1. 研究目的
健康寿命を損なう疾患概念として提唱されたロコモティブシンドロームに対する「医療・介護が連携した総合的な対策」の重要性が説かれているものの,その評価法は十分に普及しておらず,認知度/取組についても,地域差があり十分な対策がとられているとは言い難い.
身体のみならず精神・社会的な側面を包含する広範な概念であるフレイルに対し,ロコモは運動器(身体)の脆弱化が,「ロコモ関連疾患」や,「加齢による運動器機能不全」により引き起こされた病態で,「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては,既に豊富なエビデンスが構築されており,これらを対策に利用することができる.しかしながら「運動機能不全」に関しては,代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ,欧米では1989年に提唱されながらも,アジアでの診断アルゴリズムが確立したのは2014年であるなど,本邦における研究の歴史は浅く,今後のエビデンスの蓄積が望まれる.申請者は,NEDOの世代人工知能技術分野において,医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉評価によりサルコペニアばかりでなく,筋力も判定可能なシステムを開発した実績を持つ.
本研究では介入法と評価法のセットで成果物を完成する予定であるが,評価においては短期間で成果が出て,様々な運動機能と関連する筋肉に着目しており,前述した超音波システムを利用する.完成した成果物が自治体において人的,経済的負担が少なくなるように留意するとともに,ロコモ度1, 2の判定はもちろん,それ未満の運動機能不全に関しても早期に判定できるよう人工知能技術も応用する.
成果物の実証フィールドには,既に自治体でロコモ対策を実施している分担者のフィールドを利用して,「医療・行政が連携した総合的な対策」モデルを構築することを目標とする.
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