蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
70 巻, 3-4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 阿部 東, 工藤 貢次, 櫛引 陸奥男
    原稿種別: 本文
    2019 年 70 巻 3-4 号 p. 89-94
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル 認証あり

    We counted haploid chromosome numbers of male specimens for 32 species of Riodinidae (Euselasiinae+Riodininae) collected from the neotropical region. The karyotypes vary from n=16 to 28 in 5 Euselasia (Euselasiinae) species and from n=6 to 34 in 27 species of Riodininae. The karyotype, n=6, in Mesosemia judicialis is the smallest in any species of Riodininae so far described.

  • 津田 正太郎, 津田 元章, 矢後 勝也
    原稿種別: 本文
    2019 年 70 巻 3-4 号 p. 95-97
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル 認証あり

    本種は日本と韓国のみに分布し,国内では東北地方の岩手県を北限として,関東,中部,中国地方,さらには南限となる九州の熊本・宮崎県境付近までの範囲に生息地が点在する.これまで近畿地方からは未記録であったが,今回,既産地から離れた兵庫県から本種の雄成虫1頭が採集された. 発見された環境は標高700 mほどの緩やかな山間部にキャンプ場や宿泊施設がある場所で,落葉広葉樹林沿いの遊歩道に続く建物脇の地面に止まっていた.周囲では樹高10~15 mほどのブナ科植物が多いものの,調査した範囲では食餌植物であるクヌギ・アベマキは確認できなかった.このことから本来の発生地は採集地点から少し離れている可能性もある.県内ではアベマキは広く自生するが,クヌギは薪炭材やシイタケ栽培の榾木として植栽された導入種であるために,クヌギの産地は散在的なようである. 本種の生息環境は里山的自然の広がるなだらかな丘陵地や火山性草原で,このような環境に見られる食餌植物のクヌギ・アベマキを主体とした暖温帯落葉広葉樹林帯にて局地的に産するが,近年では雑木林の伐採などの環境開発によって各地で減少傾向にある.ところが,一部の地域では最近の雑木林の管理放棄により,むしろ老齢木を好む本種にとって良好な環境が広がり,これに伴って分布拡大しているようにも見え,特に岡山県では勢力拡大が目立つ.そのために今回の記録も兵庫県と隣接する岡山県の産地から生息地を広げてきたことが考えられるが,最短の既産地から直線距離で70 km以上離れていることから,従来から生息していた可能性もある. その一方で,卵や蛹等が人為的に持ち込まれた可能性について考えると,近年ではシイタケ栽培が盛んになり,原木のクヌギをほぼ県外(主に福島県)から仕入れていることから,この流通ルートが本種侵入の要因にもなり得る.いずれにしても,今回の記録地やその周辺での今後のさらなる緻密な調査が期待される.

  • 小林 茂樹, 小松 利民
    原稿種別: 本文
    2019 年 70 巻 3-4 号 p. 99-108
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル 認証あり

    ハンノキの葉に潜るハモグリガは奥(2003)で初めて学名未決定種Lyonetia sp.として報告され,その後2008年に寄主植物がハンノキと判明したのでハンノキハモグリガ(仮称・学名未決定)の名が付けられた(奥,2008).本種の分類については,同定依頼を受けた黒子 浩博士(故人)により公表される予定であった.著者の一人,小松は2017年6月から8月に北海道七飯町鳴川においてハンノキ(カバノキ科)に潜るハモグリガ科幼虫を採集した.羽化した成虫の交尾器の形態は黒子博士が残された交尾器スライドとも一致し,近縁種と形態を精査した結果,新種と認めた. ハンノキハモグリガ LyonetiaLyonetiolakurokoi Kobayashi, sp. nov. 開張 9.4?13.5 mm.前翅は白色で後縁の2本の暗灰色の斜条は細く,前縁の2本の斜条と中央で合流して先端部分に向かう.前縁基部から走る暗灰色の帯は,時に前縁斜条と一体化した大きな前縁の帯にみえることがある.また,そのような個体では後縁の斜条が短く不明瞭になる.岩手県では,前翅が白色の夏型,9月下旬以降に暗灰色の秋型が出現する(奥,2008).♂交尾器のバルバは先端がとがり,ファルスはクリハモグリガに比べ,やや長く(1.2倍),より湾曲する.♀交尾器の交尾のうはシグナを欠きドゥクツス・ブルサエとの接合部分付近の硬化部はかぎ爪状の突起をもつ.幼虫は初め葉の背軸側に潜り,やがて葉身全体に拡がる大きな斑状潜孔を造る.ひとつの潜孔に複数の幼虫が潜り,多い場合,7,8個体の幼虫が確認できた.マユはハンモック状で潜孔の外に造る.シラカンバ上での生態は不明. シラカンバから飼育された長野県産標本は,開張12.2?13.5 mmと大きく,顔面は白色ではなく薄茶色で前翅の斜条は不明瞭で黄茶色になるが,♀交尾器の特徴から本種と同定した.♂は未知であるが黒子博士が解剖したこの標本群と思われる♂交尾器スライドを検鏡したところ,本種と特徴が一致した.また,網走産個体(寄主不明)も同様に大きく茶色に近い斜条をもつが,後縁斜条は明瞭で中央で合流して翅頂に向かう.Lyonetiola亜属は,前翅の1.5倍の長さの触角をもつが,本種の触角の長さは1.2倍程度である.

  • 吉田 周, 平井 規央, 上田 昇平, 石井 実
    原稿種別: 本文
    2019 年 70 巻 3-4 号 p. 109-122
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2019/12/20
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    電子付録

    Based on the label information of butterfly specimens collected in Kyoto Prefecture, Japan by Dr. Tadachika Minoura, the distribution of butterfly species in and around Kyoto City in the early Showa period (1930’s to 1950’s) was inferred and compared with the Red Lists of Kyoto Prefecture and the Ministry of the Environment. The specimens contained 63 species and 961 individuals collected at 50 sites in Kyoto Prefecture from 1904 to 1969, including 7 species listed in the Red List of Kyoto Prefecture 2015 or Ministry of the Environment 2018. In particular, it became clear that several species listed on the Red Lists such as Fabriciana nerippe and Eurema laeta were distributed in the Saga or Kinugasa areas, which are now an urban area. Thus Minoura’s collection was proved to an important means for inferring the butterfly fauna in and around Kyoto City in the early Showa period.

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