医療情報学
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42 巻, 4 号
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特集 厚生労働科学研究成果報告書 第5回
  • 荒井 秀典, 島田 裕之, 原 辰徳
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 146-147
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     少子高齢化の一層の進展に伴って,介護需要が増大するとともに,労働力制約は強まっている.そうした状況の中,持続可能な介護サービス供給のために,効果的な介護予防サービスを行い,健康寿命を延伸することが急務となっている.本研究では,各省庁および産学が連携し,国・自治体や介護予防サービスに関わる民間企業等が共通で利用できるビッグデータ基盤や,現在は専門職が行っている介護予防事業計画を支援できるAI等のインフラを開発(協調領域)し,さらに,協調領域を活用した民間主体による競争的な取組(競争領域)を活性化する.これらにより,エビデンスに基づく介護予防の取組を全国展開して,健康寿命の延伸に資することを目指した.既に,収集したデータを蓄積するデータ連携基盤を構築しており,令和2年度にリリースした「オンライン通いの場」アプリを活用し,アプリでデータを収集,そのデータを用いて要介護リスク予測AIを開発した.民間企業との連携により,アプリの機能充実と一層の普及に努め,より多くのデータを収集した.アプリから得られたデータをもとに,本事業からはアウトカム情報として国保データベース(KDB)に含まれる要介護認定データを活用して,令和2年度に開発した要介護リスク予測AI(以下,「介護予防AI」とする)を改修し,予測精度の向上を目指すことを目的とした.

  • 大道 久
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 148-149
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月策定)は,インフォームド・コンセントの理念や個人情報保護の考え方を踏まえ,医療従事者等の役割や責任の内容の明確化・具体化を図るものであり,医療従事者等が診療情報を積極的に提供することにより,医療従事者等と患者等とのより良い信頼関係を構築することを目的とし,「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」における議論を経て策定された.

     策定後,平成22年に一部改正を行った後は大きな見直しは行われていなかったが,令和3年3月開催の,規制改革会議 第9回 医療・介護WGにおいて「患者の医療情報アクセス円滑化」として取り上げられ,WGにおける議論をうけて,令和3年6月1日に規制改革会議より公表された「規制改革推進に関する答申~デジタル社会に向けた規制改革の「実現」~」において,「患者が診療情報の開示を請求する際の手続について,医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で,本人確認の在り方等を整理するとともに,オンラインでの請求申立てが可能であることを明確化し,「診療情報の提供等に関する指針」において記載すること」や「診療情報の開示について,医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で,開示に一定期間を要する場合には請求者に一定の応答を行うのが望ましいことを指針において記載するなど,開示を迅速化するための方策」を検討することについて,「令和3年検討開始,結論を得次第速やかに措置」するとされたところである.

     これを受け,今後,医療機関における診療情報の開示請求処理の実態の調査を行った上で,医療機関における開示請求の方法や本人確認の方法等について,厚生労働省において整理を進めることとしている.

     このため,本研究においては,当該整理の基礎資料として,診療情報の開示のオンライン化への対応状況や対応可能性,診療情報の開示にかかる平均的な日数等について,あらゆる規模の医療機関の実態を把握し,医療機関の規模や診療科を問わず,一律に適用される指針の改定に当たっての課題を提案することを目的とした.

  • 小川 朝生, 平井 啓, 谷向 仁, 高橋 晶, 中西 三春, 井上 真一郎, 上村 恵一, 深堀 浩樹, 榎戸 正則, 竹下 修由
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 150-151
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究の目的は,全国の認知症ケアチーム・緩和ケアチームによる認知症高齢者への評価・対応を学習モデルとした人工知能を開発し,有効性の検証された教育プログラムと安全な運用プログラムとあわせて検証・実装することにより,病院を中心とする看護・介護の現場での認知機能の低下やせん妄の予防・早期発見,行動心理症状への適切な対応方法を確立する点にある.

     認知症高齢者の多くは,身体的問題を持ちつつ過ごしている.そのため,認知機能の低下や行動心理症状の評価・対応を行う上で,身体疾患やせん妄,痛み等の身体的苦痛,薬剤を含めた評価が必要である.しかし,包括的な評価と判断は臨床経験に基づく個別判断が中心で,手法が確立していない現状がある.後期高齢者の増加を迎え,認知症高齢者の行動的な変化と共に,身体的な治療や身体症状の変化をとらえ,精神症状や薬物とあわせて評価判断する専門的知識と臨床経験の普及が緊急の課題である.

  • 岡 敬之, 松平 浩, 吉村 典子, 橋爪 洋
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 152-153
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     健康寿命を損なう疾患概念として提唱されたロコモティブシンドロームに対する「医療・介護が連携した総合的な対策」の重要性が説かれているものの,その評価法は十分に普及しておらず,認知度/取組についても,地域差があり十分な対策がとられているとは言い難い.

     身体のみならず精神・社会的な側面を包含する広範な概念であるフレイルに対し,ロコモは運動器(身体)の脆弱化が,「ロコモ関連疾患」や,「加齢による運動器機能不全」により引き起こされた病態で,「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては,既に豊富なエビデンスが構築されており,これらを対策に利用することができる.しかしながら「運動機能不全」に関しては,代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ,欧米では1989年に提唱されながらも,アジアでの診断アルゴリズムが確立したのは2014年であるなど,本邦における研究の歴史は浅く,今後のエビデンスの蓄積が望まれる.申請者は,NEDOの世代人工知能技術分野において,医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉評価によりサルコペニアばかりでなく,筋力も判定可能なシステムを開発した実績を持つ.

