特殊教育学研究
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54 巻, 2 号
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原著
  • 瀧元 沙祈, 中 知華穂, 銘苅 実土, 後藤 隆章, 雲井 未歓, 小池 敏英
    2016 年 54 巻 2 号 p. 65-75
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、改行時に途切れたひらがな単語を音読する際の特徴を、通常音読と比較して検討した。定型発達児と比べて、改行単語の音読潜時が長い(2SD以上)LD児において、発話時間が長いタイプと、発話時間は同程度であるタイプを確認した。ロジスティック分析の結果、2~5文字のひらがな有意味単語の発話時間が通常音読で短い場合に、改行単語の発話時間が短く、音読が効率的になることを指摘した。一方、通常音読の5文字で音読潜時が延長し、標準未達成であったが、改行5文字で音読潜時が短縮し、標準達成を示したLD児を認めた。その中で、改行5文字条件の発話時間が延長した者では、文字―音変換に強く依存した読み方略を選択した可能性が示唆された。これらの者は、改行音読で自己修正を伴う誤反応の増加を示さなかった。自己修正には、概念的準備と音韻的単語が関与するため、これらの者では、改行単語の意味把握が阻害されたことを推測できる。
資料
  • 香野 毅
    2016 年 54 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では肢体不自由者の成長や育ちのニーズについて保護者を対象に調査を行った。高校生もしくは成人の肢体不自由者をもつ保護者55名に質問紙調査を行い、幼児期から現在に至るまでどのようなニーズをもってきたかについて、自立活動の区分に則して回答を求めた。さらに4名の成人肢体不自由者の保護者に聞き取り調査を行い、ニーズの詳細や当時のエピソードについて尋ねた。カイ二乗検定と下位検定を行った質問紙調査の結果としては、早い年齢段階には〈健康の保持〉〈身体の動き〉〈生活行為〉のニーズが高く、〈人間関係の形成〉〈社会生活体験〉は遅い年齢段階でニーズが高まっていた。聞き取り調査では、各ニーズの選択理由やニーズ内容の質的な変化、環境や発達の変化などを契機に、ニーズが変化することが語られた。各ニーズの年齢段階による変化について考察を行った。
実践研究
  • 宮田 賢吾, 村中 智彦
    2016 年 54 巻 2 号 p. 87-99
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    小学校特別支援学級に在籍する特別な支援を必要とする児童5名を対象に、宿題遂行と提出を促進し、その要因について検討した。指導は事前アセスメントおよびベースライン(BL)期、支援I期、支援II期で構成し、指導および観察場面は対象児童の在籍する特別支援と交流学級であった。支援I期では、宿題の課題難度を下げ、課題量を減らす先行操作と、児童が使用する宿題カードを改善し、宿題遂行を自己評価する、教師や家族、友達から称賛を繰り返し得られる結果操作を取り入れた。支援II期では、学校での自発的な宿題提出を高めるために、支援員の立ち位置を変更した。その結果、支援I期では、児童5名の宿題遂行のレベルは高まり、4名で自発的な漢字の書き取りや計算を家庭で遂行した結果も提出されるようになった。支援II期では、2名の宿題提出の自発レベルが高まった。先行操作と結果操作を組み合わせた包括的な支援によって、児童の宿題遂行のレベルが高まったことを示唆した。
  • 小西 一博
    2016 年 54 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では、特別支援学校に在籍する知的障害児に対して、行動論的アプローチを組み合わせた介入パッケージが、離席行動の改善に有効であるか否かを検証することを目的とした。シングルケースデザインを用いて着席時間の増加場面を観察することにより、介入効果を検証した。その結果、対象児童の着席行動の持続時間は、ベースライン期よりも明らかに増加した。また、エピソードの検討からも介入効果がうかがわれた。このことから、本研究で用いた介入は、行動目標を達成する上で有効な手立てであったと考えられた。本研究の介入パッケージが効果的であった理由として、(1)強化法が対象児童の実態に合わせて適切に行われたこと、(2)対象児童のために準備した手がかりツールが的確であったこと、が挙げられた。また、社会的妥当性の評定結果から、保護者は本教育実践を肯定的に評価していることが示された。
  • 今本 繁, 門司 京子
    2016 年 54 巻 2 号 p. 111-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では、行動問題を示す6歳の自閉症スペクトラム児に対して、適切に待つための視覚的な条件性弁別刺激(“待ってカード”)の確立が、地域の飲食店での行動問題の軽減にもたらす効果を調べることを目的として指導を行った。視覚的な条件性弁別刺激を確立するために、家庭と療育機関の飲食場面において、対象児が欲しいものを要求してから提供するまでの間“待ってカード”を提示し、待ち時間の終了とともに“待ってカード”と要求対象の交換を繰り返し行いながら、徐々に待ち時間を延ばした。その結果、指導場面で“待ってカード”を使い、要求対象を最大80秒待てるようになった。外食場面での待つべき状況でも“待ってカード”を用いて適切に待てるようになり、行動問題も軽減した。また、スキルの獲得により、外食時の母親のストレスにも軽減がみられた。最後に、年少児への視覚的な条件性弁別刺激の適用やその応用の可能性、および効果について考察を行った。
  • 佐々木 一圭, 関戸 英紀
    2016 年 54 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー
    学習上や生徒指導上の問題で苦慮している生徒などが多数在籍する、高等学校定時制課程の数学の授業において、協同学習に相互依存型集団随伴性を組み合わせた介入を実施した。そして、当該生徒の授業参加行動の改善、授業中の問題行動の低減、および学級全体の学業達成の向上を目指した指導を行い、指導方法の妥当性について検討した。その結果、当該生徒に授業参加率の増加・問題行動の生起率の低減がみられ、学級全体の学業達成度にも影響を及ぼしたことが明らかになった。また、授業担当教員ならびに全生徒を対象とした介入受容性においても肯定的な評価を得ることができた。本研究の結果から、相互依存型集団随伴性が学業達成度に影響を及ぼした可能性が示された。また、協同学習が授業参加率の増加ならびに問題行動の生起率の低減に有効であり、しかも相互依存型集団随伴性と組み合わされることによってさらにその効果が増大することが示唆された。
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