特殊教育学研究
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51 巻, 4 号
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原著
  • 尾崎 康子, 小林 真, 水内 豊和, 阿部 美穂子
    2013 年 51 巻 4 号 p. 335-345
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    保育者が発達障害児や発達が気になる子どもを評価するスクリーニング尺度として、幼児用発達障害チェックリスト(CHEDY)を作成した。CHEDYは、広汎性発達障害(PDD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的障害を測定する3尺度で構成されている。PDDはADHDや知的障害との合併が認められることがあるが、CHEDYはこれら3つの障害を一度に調べることにより、子どもの様子を的確に把握し、保育指導に生かすために開発された。PDD群(682名)、ADHD群(48名)、知的障害群(267名)、定型発達群(897名)について調べたところ、これら3尺度には十分な内部一貫性が示され、また群間の有意な区別がなされたことから、信頼性と妥当性をもったスクリーニング尺度であることが示された。さらに、定型発達群との識別性を調べたところ、各障害の識別に有用であることが示された。
実践研究
  • 岡本 邦広, 井澤 信三
    2013 年 51 巻 4 号 p. 347-357
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では、音声言語による指示理解が困難な自閉症児に対して、写真カードを用いた御用学習を行った。I期では、物品の写真カード1枚を提示して、その物品を所定の位置に持って行く行動の形成を行った。次のステップでは、人・物品(II期)または場所・物品(III期)の2つの指示理解を促す目的で、写真カードを2枚用いた。これらの方法により、対象児が物品を異なる人や場所に持って行く行動の成立を目的とした。その結果、I期では少ない試行数で正反応を自発した。II期では、2枚の写真を同時に提示することにより、対象児の標的行動が自発された。III期では、人の写真を場所に変更しても正反応を自発した。結果は、井上・小川・藤田(1999)を支持するもので、対象児の行動は人・物品などの写真に制御された。今後の課題として、視覚的プロンプトの除去後も維持する方法や、家庭場面における般化の方略を検討する必要性が挙げられた。
  • 小島 拓也, 関戸 英紀
    2013 年 51 巻 4 号 p. 359-368
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では、選択性緘黙の小学校2年生の女児に対し、コミュニケーションカードを用いてあいさつやお礼の自発的表出を目指した指導を、学校生活の日常場面において行った。その結果、対象児は担任や学生ボランティアに対してあいさつ等を自発的に表出するようになり、他の日常生活場面でも級友や他の教師に対してあいさつ等を自発的に表出する場面がみられるようになった。また、身振りや筆談、発話もみられるようになり、コミュニケーションモードの変換がなされた。さらに、他の教師や保護者からも本指導に対する肯定的な評価を得ることができた。以上のことから、選択性緘黙児に対して、学校生活の日常場面において、非音声言語を用いてコミュニケーションの指導を行うことは、発話の前段階の指導として有効であることが示唆された。
研究時評
  • 姉崎 弘
    2013 年 51 巻 4 号 p. 369-379
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    近年、わが国の肢体不自由特別支援学校に在籍する重度・重複障害児の教育を中心に、スヌーズレン(Snoezelen)を自立活動の授業に取り入れる学校が増えている。しかし、わが国ではスヌーズレンは教育法ではない、との見方もあることから、本稿では、まずスヌーズレンに関する国内外の学術書・研究論文を対象としてスヌーズレンの概念に関する研究動向を分析し、スヌーズレンには「レジャー」のほかに「教育」や「セラピー」としての側面があることを明らかにした。したがって、スヌーズレンは教育活動であるといえる。次に、スヌーズレン教育を定義し、感覚教育法等における位置づけや重度・重複障害児教育の現場への導入の意義を考察し、今後の展望について論じた。特に、スヌーズレンによる授業は、重度・重複障害児の発達を支援する新しい教育方法として注目されるばかりか、発達障害児や不登校児などにも有効であることが示唆された。
  • ―通常の学級における研究・実践を中心に―
    涌井 恵
    2013 年 51 巻 4 号 p. 381-390
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、おもにLD児を対象に含む通常の学級における協同学習の研究動向について概観し、今後の研究の課題について探った。協同学習は単なるグループ学習ではない。協同学習の5つの基本要素を満たすことで、学力のみならず、社会性、仲間の受容、多様性の理解、高次の思考スキルの促進など、さまざまな効果を及ぼすことができる。学習障害(LD)等の障害のある子どもにも活用される協同学習の代表的な教授モデルについて整理した。また先行研究において協同学習にはどのような効果が示され、今後LD児等を対象にした研究が進展していくためには、どのような課題があるのかを論考した。
  • 滝川 国芳
    2013 年 51 巻 4 号 p. 391-399
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    昨今、わが国では病気の子どもの長期入院が激減し、入院期間の短期化と入院の頻回化傾向が顕著になっている。このことは、病弱・身体虚弱教育のあり方にも大きな影響を及ぼし、教育活動における通信情報技術(Information and Communication Technology)活用、そして医療や教育における関係者の情報共有が不可欠となっている。本稿では、日本の病弱・身体虚弱教育における教育情報の共有と活用について、ICT活用の視点から、関連する国の施策、1976年の養護学校義務制以降の研究、実践研究を概観した。さらに、教師自らが情報発信し、指導法・教材等の教育情報を一元化して蓄積し、共有するための病弱教育支援冊子の有効性について指摘した。今後は、入院児童生徒の前籍校との日常的な連携、病気を理由に長期欠席している児童生徒への教育支援など、ICTを活用した病弱・身体虚弱教育の充実に向けた研究が期待される。
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