知的障害特別支援学級に在籍する児童4名を対象に、部首をもとに漢字を2分割する系列刺激ペアリング手続き(以下、SSP手続き通常条件)と、児童の既知情報をもとに漢字を分割する系列刺激ペアリング手続き(以下、SSP手続き既知条件)を実施した。本研究では、2つの手続きの結果を比較し、系列刺激ペアリング手続きに関して既知情報を活用することが、知的障害のある児童の漢字書字の獲得に促進的な効果を及ぼすか否かについて検証した。研究デザインは、課題間多層プローブデザインを用いた。指導の結果、児童が漢字書字を獲得するまでに要したブロック数は、SSP手続き既知条件のほうがSSP手続き通常条件と比べて少なかった。これはすべての対象児に共通していた。このことから、系列刺激ペアリング手続きに関して既知情報を活用することが知的障害のある児童の漢字書字の獲得に促進的な効果を及ぼすことが示唆された。
本研究は、自立活動の指導力を高める授業研究のあり方を考究するために、特別支援学校(肢体不自由)の自立活動における身体の動きに係る個別指導に対する教師の意思決定に関わる構造と、教師の属性(特別支援教育教職経験年数、身体の動きの指導に活用する理論・技法の習熟度)との関連を明らかにすることを目的とした。自立活動を主とする教育課程担当教師780人を対象に、質問紙調査を行った。因子分析の結果、授業の計画段階3因子、授業の実施段階4因子が抽出された。抽出された因子と教師の属性との関連について、二要因分散分析を用いて検討した。理論・技法の習熟度は、授業の計画段階に比べ、授業の実施段階の因子に影響を及ぼすことが明らかになった。自立活動の個別指導場面において、児童生徒の様子を適宜把握しながら主体的な学びへと導く、指導者自らの意思決定を促進させるためには、理論や技法の習熟度を高めることの重要性が示唆された。
本研究では、行動面での困難を示す児童の保護者と担任教師を対象に、三項随伴性にもとづく行動記録を通した支援方法発見プログラムを実施した。プログラムでは、児童の実態に合う標的行動を決定し、家庭と学校での児童の行動を正確に記述することを促し、記録をもとに支援方法を検討するペアワークを行った。その結果、行動記録の正確さが向上し、保護者と教師が自身の適切な支援方法を確認したり、互いの支援方法を取り入れたりした。家庭と学校における標的行動の改善、保護者と教師の関係尺度に肯定的な変化がみられ、プログ ラムの一定の効果が示された。一方で、一部の参加者においては、行動記録の正確さが低下し、児童の行動改善への効果が小さく、保護者と教師の関係性にも変化がみられなかった。結果にもとづき、本プログラムが保護者と教師の児童への関わりおよび児童の行動変容に与える効果と、保護者と教師の肯定的な関係を促進する要因について考察した。
本稿では、少年院の矯正教育にとって大きな転換点となった平成26年の少年院法改正前後の少年院における矯正教育の実践と研究について概括した。まず、日本特殊教育学会関係部会との連携の観点から、発達障害等発達上の課題を有する在院者に対する教育について、次に、在院者の非行内容や問題性に焦点を当てた教育、特に新たに導入された特定生活指導などの実践と研究について、ポイントを絞って論じた。認知行動療法を活用したプログラムの導入など、在院者の特性および再犯防止のニーズに応じた指導実践が進められ、少年院の専門性が高まったが、教育効果の検証の充実化、指導者のスキルアップのための外部知見の活用などが今後の課題となっている。