立位姿勢を身体平衡の維持・調節の結果であるとする観点から,床反力計を用いた足圧中心動揺(以下,CFP)の測定が多く実施されてきた。しかし,CFPにより算出された結果は,からだ全体を一つの物体と仮定して算出した数値であり,実際には,身体の各部位は関節によって連結されているため,動揺はそれぞれの身体部位で異なることが知られている。それゆえ,我々はレーザー光とコーナーミラーを使って,身体各部の動揺(以下,SMB)を測定するシステムを考案し,応用した。
過去に剣道経験者の姿勢の特徴を,SMBとCFPの両面から調べた報告は見あたらない。そこで本研究は,剣道経験者を対象に,SMBの測定と,CFPの測定を同時に実施し,剣道経験者の立位姿勢の特徴を明らかにしようと試みた。
被験者は大学に在籍する合計30名の男子であり,15名の剣道経験者と,15名の継続的な運動を実施していない男子(対照群)であった。
その結果,SMBの測定により,剣道経験者は頭部,肩,膝の動揺面積平均値が,対照群に比べ有意に小さい結果を示していた。CFPの測定により,剣道経験者は動揺面積平均値が対照群に比べ有意に小さい結果を示していた。剣道経験者は,SBMとCFPによって測定された動揺が両方とも小さく,全身の動揺が小さい立位姿勢の特徴を示していた。
長期にわたる剣道のトレーニングにより,剣道経験者の立位姿勢が,体性感覚入力により依存した調節機構に変容したことが推論された。
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