特殊教育学研究
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61 巻, 1 号
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資料
  • 加藤 美朗, 大橋 優, 嶋﨑 まゆみ
    原稿種別: 資料
    2023 年 61 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、特別支援学校218校の教員486名を対象に質問紙調査を行い、知的障害との関連性の高い遺伝性疾患6症候群の行動表現型に関する教員の知識や、各症候群が抱えている困難に関する理解、教員が必要とする情報について明らかにすることである。調査の結果、有効回答は269件(回答率55.3%)で、行動表現型の知識について、たとえばアンジェルマン症候群では質問項目すべてで「知っている」という回答の割合が8 割以上であったが、22q11.2欠失症候群では「知らない」という回答が約5割以上であった。次に各症候群が抱える困難について、たとえば行動面についてスミス・マゲニス症候群では「とてもある」という回答が9割以上であったが、ウィリアムズ症候群では4割弱であった。加えて、教員は指導方法や発達予後などについて知りたいと回答していた。本研究の結果、教員の各症候群の行動表現型に関する知識や必要とする情報が明らかとなった。

実践研究
  • 内田 佳那, 丹治 敬之
    原稿種別: 実践研究
    2023 年 61 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は、漢字の読み書きに困難のある小学6年生の発達性読み書き障害児1名を対象に、 遠隔形式による漢字の読みと意味、漢字形態の想起を促す書字指導プログラムの効果を検討することを目的とした。また、学習の定着を目指した家庭学習を実施し、学習効果の長期維持を検討した。その結果、漢字書字の正答数の向上と、おおむね介入から2か月後までの学習効果の維持が認められた。社会的妥当性では、学習方法の適合度、母親の負担度、参加児の学習意欲の変化に対し、肯定的な評価が得られた。本研究の成果から、漢字の読字と書字の困難、語彙の低成績を示す子どもには、漢字の書字指導に加え、漢字の読みと意味の指導の有効性が指摘できた。さらに、学習の定着には、不十分な学習内容の反映、子どもが意欲的に学習に取り組める方法での家庭学習機会の設定が効果的であると考えられた。

  • 吉岡 学
    原稿種別: 実践研究
    2023 年 61 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、学習活動などを一切行わず唾遊びを行う知的障害を伴う自閉スペクトラム症児に対して積極的行動支援に基づく実践を行い、唾遊びの低減と「朝の会」「終わりの会」参加行動の形成を試みた。その結果から支援方法の妥当性について検討することを本研究の目的とした。機能的アセスメントから、唾遊びは担任との関係構築時の誤学習によって生じた注目要求行動であることが明らかになった。そこで、代替コミュニケーションツールを用いることでA児の担任に対する要求言語行動は高まり、唾遊びが軽減し、学習活動に参加するのではないかという仮説を立て、支援を行った。その結果、代替コミュニケーションツールである50音ボードを用いた段階的な要求言語行動の促進を行うことにより、唾遊びの低減と「朝の会」「終わりの会」の参加行動の形成が可能となった。これらの結果は、使用された支援方法が適切であった可能性を示唆している。

研究時評
  • 福田 奏子
    原稿種別: 研究時評
    2023 年 61 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、盲児の触運動感覚についての国内外の研究に焦点を当て、はじめに、知覚における触覚と視覚の違いおよび触探索の方法の観点から、触運動感覚による知覚・認知の特性について概観し、今後求められる研究について検討した。次に、触運動感覚に依拠した遊びの中での玩具の工夫や触察の指導方法に関する研究を概観し、盲児の発達と学習を促すために今後必要な指導法について考察した。最後に、盲児の発達評価について、既存の検査を一部実施した研究や、既存の検査を触運動感覚によって実施できるよう改変した研究、および触運動感覚に依拠した知覚認知能力の評価のために独自に検査を開発した研究を概観し、今後、盲児の発達評価法を開発するために必要な研究について検討した。今後の研究の課題として、触運動感覚に適した教材・教具および概念学習の指導法の開発と、盲児の動作性アセスメントバッテリーの開発、国内における触運動感覚による知覚認知能力の検査の必要性の検討を挙げた。

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