蝶と蛾
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67 巻, 3-4 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. Cover1-
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル フリー
  • -ヨシノクルマコヤガ,ヤマトコヤガ,モンシロクルマコヤガの幼虫が形成する蛹化シェルターの分析-
    船越 進太郎
    原稿種別: 本文
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. 89-98
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー

    ベニコヤガ亜科 Eublemminae のヨシノクルマコヤガ Oruza yoshinoensis, モンシロクルマコヤガ O. glaucotorna, ヤマトコヤガ Arasada ornata,ツマトビコヤガ Autoba tristalis の形態やシェルター形成の違いを調べた.これら4種の幼虫は,シイやカシの倒木の枝に残されている枯葉を食し,その葉を利用して蛹化のためのシェルターをつくる.A. tristalis 以外の3 種の幼虫は枯葉の2箇所に切れ込みを入れて折りたたむように葉を重ね,両側に蓋をしてシェルターを完成させる.

    岐阜市金華山およびその周辺で4 種の蛹化時に形成されたシェルターを探すとともに,幼虫を採集した.O. yoshinoensis, O. glaucotorna,A. ornata の老熟幼虫は,斑紋がよく似ている.A. ornata には第2腹節背面に1対の赤い半球状模様があり,O. yoshinoensisO. glaucotorna では認められない. O. glaucotorna の斑紋は,2列の背線が各節後部で広がることで区別される.A. tristalis は,斑紋が成長段階で変化して前3 種との区別は容易である.飼育容器には枝についたままの食痕の無いさまざまな大きさのツブラジイ枯葉を20枚ほど与えてシェルターを造らせた.O. glaucotorna は,サカキの枯葉から多くの幼虫が得られたので,サカキの枯葉も与えた.これらの種のシェルター形成の違いを調べるため,シェルターを造った葉の葉身長,葉の表裏,葉上の位置,切り込みを入れて折り返す方向,羽化後のシェルターからの脱出方向などを調べた.枯葉は葉柄が上になっているが,葉の位置,方向の記録は葉端を上とした.一部のものはシェルターを開き,蛹あるいは羽化後の蛹殻より種および性と脱出方向を確認した.羽化後および寄生された蛹殻などの同定は,尾突起の形態で行った.

    寄生率は,採取された未成熟幼虫の多くが羽化したことから,成熟幼虫および蛹期に高くなると推定された.野外で得た O. yoshinoensis のシェルターは,一部が葉の裏に作られていたが,飼育した同種幼虫のシェルターは,裏面に作られるものが多くなった. A. ornataO. glaucotorna の飼育個体は裏面に作るものがさらに多く, O. yoshinoensis との違いが認められた.シェルターを造る葉の位置,折り曲げる方向,成虫の脱出方向は,3種とも共通しており,種ごとの違いを見いだすことができなかった.また,いずれの種においても折り曲げる方向と葉の表裏との関係に有意な差は認められなかった.シェルター長と葉身長との関係は,3種に違いが見られた.O. yoshinoensis は,室内でシェルターを造ったものも野外で得られたものもともに低い相関があり,A. ornata は低い負の相関があり,O. glaucotorna は低い相関があった.シェルター長と成虫開張との関係は, 3 種とも相関があり, 中でも A. ornata には高い相関があった.また,野外で得られたシェルターは,ほとんど食痕のない葉に造られており,成熟幼虫は新たな葉に移動してシェルターを作成すると考えられた.羽化個体の多くが葉の下方向から脱出することは,葉柄が上になる倒木に残った枯葉においては上に向かうことになり,翅の展開や飛翔に有利になると思われた.O. glaucotorna の幼虫は,枯れると葉が縦方向裏側に丸まってしまうサカキの中におり,枯葉の構造上,葉を切ってシェルターを造る行動は裏側で可能となる.しかし,ツブラジイの枯葉を与えるとその表側にシェルターを造るものがいた.O. glaucotorna は,シェルターを形成するとき他の樹木の枯葉に移動するものがあるのかも知れない.