     本研究では介入法と評価法のセットで成果物を完成する予定であるが,評価においては短期間で成果が出て,様々な運動機能と関連する筋肉に着目しており,前述した超音波システムを利用する.完成した成果物が自治体において人的,経済的負担が少なくなるように留意するとともに,ロコモ度1, 2の判定はもちろん,それ未満の運動機能不全に関しても早期に判定できるよう人工知能技術も応用する.

     成果物の実証フィールドには,既に自治体でロコモ対策を実施している分担者のフィールドを利用して,「医療・行政が連携した総合的な対策」モデルを構築することを目標とする.

  • 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 國澤 純, 水口 賢司, 竹山 春子, 小川 順
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 154-155
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究グループでは,腸内細菌叢を中心とするマイクロバイオームに関するデータベース構築を進めている.そこには腸内細菌データだけではなく,GWASなどのゲノム情報や生活習慣,健康診断情報,生理・体力指標,免疫因子や代謝物など豊富なメタデータが登録されている.さらに現在,共同研究として多くのグループに解析プロトコルを提供し,同一プロトコルで収集した様々な疾患患者のデータ統合を進めている.

     本研究では,これらの研究基盤を活用し,サンプルの追加と腸内細菌の高機能なメタゲノムデータを加えたデータベースへの格納と拡張,さらにはデータ解析のためのプラットフォーム改変,糖尿病の予防や改善のための有用菌の機能・ゲノム解析,最先端メタボローム解析システムを用いた有用代謝物の同定,メカニズム解明,生産システムの開発などを進め,糖尿病の個別化予防やヘルスケア・機能性食品開発等のためのデータベースならびに人工知能(AI)の機能強化を図る.

  • 高木 俊介, 橋本 悟, 飯塚 悠祐, 長谷川 高志, 野村 岳志, 大下 慎一郎, 重光 秀信
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 156-157
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     ICUパネルデータを用いたAIモデルの構築による重症化予測を目的としている.多施設のICUの診療データを収集して重症度予測AIモデルを構築し,臨床現場に資するために下記3つの課題解決が最終目標である.

     ① 各施設・企業間でデータ構造・項目の相違の整理・解消

     ② ICU患者に対するAIを用いた重症化予測モデルの構築

     ③ ICU領域で有用と思われる機械学習アルゴリズムの整理

  • 中野 壮陛
    原稿種別: 特集
    2023 年 42 巻 4 号 p. 158-159
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     令和3年度の規制改革実施計画では,「AI画像診断機器等の性能評価において,仮名加工情報を利用することの可否について検討した上で,教師用データや性能評価用データとして求められる医療画像や患者データについて整理を行い,当該データを仮名加工情報に加工して用いる際の手法等について具体例を示すこと」とされていることから,本研究では,これまで明らかとなっていなかったAI医療機器の開発および性能評価におけるデータ利用の国内外の実態調査を行い,わが国におけるデータ利用にあたっての課題抽出と整理を令和3年度末までに行う.これらを通して,AI医療機器開発の加速化に資する医療データ活用指針のあり方を提供する.

原著-研究
  • 疋田 智子, 黒田 知宏, 杉山 治, 竹村 匡正
    原稿種別: 原著-研究
    2023 年 42 巻 4 号 p. 161-171
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     バイタルサインの測定における看護師の転記作業は,看護師にとって業務負担になっているだけでなく,転記間違いのリスクや,リアルタイムに多職種とのデータを確認できないなどの問題点がある.一方で,バイタル測定機器においても近接通信機能を持ったデバイスが普及しつつあり,京都大学医学部附属病院においては,これらのデバイスを用いて自動的にデータを収集できるバイタルデータターミナル(Vital Data Terminal:VDT)システムを構築した.これらのシステムは2016年の病院情報システムの更新時に一般病棟1,000床に導入し,看護師も個人認証タグを身につけることで「誰が」「誰に」「何時に」「何を」測定したのかが判別できるものであった.本研究では,本システムの導入によって実際に看護業務の負荷が軽減したのかを検証することを目的とし,実際にアンケート調査を行った.結果は,VDT入力率が2016年は23%台で推移していたものが,2021年3月には45%前後まで上昇した.また,VDTを使用する看護師684人にアンケートを実施した結果は「VDT導入は業務軽減につながったと思いますか」「とても思う」94名19.6%,「まあまあ思う」244名50.9%であり,70.3%のスタッフが業務軽減につながったと回答し,VDT導入による業務軽減が一定程度達成されたことが示唆された.

春季学術大会論文
  • 宋 翀, 中山 雅晴
    原稿種別: 春季学術大会論文
    2023 年 42 巻 4 号 p. 173-180
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     地域医療連携システムによりSS-MIX2ベースで膨大な患者情報が蓄積されてきた.今後,より高度な情報支援機能を備えるEHRシステムが求められ,次世代の標準規格HL7 FHIRの活用も期待される.HL7 FHIRを利用した患者サマリーの情報連携を目的に,海外ではInternational Patient Summary(IPS)の策定が進み,本邦では退院時サマリーHL7 FHIR記述仕様の標準化が進められている.標準化が進む中で,ユースケースに合わせてアプリケーションを開発し,機能やその実行可能性を検証する必要がある.本研究では,SS-MIX2から変換されたFHIRリソースを利用して,IPS実装ガイドと退院時サマリーHL7 FHIR記述仕様を参考にしたEHR画面のプロトタイプを作成し,患者サマリーの情報連携に向けたインタラクティブなWebアプリを開発できることを確認した.また,既存のSS-MIX2標準化ストレージデータから変換したFHIRリソースを利用する場合の課題を確認した.

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