聴覚障害者による各種の言語媒体の相手に応じた使い分けについて、現在の日本社会での使用状況を分析した。この研究で用いた調査資料は、東京と近県の重度聴覚障害者に、1991年に質問紙を郵送して、20〜70歳の男女約1,700人から回答を得たものである。そのうちの、口話・手話・筆談の有効性についての諸項目の応答を、男女の応答の差異と、項目の相互の関係に注目して分析した。その結果、家族、聴覚障害の友人、健聴の友人、近所の人、会社の人などの言語使用の相手の部類に応じて、使用の割合やその有効な割合が異なること、手話は健聴者に対してあまり使われていないこと、口話の使用の割合はとくに女性でかなり多いが、有効な割合はあまり多くないこと、男性では筆談の使用の割合が多いことなどが明らかになった。
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