日本歯周病学会会誌
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51 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 牧野 智彦, 大島 朋子, 川崎 文嗣, 五味 一博
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 4 号 p. 303-315
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    現在, インプラント治療が広く行われているが, その一方でインプラント周囲炎を発症する症例が増加する傾向がある。インプラント周囲炎は歯周ポケットからインプラント周囲溝へ歯周病関連細菌が伝播することにより生じると考えられることから, 一口腔単位での治療が必要である。重度歯周病患者に対して一口腔単位で細菌をコントロールする治療法としてアジスロマイシン(AZM)を用いたfull-mouth SRP (FM-SRP)が報告され, 早期に病態が改善し長期間維持されることが示されている。そこで本研究はインプラント周囲炎を伴う歯周病患者に対し, AZMを併用したFM-SRPを行い, 通常行われる1/3顎ずつのSRPと比較し, インプラント周囲炎ならびに歯周炎における効果を臨床的, 細菌学的に評価した。その結果, 実験群ではインプラント・天然歯ともに対照群と比較し臨床症状が有意に改善し,3ヵ月間維持された。また, PCR-Invader法により歯周病関連細菌5菌種の定量測定を行ったところ, 実験群においてインプラント・天然歯ともに細菌数は対照群と比較し3ヵ月間低く保たれていた。さらに, FM-SRPが細菌叢全体に与える影響を検索するため, T-RFLP法を用いて多菌種解析を行い, Cluster解析したところ, インプラント・天然歯とも治療前後で統計学的に細菌叢の変化が認められた。以上の結果から, 病態の改善には細菌叢の変化が深く影響していることが考えられ, AZMを用いたFM-SRPはインプラント周囲炎に対して臨床的かつ細菌学的に有効な治療法であることが示された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 303-315,2009
  • 成田 宗隆, 難波 智美, 辰巳 順一, 上 佳弘, 石井 麻紀子, 松田 敦至, 三上 晃一郎, 西村 将吾, 呂 宗彦, 林 丈一朗, ...
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 4 号 p. 316-325
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)による歯周組織再生療法の有効性を, 骨欠損形態と術前の重症度により分類し, 比較することにある。EMD療法を施術した患者33名の90部位を対象に調査した。対象歯周囲の骨欠損形態は, 垂直性骨欠損が60部位(1壁性群10部位および2壁性+3壁性群50部位), 水平性骨欠損(水平性群)が30部位であった。また, 術直前の歯周ポケットの深さ(PPD)から軽症(<6mm)群と重症(≧6mm)群に分類した。臨床評価は, 手術直前および術後6か月のPPD, 臨床的アタッチメント・レベル(CAL), 骨吸収率(BL)について測定し, 改善量と改善率を算出した。全被検部位のPPD改善量は3.1mm(改善率 ; 46.8%), CAL改善量は2.8mm(改善率 ; 37.1%), BL改善量は15.2%(改善率 ; 34.5%)で各項目共に有意な改善を示した。また, 骨欠損形態別の評価では, すべての群で有意な改善を認めたが群間の有意差は認められなかった。以上の結果から, EMDによる歯周組織再生療法の術後6か月における臨床評価は, 垂直性骨欠損, 水平性骨欠損共に有意に臨床的パラメータの改善を認め, それらは骨欠損形態による有意差はなかった。重症度による比較では, 1壁性, 2+3壁性骨欠損の重症群で臨床的パラメータの改善傾向を示したが, 水平性骨欠損では軽症群で改善傾向を示した。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 316-325,2009
症例報告
  • 大河内 ひろみ, 竹内 あゆ美, 森 智恵美, 安藤 和枝, 山口 みどり, 長谷川 純代, 山田 和代, 高阪 利美, 向井 正視, 稲垣 ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 51 巻 4 号 p. 326-333
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は, 上顎左側第2大臼歯の動揺を主訴に, 2003年4月に来院した53歳男性である。歯周炎の進行に伴う歯の自然脱落, 上顎前歯部や小臼歯部の病的移動などにより, 咬合崩壊が進行しつつある広汎型の重度慢性歯周炎と診断した。歯周病専門医と歯科衛生士による歯周基本治療により, 歯周炎の進行が抑えられ, 歯周外科療法を行うことなく, サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)に移行した。初診時, 現在歯数18歯で, プロービングデプス(PD)平均4.7mm, アタッチメントレベル(AL)平均5.7mm, PD4mm以上56部位(51.9%), PD7mm以上32部位(29.6%)およびプロービング時の歯肉出血(BOP)は67部位(62%)であった。現在(2009年2月), 現在歯数17歯で, PD平均2.9mm, AL平均4.4mm, PD4mm以上12部位(11.8%), PD7mm以上の部位はなく, BOPは20部位(19.6%)と改善され, 歯周外科療法を行うことなく6年間良好に経過している。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 326-333, 2009
調査・報告
  • 大森 みさき, 稲垣 幸司, 両角 俊哉, 横田 誠, 沼部 幸博, 佐藤 聡, 上田 雅俊, 山田 了, 伊藤 公一
    原稿種別: 調査・報告
    2009 年 51 巻 4 号 p. 334-345
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    日本歯周病学会専門医の喫煙状況および喫煙に関する認識を把握するために郵送法による質問票調査を行なった。
    対象は816名中435名(回収率は53.3%)で, 40歳\u0000301c50歳代が多く70.3%を占めた。内訳は, 大学教員27.8%, 附属病院勤務6.4%, 開業医61.6%, その他3%であった。喫煙歴は, 喫煙者64名(14.7%), 前喫煙者140名(32.2%), 非喫煙者225名(51.7%)であった。患者の喫煙は56.8%が歯周疾患を持っているので吸うべきではないとした。歯科でもニコチン依存管理料が適用されるべきという意見が81.7%だった。歯科では口腔内の変化により禁煙指導を行いやすいと思うに76.8%が同意した。歯周病専門医の資格要件を非喫煙者とすることは71.2%が賛意を示した。患者の喫煙状況は60.3%がほぼ全員について把握していた。重症歯周病患者に喫煙者が多いと感じている者は77.6%, 喫煙する患者は治療に対する反応が悪いと感じている者は89.6%であった。禁煙支援は必要な場合に行っている者が54.7%, 行おうと思っているがまだ行っていない者が22.7%であった。行わない理由は時間がない, 患者がこばむ, 保険点数にならない, 方法がわからないの順に多かった。
    以上より歯周病と喫煙の関係についてのエビデンスの構築により歯科での効果的な禁煙支援に結びつく可能性が示唆され, 保険導入により禁煙支援を行う歯科医師が増加すると考えられた。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 334-345, 2009
教育賞受賞
歯科衛生士コーナー
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