    マエヘリクルマコヤガ Oruza mira は,蛹化時に枯葉を切って特徴的な巣を造ることが明らかにされた(山本, 1965, 小木2011).O. yoshinoensis,A. ornata,O. glaucotorna の 3 種は,O. mira と同様の習性を有する.また,O. mira 幼虫は, O. yoshinoensisA. ornata によく似た体型や斑紋であった.幼虫の形態や習性をみる限りこれら 4 種は,近い種であると考えられた.O. yoshinoensis は,Corgatha として記載された種であったが,杉ほか(1982) によってOruza に移された.A. ornata は,Hampton の検索表に従って分類されたが,なお検討の余地があるとされた(杉ほか,1982).これまでの分類は成虫の形態で行われている(Holloway 2009).交尾器をみるとA. ornata は他の 2 種よりもよりキチン化が発達し,雄交尾器のバルバが左右非対称で開きにくいなど異なる点が多いように思われた.Oruza 属の幼虫形態は,O. mira の記載が唯一のようである(山本ほか1965,小木 2011).Holloway(2009)は,Arasada albicosta の幼虫が蛹化時にヤシ科(Palmae)Calamus 属の葉をシリンダー状に切り取ってその中で蛹になることを図示し,よく似た習性が Cerynea punctilinealisMetaemene などでも見られることを指摘している.シェルターを造る習性から進化の道筋を2 通り考えた.すなわち,A はシェルターを造る祖先種があり,形態分化が起きて2つの属に分かれた.その後,分岐したそれぞれにシェルター形成を維持する集団と消失した集団が残った.B は先に形態分化が起こり,その中で収斂的に共通のシェルターを形成する集団が生じた.とするものである.シェルター構造の複雑さから,B のパターンは起こりそうではない.また,A のパターンでは,シェルター形成を消失する途中段階のものが見つかってもよさそうである.O. yoshinoensis,A. ornata,O. glaucotorna, O. mira の 4 種は,はじめからシェルターを造るグループであったのかも知れない.

  • 田所 輝夫, 猪又 敏男, 王 敏
    原稿種別: 本文
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. 99-114
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/08/10
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    Pieris dubernardi (ミヤマスジグロシロチョウ) グループ は, ヒマラヤ・チベット山系の標高3,000-5,000 m の高山 帯に分布する( Fig. 18) 年1 化性のPieris属で, これまでに dubernardi Oberthür, 1884 (Figs 1, 3), chumbiensis (de Nicéville, 1897)( Fig. 4), kozlovi( Alphéraky, 1897)( Figs 5 , 6), gyantsensis Verity, 1911( Figs 8, 9), rothschildi Verity, 1911 (Fig. 10), bromkampi( Bang-Haas, 1938)( Fig. 11), shelpae (Epstein, 1979)( Figs 12, 13), aljinensis( Huang & Murayama, 1992)( Fig. 14), wangi( Huang, 1998)( Fig. 15) 及び pomiensis Yoshino, 1998 (Figs 16, 17) の10 のタクサが記載 されている. これらの蝶はいずれも生息地がアクセスの難 しい山岳地に限られ, 標本数も少なく生態も不詳な上, 近 年の新属の記載や統廃合などの理由から, この130 年間に Pieris, Aporia, Parapieris, Synchloe, Pontia あるいは Sinopieris 属に分類されてきたが, 最近Tadokoro and Wang (2014) により分子系統的に広義のPieris 属に含まれるこ とが確認された. しかし種レベルの分類に関しては依然未 整理の状態にあり, 研究者によって分類はさまざまである. 著者たちは最近いくつかの標本を入手したことから, 本グ ループに属する蝶の種及び亜種レベルの分類をあらためて 見直した. タイプ標本や原記載の写真や細密画, 及び最近入 手したいくつかの蝶の標本をもとに, 翅長・翅形・斑紋・ 発香鱗及び♂交尾器等を比較検討した結果を以下に示す.

    翅長・翅形・斑紋

    グ Review of Pieris dubernardi and its related species group 113 ループにはdubernardi の他, kozlovi, rothschildi, bromkampi, aljinensis 及びpomiensis が含まれ, P. chumbiensis サブグルー プにはchumbiensis に加えてgyantsensis 及びsherpae が含ま れる. この2 つのサブグループの区別点としては, P. chumbiensis サブグループでは♂の場合表面前縁部の第10~12 室が黒鱗に 覆われない点, さらに♀ではそれが5 室まで続く点(Figs 4, 9 & 13( -a)). さらに♂では前翅表面第3室の黒斑が独立していて上 下の第2室や第4室に繋がらない点が挙げられる( Figs 4, 9 & 13( -b)). P. wangiサブグループは亜外縁部の黒帯が表面と裏 面とで大きく異なる点において特異な形質を有している. なお, P. dubernardi サブグループに含まれる6 のタクサでは, 表面の 斑紋が似ているものの, 後翅裏面の黒化程度と生息地によって さらにdubernardi亜種群( dubernardi, rothschildi, pomiensisを 含む)とkozlovi 亜種群( kozlovi, bromkampi, aljinensisを含む) の2 亜種群に分けられる. この内, ssp. rothschildi は近年の採集 記録がまったくない. またdubernardi に関しては, 大型で斑紋 に変異がほとんどない雲南省北西部産の名義タイプ亜種に比 較して四川省北部産の個体群は極めて小型で表面亜外縁部の 黒帯が発達しており, 別亜種であることが示唆される. タクソン 毎の詳細な比較をTable. 1 に示した.

