応を明瞭にし,また識別点をはっきりさせた.雄交尾器のphallusのzoneより後半部(=suprazonal sheath)は体外に露出され,交尾の際には部分的に♀の体内に挿入される(白水,1960).故に,雄交尾器のphallusのsuprazonal sheathの直径(Fig.1:DSS)と雌交尾器のantrumの最小幅(Fig.2:MWA)を腹方より測定し,両種の識別を試みた.もちろん,suprazonal sheathもantrumも十分硬化している.なお,雌雄交尾器ともプレパラート標本として押しつぶされたものではなく,乾燥標本を解剖後70%アルコールが入ったシャーレの中で立体的な構造を保った状態のものを計測した.前者のDSSは0.59-0.66mm(平均0.61mm;N=5),MWAは0.59-0.63mm(平均0.61mm;N=5)となりよく対応している.また,後者のDSSは0.46-0.49mm(平均0.47mm;N=5),MWAは0.40-0.48mm(平均0.42mm;N=5)とほぼ類似な数値である.これらの交尾器の計測値を見ると,前者の♂と後者の♀は交尾困難なように思われる(前者♂のsuprazonal sheathの直径に比べて後者♀のantrumは幅が小さすぎるため).このような長さの対応以外に,♂のvesicaと♀のductus bursaeは前者では両方とも長く,後者では両方とも短く,同種内で長さがよく対応していることもまた両種の雌雄の対応が正しいことを支持している.一方,前者(Leucania irrorata Moore,1888)はMythimna属の一員であり,そうするとコガタキヨトウMythimna irrorata(Moore,1881)(=Axylia irrorata Moore,1881)の2次新参ホモニムとなるので,ここで新置換名Mythimna(Sablia)decipiens Yoshimatsu,nom.nov.を与えた.M.griseofasciataとM.decipiensは,インドとネパールに同所的に分布しており,今回用いた材料に限っても同地点で同時に採集されている.上記の交尾器の雌雄における長さの対応以外に,両種の形態的差異は以下の通りである.1.M.griseofasciataの♂前翅長は13.4-14.9mm(平均14.1mm),♀では13.9-15.4mm(平均14.5mm).一方,M.decipiensの♂前翅長は15.0-17.2mm(平均16.3mm),♀では15.3-15.8mm(平均15.5mm)とより大きい.2.M.decipiensは前翅に黒色の斑点を備える(特に♂は多数備える)がM.griseofasciataにはほとんどない.3.雄交尾器のsacculus背方にM.griseofasciataでは波打った広く長い突起を備えるが,M.decipiensでは細長い梶棒状の突起を備える.また,juxtaやvesicaの形態にも差が見られる.4.雌交尾器については,M.griseofasciataではductus bursaeは幅が狭くまたductus seminalisがcervix bursaeの前方に付着するが,M.decipiensではductus bursaeは幅広でまたductus seminalisがcervix bursaeの左側方に付着する.
  • 神保 宇嗣, 杉島 一広, 小木 広行
    原稿種別: 本文
    2004 年 55 巻 4 号 p. 315-323
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    日本でこれまであまり知られていなかったナニワズハリキバガ(新称)Anchinia cristalis(Scopoli,1763)を北海道本土から記録し,幼虫期および蛹期の習性とともに再記載した.日本のキバガ上科には類似した種はおらず同定は容易である.今回,4月に本種の幼虫がジンチョウゲ科のナニワズDaphne jezoensisの先端の葉数枚を綴ったシェルター内に見出された.幼虫は夜行性で,シェルター外で葉を食害する.蛹化は枝や壁面に尾端で懸垂した状態で行われ,繭が構築されないために蛹が裸出する.蛹はタテハチョウ科で知られる垂蛹に近い.成虫は5-6月に羽化した.国外での食餌植物としては,同じくジンチョウゲ科のヨウシュジンチョウゲDaphne mezereumおよびカラフトナニワズDaphne kamtschaticaの記録がある.本種には極東亜種A.cristalis kuriliensis Lvovsky,1990が記載されているが,この扱いおよび北海道集団の所属は今後の課題である.Anchinia属は旧北区から5種,東洋区から1種が知られるが,極東からは本種のみが記録されていた.知られている限りでは,本属の種はすべてジンチョウゲ科のDaphne属を寄主とする.また,原索動物サルパ綱の属Anchinia Rathke,1835の存在に気づいたが,ナニワズハリキバガの属Anchinia Hubner,1825のほうが先行するので原索動物のほうが新参同名となる.Anchiniaの科階級群の所属に関して,1970年代中期以降様々な提案がなされてきた.それらは大きく分けて三通りに分類される.すなわち,Hypertrophaを模式属とする科階級群にハリキバガ属を含めるとする第一の処置,Amphisbatisを模式属とする科階級群に含めるとする第二の処置,そしてハリキバガ属を含むたかだか6属からなる単系統性の高い亜科ないし族(模式属はハリキバガ属あるいはそれに最も近縁と推定されるHypercallia)を設けるという第三の処置である.第一の処置の根拠は,蛹が裸出し起立するという習性がHypertrophaとハリキバガ属に共通するというものである.しかし,本研究での観察により,ハリキバガ属の蛹が起立するのではなく懸垂することが明らかにされたため,この処置の妥当性は疑問視せざるを得ない.第二の処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisの間に顕著な差違があるにしても,より適した群が見あたらないから,という消極的な理由によるものである.この処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisが近縁であるとの誤解につながる畏れがあるために採用しがたい.それに対して,三つ目の処置は,その亜科あるいは族の単系統性を支持する形質が複数示されており,さらに先の二つの提案をした著者であっても,その群の近縁性は支持している.従って,この処置を採用しHypercalliinaeを認めることは妥当であろう.しかしながら,この亜科に近縁な分類群は特定されていない.ハリキバガ亜科の強く支持された単系統性と,それに近縁な分類群が未知であることを同時に示すため,本報ではLeraut(1997)の案を採用し,ハリキバガ属を広義マルハキバガ科の亜科Hypercalliinae(ハリキバガ亜科:新称)の一員として扱うこととした.マルハキバガ科は多系統的な分類群であることを前提とした"waste basket"として機能してきたので,ハリキバガ亜科が他の特定の群に近縁であると誤解される可能性は低く,また将来キバガ上科の科階級群の再編が行われる際にハリキバガ亜科が見逃されることも避けられるであろう.
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App4-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2004 年 55 巻 4 号 p. Toc1-_iii_
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App5-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App6-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 55 巻 4 号 p. App7-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2004 年 55 巻 4 号 p. Cover2-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2004 年 55 巻 4 号 p. Cover3-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
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