2002年の4-10月に二上山と葛城山(大和葛城山)の山頂,亜山頂,斜面において15種類の山頂占有性チョウ類の雄が示す各行動の頻度を調査することにより,山頂占有性あるいは山頂占有者についてShields(1967)に基づく伝統的なものを補う新たな区分を提示した.各行動の割合は,葛城山に22箇所,二上山に26箇所,それぞれ標高の異なる区域に設定した半径5mの円形の定点において5分間当たりに観察された静止,飛翔,種内・種間闘争,採餌などの雄の行動パターンの比率に基づいて評価した.この研究では, A1, A2, B, C1, C2という5つのタイプの山頂占有性行動を区別した.タイプA1の種は,狭義の,あるいは「古典的な」山頂占有性チョウ類で山頂を配偶場所としてのみ利用していた.タイプA1には,キアゲハ,ギフチョウ,ツマグロヒョウモン,ヒメアカタテハ,アカタテハ,ヒオドシチョウの越冬成虫,ゴマダラチョウ,ウラナミシジミが含まれた.ナミアゲハ,カラスアゲハ,モンキアゲハのようなタイプA2の種は,タイプA1と同様の目的で山頂を利用するが,静止することがなく,斜面を通過する蝶道を形成していた.イチモンジセセリなどのタイプBの種は,山頂を吸蜜,配偶,移動中の着陸場所の3つの目的で利用していた.テングチョウやヒオドシチョウの夏の成虫などのタイプC1の種では,山頂はテングチョウの生殖休眠を含む夏眠期における,低地の夏季の暑さを逃れるための一時的な生活場所として使われていた.最後に,モンキチョウやべニシジミのようなタイプC2の種では,夏眠期における一時的な生活場所として使われるだけでなく,吸蜜や配偶,モンキチョウにおける寄主植物周辺での繁殖など,他の目的も関係していた.
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