医療情報学
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
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原著-研究論文
  • 柗浦 一, 小川 俊夫, 伊藤 雪絵, 御輿 久美子, 赤羽 学, 今村 知明
    2010 年 30 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     平成18年度の診療報酬改定で,急性期入院医療の実態に即した新たな看護師配置基準,いわゆる7対1看護が導入された.本研究は,自治体病院をケースとしてこの7対1看護導入に伴う収益と費用を試算することで,7対1看護導入前後の病院の収支の推計を実施した.さらに,7対1看護導入に伴う看護師の人員配置の増加による病院経営に与える影響についても考察を行った.
     本研究により,自治体病院では,7対1看護の導入によって収益を圧迫する可能性が高いことが示唆された.7対1看護に必要な人員を新人看護師で補充した場合でも初年度の収支はプラスとなるが,2年目以降は人件費が収益を上回ることが示唆された.
     自治体病院の多くが,地域基幹病院としての側面と高度先進医療を提供する病院としての側面を有することから,7対1看護の導入にあたっては,病院機能を再評価し,病院機能に即した適切な経営とより高い収益が求められよう.
  • 香川 正幸, 吉田 悠鳥, 鈴木 哲, 栗田 明, 松井 岳巳
    2010 年 30 巻 2 号 p. 85-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     電波防護指針に準拠した小電力24 GHzマイクロ波レーダーを使用して,高齢者を対象とした非接触の呼吸・心拍見守りシステムを開発した.寝具用マットレスの下部にレーダー装置を設置し,呼吸・心拍に伴う体表面の微振動を計測するシステムであり,精度を向上するため2つのレーダー出力信号を組み合わせる特徴をもつ.最大の課題は,目的とする微弱な呼吸・心拍信号を四肢などの不規則な体動信号から分離抽出することであった.呼吸信号最大値および心拍信号最大値を事前に設定し,その最大値より大きい信号を体動ノイズと判定し振幅減少するAutomatic Gain Control方式をFFT周波数解析の前処理として導入した.また,レーダー信号の出力電力強度から体動の継続を判定し,体動が継続していない時間帯の呼吸・心拍数をより信頼性の高い情報として区別することにより,全体として体動に強い高精度計測が可能となった.本システムを実際に特別養護老人ホームで評価し,非接触見守りシステムの有用性を確認した.高齢者の介護では,在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められており,本システムは高齢者安否確認システムの新しい方法として期待される.
原著-技術論文
  • 高羽 実, 古橋 武
    2010 年 30 巻 2 号 p. 95-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     一般に統計表は,利用者のニーズを広く満たすために,個々の利用者が必要とする以上の分類項目で分類されている.そのフォーマットは,複数の分類項目でクロス集計された形である.分類項目は表の縦軸と横軸に分けられているが,その分け方は統一されていない.さらには階層構造になった分類項目が存在する.このため,公刊された膨大な統計表から必要とする分類項目だけで分類した統計量を得ることは容易ではない.本論文では,分類方法が非統一で階層構造の分類項目を持つ統計表を記述する新しい記法を提案する.本手法は,Wangの記法を採用し,統計表の属性から統計量までのパスをXMLで記述する.本記法の有効性を検証するために,モデル化した統計表および日本の厚生労働省が公開している医療統計表を使った抽出実験により,データの抽出が容易に行えることを示す.また,統計表のフォーマットを自動で提案記法に変換し,変換した統計データから対話形式で抽出を行うシステムを開発する.
  • 水谷 晃三, 五味 悠一郎, 澤 智博
    2010 年 30 巻 2 号 p. 109-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     筆者らは病院情報システムの構築において,サーバ機能を提供する30台のコンピュータの実行基盤としてプラットフォーム仮想化技術を導入した.プラットフォーム仮想化は,1つの物理的なコンピュータ上で複数のコンピュータを仮想的に提供する技術である.多くのコンピュータを効率的に集約することができるため,情報システムの初期コストの低減や運用コストの改善などが期待できる.本論文では,仮想化技術の採用における比較・検討結果を報告し,病院情報システムにおける仮想化技術の利点と問題点を考察する.
  • 田中 雅幸, 鶴見 由美子, 打谷 和記, 池嶋 孝広, 村中 達也, 大植 謙一, 廣田 育彦, 仲野 俊成, 今村 洋二
    2010 年 30 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     われわれは処方チェックシステムの精度向上とともに,医薬品マスタメンテナンス作業の省力化が可能なオーダリングシステムの構築に取り組み,ほぼ目標に到達しえたと判断したことから,今回その稼働状況の評価を行った.
     電子カルテと薬剤サブシステム間の医薬品マスタの一元管理により,マスタの整合性保持が実現した.また独自の処方チェック用データベースを作成し,処方チェックを電子カルテ側とサブシステム側の二段階に振り分けた.さらに処方監査に必要な検査値や薬歴などを処方せんに出力させる機能を搭載した.その結果,レスポンス低下を招くことなく,監査支援を強化することができた.
     電子カルテは安全管理に有用なツールであるが,安易なシステム導入は医療事故を誘発しかねない.医療従事者がシステムを理解した上で完成度の高いシステム構築に参画する必要がある.われわれは今後もシステム改善に取り組み,医療安全に貢献していきたい.
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