本研究では,特別支援学校で実施されている「個別の指導計画」における実態調査を国際生活機能分類(ICF)の視点から見直し,現状と課題を明らかにすることを目的とした.対象は某特別支援学校(知的障害)在籍の児童生徒202名であった.分析では,個別の指導計画:実態表の記述内容をICFの構成要素(心身機能・身体構造,活動,参加,環境因子)およびその第1レベルに分類し,全学部および各学部の児童生徒に対する記入率を求めた.その結果,心身機能・身体構造に該当する実態の記入の少ないことが明らかにされた.活動に関する記入率は構成要素でほぼ100%であり,第1レベル項目でみると9項目中6項目が約70%以上の記入率を示した.また,それらは学部(小学部,中学部,高等部)の進級に伴って増加傾向がみられ,いずれの学部においても概ね60%以上の高い記入率を維持した.参加に該当する記入率は60%であったが,第1レベル9項目中2項目のみを対象としたものであった.環境因子ではその記入率が86%であり,第1レベル項目も5項目すべてに該当する記入が認められた.しかし,その記入率は3項目が約50%,2項目が約10%と項目間での差が大きかった.本研究結果は個別の指導計画においてICFの観点から児童生徒の実態を総合的に把握することが有用であることを示唆した.
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