    発香鱗( Fig. 19)

    発香鱗の形状(ラミナの形状や香嚢サイズ)から判断する と, Pieris dubernardi グループはP. napi グループに近縁で あることがうかがえるが, ラミナ頸部がP. napi グループの ものに比較して細長いことから特殊なグループであること が示唆される. グループ内の変異に関しては標本数が充分 でないことから断定はできないが, 限られた情報から敢え て差別化するならば, P. dubernardi サブグループは腕部が 先端で開く傾向があり, P. chumbiensis サブグループは腕部 が先端で閉じる傾向があるように思われる。発香鱗の形状 (特に腕部の形状)からはP. chumbiensis サブグループはP. dubernardi サブグループに比較してP. napi グループにより 近縁ではないかと推察される.

    ♂交尾器(Fig. 20)

    ♂交尾器もまたP. napi グループに似ているが, バルバ内側 の刺毛が太く濃い. また繊毛部の範囲が各タクサで特徴が あるように思えるが, 検体数が少なく断言はできない. な お, ソキウンクスの形状でP. dubernardi グループを二つの サブグループ(P. dubernardi サブグループとP. chumbiensis サブグループ)に分けることができる。P. dubernardi サブ グループではウンクス先端部が強く折れ曲がり, ソキウス は鋸状だが, P. chumbiensis サブグループではウンクスの先端部の折れ曲がり方もソキウスの形状もP. napi グループ に極めて近似している. 交尾器の大きさではD1 (雲南省北 西部産dubernardi 名義タイプ亜種) が他に比較して大型で ある.

    新亜種記載

    上記の観察結果より四川省北部産の個体群は雲南省北西部 産の名義タイプ亜種とは異なる個体群であることが示唆さ れるため, ここに新亜種として記載する.

    Pieris dubernardi lixianensis Tadokoro, Inomata & Wang ssp. nov(. Fig. 2, D2-1~D2-3)

    タイプ標本: ホロタイプ♂ : Fig. 2, D2-2, パラタイプ♂ : Fig. 2, D2-1, D2-3 すべて四川省北部理県米亜羅( 標高 3,700 m). ホロタイプ標本は中国広州市の華南農業大学昆虫生態 学教室に保管予定.

    開翅長: 48 - 50 mm ♂.

    斑紋( ♂) : 裏面は名義タイプ亜種に近似するが表面の亜 外縁部の黒帯が発達し, 名義タイプ亜種に近いものから♀ の斑紋に近いものまで変異が大きい. 秦嶺山脈を基産地と するssp. rothschildi( Fig. 10)とは, 後翅表面第5 室及び第3 室の黒斑の有無により区別できる

    発香鱗: ラミナが短い.( 名義タイプ亜種に比較し, 15-20% 程度短い)

    ♂交尾器: 名義タイプ亜種に近似するが小型.

    ♀標本は未確認.

    亜種名: lixianensis の語源は生息地である中国四川省理県 (Li-xian).

    備考: 四川省南部産の個体群はssp. dubernardi もしくは ssp. lixianensis のいずれかに属すると考えられるがさらな る検証が必要. ただし, 当該報文においては歴史的な分類に 従い暫定的にssp. dubernardi に分類する.

  • 長田 庸平
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. 115-118
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー

    ウスイロコクガNemapogon bidentata Xiao & Li, 2010 は Xiao & Li(2010)によって中国で新種記載された.そして Osada et al.(2015)によって日本でも記録され,サルノコシカケ科のヒトクチタケ・カワウソタケ・シハイタケ・ニクウスバタケが本種の寄主として記録された.しかし,幼生期の記載は行われていなかった.そこで,筆者は幼虫形態の記載を行った.

    本種の幼虫はカワウソタケの子実体の内部を穿孔し,その中で蛹化する.そして,子実体の外側に蛹の前方部を突き出して羽化する.

    本種の幼虫の刺毛配列は,同属のコクガ N. granella (Linnaeus, 1758) とほぼ同様であるが,頭部のA3 刺毛が個眼IIの近くに位置する点で異なる.

  • 井上 大成
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. 119-123
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2016 年 67 巻 3-4 号 p. App1-
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル フリー
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