特殊教育学研究
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44 巻, 5 号
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  • 太田 真紀
    原稿種別: 本文
    2007 年 44 巻 5 号 p. 267-282
    発行日: 2007/01/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、縦断的調査によって吃音児の自尊感情に関連する要因を明らかにすることである。ことばの教室で指導を受ける吃音児6名に対し、小学校3、4年から小学校5、6年までの約2年間、調査を行った。その間、対象児には4因子からなる自尊感情尺度調査が3度実施された。親とことばの教室の教師には、対象児の経験などを情報収集するため、質問紙もしくは聞き取り調査が実施された。自尊感情の因子得点の変化と経験との関係を分析し、以下3点を明らかにした。(1)自信の上昇は、秀でた能力が他者から認められる経験や、その子どもにとって自信がもてるような特別な経験と関与していた。(2)自己受容の変化は、学級や家庭での人間関係と関与していた。(3)達成動機因子得点の上昇は、安心できる安定的な人間関係や環境と関与していた。
  • 長南 浩人, 齋藤 佐和
    原稿種別: 本文
    2007 年 44 巻 5 号 p. 283-290
    発行日: 2007/01/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、人工内耳を装用した聴覚障害児38名を対象として音節分解(実験1)と音節抽出(実験2)課題を行うことにより、人工内耳装用児の音韻意識の発達的変化を明らかにすることを目的とした。実験1の結果、人工内耳装用児のほとんどの者が直音節の分解を正しくすること、実験2の結果、人工内耳装用児は音節分解の正反応率が音節抽出よりも高いことがわかった。これらの結果は健聴児の反応に近いもので、人工内耳装用児の音韻意識の発達は、全体的には健聴児に類似した発達をしており、人工内耳装用児の音韻表象は音のイメージによって形成されていると考えられた。
  • 小島 未生, 田中 真理
    原稿種別: 本文
    2007 年 44 巻 5 号 p. 291-299
    発行日: 2007/01/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    障害児の父親の育児行為に対する母親の認識と育児感情の関連について検討するため、小・中学生の障害児をもつ母親98名に対し、質問紙調査を行った。因子分析の結果、母親が認識している父親の育児行為からは「精神的育児関与」「家庭内での活動」「家庭外での活動」の3因子が、母親の育児感情からは「不安・負担感」「前向きな捉え方」「孤独感」「母親としての自己評価」の4因子が抽出された。育児行為と育児感情それぞれの因子の相関を求めたところ、「精神的育児関与」と「前向きな捉え方」に有意な相関がみられ、父親が母親とよく話し、子どもの特性を理解していると母親が認識しているかどうかが、母親が前向きに育児に取り組むことと関連していることが示された。父親の育児行為の中でも、特に母親を精神的に支える行為を促すような働きかけとともに、母親に対する教育や福祉サービスによる精神面でのサポートの充実が求められる。
  • 中村 保和, 川住 隆一
    原稿種別: 本文
    2007 年 44 巻 5 号 p. 301-313
    発行日: 2007/01/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    盲ろう児の余暇を検討する際の基礎資料を得ることを目的として、盲ろう児の家族会に所属する1〜18歳の盲ろう児の保護者45名に質問紙調査を実施し、30通の有効回答を得た。この有効回答の中から7〜18歳の22名の結果をもとに分析を行った。その結果、(1)子どものコミュニケーション方法、および視覚と聴覚の障害にあわせもつ運動障害の有無によって、子どもが余暇に行っている活動に大きな違いがみられること、(2)子どもが余暇を一緒に過ごす相手として最も多かったのは親であり、次に多かったのはボランティアであったこと、(3)ボランティアを利用している子どもにおいては、ボランティアが子どもの外出の機会を支える役割のひとつを担っていること、(4)保護者から寄せられた要望は6つのカテゴリーに分類され、その中では、ボランティアなどの子どもの余暇を支援する人材に関する要望が最も多かったこと、(5)保護者のボランティアに対する要望には、感覚重複障害への配慮や子どものコミュニケーション方法の理解とその使用など盲ろう障害への理解と実際的なかかわり合いの技量に関するニーズが含まれていること、が明らかにされた。
  • 興津 富成, 関戸 英紀
    原稿種別: 本文
    2007 年 44 巻 5 号 p. 315-325
    発行日: 2007/01/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、授業参加に困難を示す、広汎性発達障害が疑われる小学校3年の男児に、トークンエコノミーシステムとクラスワイド社会的スキルトレーニングを適用した介入パッケージを用いて、担任が通常学級内で支援を行った。その際に、担任の実行条件を考慮した。9か月間の支援の結果、授業中の対象児の行動問題は減少した。しかし、グループ学習や行事のように見通しをもちづらい場面では、行動問題が観察された。また、アンケート結果から、担任の負担は大きくなかったという評価が得られた。以上のことから、適切な行動を学習させることによって行動問題が減少したこと、担任の実行条件の中に打ち合わせの時間の確保も入れる必要性があったこと、効果が実証されている支援方法を、学校教育現場で適用できるように再構成し、週1回の巡回指導と保護者との連携の中で実施していけば、十分効果が得られることなどが示唆された。
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