特殊教育学研究
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19 巻, 2 号
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  • 生川 善雄, 増山 英太郎, 堅田 明義, 梅谷 忠勇
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    遅滞児、遅滞者、健常児の3群のWISCの成績に着目し、彼らの知能構造について検討がなされた。遅滞児群(60名)の平均生活年齢は13歳6ヵ月、平均IQは52.80であった。遅滞者群(35名)の平均生活年齢は29歳10ヵ月、平均IQは47.23であった。健常児群については日本版WISCの10歳児の内部相関表が用いられた。分析手続きとしては、通常実施される10個のサブテストに代替問題である「数唱問題」を加えた計11個のサブテスト間の相関行列について、各群別々に主成分分析が行なわれた。その結果は、以下の通りであった。(1)11個のサブテスト間の相関行列における相関係数の値は、概して、健常児の方が遅滞児や遅滞者よりも大きかった。(2)主成分分析の結果から得られた固有値の推移についてみると、健常児は遅滞児や遅滞者に比べて、第1主成分の固有値が一層大きく、第2主成分以下の固有値が急激に小さくなっていた。(3)3つの群から共通に、(1)一般知能の因子、(2)言語能力が要求されるサブテストとそうでないサブテストとを区別する因子、(3)数処理能力が要求されるサブテストとそうでないサブテストとを区別する因子、の3因子が抽出された。因子の内容については3群間で差がみられなかった。しかし、一般知能の因子の寄与率は健常児の方が遅滞児や遅滞者よりも大きかったのに対し、残りの2つの因子の寄与率は遅滞児および遅滞者の方が健常児よりも大きかった。
  • 小宮 三弥
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 10-18
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、ダウン症児の同じ知覚様相における弁別が、提示のし方との関連で、触知覚と視知覚について検討した。提示のし方としては、継時提示と同時提示の2つが設定された。刺激対象は、簡単な幾何学図形(二等辺三角形、半円形、菱形、長方形、十字形、正方形)が用いられた。被験者は、ダウン症児40名、非ダウン症児40名、普通児40名の計120名が選ばれた。各被験者群は、実験の目的を満たすために、実験の条件別に分けられ構成された。その結果、つぎのようなことが示唆された。(1)ダウン症児は、触知覚による弁別で、継時提示、同時提示のどちらも、非ダウン症児と普通児より有意に劣っていた。このことから、提示のし方による弁別時の差異は確認されなかったが、反応内容の分析で、反応傾向に異なることが推察された。(2)視知覚による弁別では、提示条件による違いが観察された。つまり、同時提示のばあい、ダウン症児の弁別成績は、他のグループと比較して相違は認められなかった。しかし、継時提示においては、ダウン症児の弁別反応は、他のグループより有意に劣っていた。以上のことから、ダウン症児は、触知覚と視知覚による弁別反応が提示条件の相違の影響をうけることが示唆された。
  • 石井 順子, 津曲 裕次
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    養護学校の義務制に伴い、現在、様々な問題が指摘されているが、その一つに、施設、設備の問題があげられる。しかし、全国的に実態を把握し、その問題点を解明しようとした資料は極めて少ない。本研究では、全国の精神薄弱養護学校を調査対象とし、今後の施設計画上求められるべき方向性を探る第一段階として、施設概要の把握及び室保有、室配置の特徴から平面計画の類型化を試みた。さらに、竣工年、地域、校舎の既設、新設別との関連を分析した。その結果、(1)既設の場合は老朽、狭あい等、建物の基本的部分での貧弱さ及び養護学校としての計画建築でない問題点があること、(2)本校と分校の格差があり、分校の校舎の状態がよくないこと、(3)チェックリストによる充足度段階が10に分かれ県別のバラつきをみたこと、(4)スロープは1974年以降みられ、食堂は1973年以降、行動観察室は1975年以降多くみられるようになったこと等が明らかとなった。
  • 都筑 学, 田中 道治
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 29-37
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神発達遅滞児における自己意識を、普通児のそれとの比較を通して、因子分析的に検討した。被験対象児は、小学校2年生59名、小学校5年生74名、そして中学校2年生38名の普通児群171名と精神発達遅滞児群31名(平均CAI6.6歳、平均MA7.1歳)であった。自己意識の測定のための自己評価インベソトリーは、知的・能力的側面に関する項目ll、身体・容姿的側面に関する項目7、社会・対人的側面に関する項目11、情緒的側面に関する項目5、性格的側面に関する項目13の計47項目から構成されていた。主因子分析をおこない5因子を抽出し、バリマックス回転をした。各々の因子は、学習・知識の因子、性格の因子、容貌の因子、友人関係の因子、そして、学校の因子と解釈された。5因子に関連した項目について、平均得点による発達的分析をおこなったところ、精神発達遅滞児は小学校2年生とほぼ同様の結果を示したが、個々の細部では独自な面がみられた。
  • 土岐 邦彦
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 38-47
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    認識と運動調整力との連関性に関し、立幅跳跳躍距離調整力(最大努力で跳んだ距離の「半分」の距離の跳躍が課題とされた)が「半分」概念の認識の程度にどのように影響されるかをMA2歳後半から5歳前半の知能障害児を対象にして、普通児との比較検討をおこなった。その結果、認識のレベルが深くなるほど、運動調整力もよくなることが見い出されたが、とりわけ知能障害児には、運動調整力自体に固有の未発達がある、すなわち、「わかっていてもできない」という認識と運動調整力との不一致の存在が示唆された。そこで、立幅跳遂行の際に視覚的補助(目標線)を捜入することにより、認識に関しては捨象したうえで、運動の視覚的調整力に関して補足的に検討した。その結果、視覚的調整力は高年齢ほどよくなり、同一年齢でも、認識のレベルが高いほど視覚的調整力はよくなることが見い出されたが、知能障害児における視覚的調整力の未発達が指摘された。
  • 水町 俊郎
    原稿種別: 本文
    1981 年 19 巻 2 号 p. 48-55
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    多くの心理臨床に関する報告では、"治癒した"とか"改善された"という表現がよく用いられている。しかし、何を基準にしてそのような判定が下されたのかが明らかにされていないことが多い。科学性、客観性を標榜している行動療法においてはとくに、その基準を客観的に明示し得る必要がある。ところが、Brady(1971)が指摘しているように、多くの文献では大部分が治療手続やプログラムの記述で占められ、治療効果のアセスメントが十分になされていないようである。そこで本稿では、とくに吃音を中心にして、行動療法の立場から治療効果のアセスメントについて論じてみたい。
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