特殊教育学研究
Online ISSN : 2186-5132
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60 巻, 1 号
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資料
  • 西木 貴美子, 岡崎 慎治
    原稿種別: 資料
    2022 年 60 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、少年院在院者の表情認知特性を検討することを目的とし、先行研究を参考に表情認知課題を作成、実施した。提示された表情の判断について、写真の性別ごとに、非行歴や発達障害などの診断のない大学生群と比較検討を行った。その結果、少年院群では大学生群よりも相対的に正答率が低く、特に悲しみ、恐怖、嫌悪の表情認知に困難があることが示された。加えて誤選択率の分析から、少年院群は悲しみと嫌悪の表情を双方向に誤選択しやすいこと、嫌悪は怒りにも誤選択されやすいこと、恐怖は男性写真において悲しみに誤選択されやすいことが示された。対象者の選定に制約などもあり、得られた結果は限定的であるものの、本研究の結果は、他者の表情をより攻撃的な感情と判断しやすい傾向が少年院在院者の対人関係における問題の一要因となっている可能性を示唆すると考えられた。

  • 村瀬 忍
    原稿種別: 資料
    2022 年 60 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    学齢期の吃音児のグループ指導の現状と課題を明らかにする目的で、言語障害通級指導教室を対象に郵送による質問紙調査を実施した。対象は言語障害通級指導教室を設置している小学校155校であった。調査の結果、グループ指導の実施率は27.2%であることがわかった。 また、よく行われているグループ指導は吃音児数が2~3人の小グループ指導で、それらは吃音児が仲間に会って安心することをねらいとしていることがわかった。グループ指導を実施していない教師にグループ指導を実施しない理由を尋ねたところ、吃音児が集められないことが最大の理由であることがわかった。Liddle et al.(2011)の英国の調査結果と比較しながら、言語障害通級指導教室におけるグループ指導の課題と方向性とを考察した。

実践研究
  • 荻野 昌秀
    原稿種別: 実践研究
    2022 年 60 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    昨今、発達支援ニーズのある児の早期発見、早期支援が求められている。本研究では保育所における4歳児の早期支援の仕組みについて検討した。介入群714名、統制群159名を設定し、介入群に対して心理士および作業療法士による行動観察、保育士との支援方法の協議、学識経験者を含めた会議などを実施して支援方法を決定し、介入前後で両群に質問紙調査を実施して支援の効果を検討した。その結果、介入により全体として理解面や言語面の向上、多動・衝動の改善が示された。また、理解面や言語面の弱さがある児など、タイプ別にみると、それぞれにおいて介入により弱い因子の改善がみられた。また、個別に検討を行わなかった児にも介入の効果がみられ、クラスワイドアプローチの効果も示された。支援内容や対応を保護者に説明することで、一部の児は地域の療育センターへの相談につながったが、今後の継続的な評価、支援とともに、保護者の理解度や変化、介入の厳密性の検討が望まれる。

  • 樋熊 一夫, 大庭 重治
    原稿種別: 実践研究
    2022 年 60 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    漢字の書字学習に特異的な困難を示す1人の中学生を対象として、ICTを活用した自己学習支援システムを約2年間にわたって試行した。本研究は、このシステムの効果を検証するとともに、同様のシステムを活用して漢字書字の支援を行う際の留意点を整理することを目的とした。本システムの運用により、対象者は新たな文字440文字を含む244問の漢字問題の作成に支援者との協同活動を通して自らも関与し、893回にわたり自宅において自主的に解答活動を行うことができた。これらの結果に基づき、本研究で試行したシステムに含まれる一連の支援手続きについて、その有効性を確認した。また、同様のシステムの運用における留意点として、学習者の認知特性や自尊感情への配慮、ICTを活用した教材を作成する際の学習者自身の参画、学習を常に支援できる体制の整備、日常生活の中で支援効果を検証するための評価方法の導入の4点を指摘した。

  • 松﨑 吉洋, 岡村 章司
    原稿種別: 実践研究
    2022 年 60 巻 1 号 p. 45-57
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、幼稚園において、教員の既存の支援に着目した園規模の介入を行った。介入当初、教員は学級全体への効果が認められた支援を行っており、行動問題への支援に関する教員のニーズはなかった。支援会議において、教員は園の支援方針に基づき園児の実態を振り返ることで、離席と姿勢の崩れや私語といった課題を教員間で確認することができた。聞く行動を支援目標として決定し、聞く行動に対する既存の効果が認められた支援を共有した。外部支援者は、それらの支援の実行に対して称賛した。その結果、介入期では支援会議で共有した支援が多くの学級でみられ、すべての学級で離席と姿勢の崩れが減少傾向を示した。園規模の介入を行うにあたり、園の支援方針を踏まえて課題や支援内容を共有する場を設定し、既存の効果が認められた支援の実施を促すことは、教員の負担感を減らし、支援の実行性を高める効果があると考えられた。

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