医療情報学
Online ISSN : 2188-8469
Print ISSN : 0289-8055
ISSN-L : 0289-8055
40 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集 厚生労働科学研究成果報告書 第3回
  • 東 尚弘, 中村 健一, 寺本 典弘, 小林 秀章
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 10-11
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     平成30年に改訂された,第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)においては,「全国がん登録や院内がん登録によって得られるデータと他のデータとの連携により,より利活用しやすい情報が得られる可能性がある(後略)」とされており,「別に収集されているがんのデータ等との連携について,個人情報の保護に配慮しながら検討する」とされている.また,「がん研究10か年戦略の推進に関する報告書」(平成31年4月)においても,「がん登録データの効果的な利活用を図る観点から個人情報の保護に配慮しながら,がん登録とレセプト情報等,臓器や診療科別に収集されているがんのデータ等との連携について研究を進めるべきである」とされている.

     本研究はその方向性を実現するために,院内がん登録とDPCデータを軸として,ほかのデータとリンクをすることを試行し,その課題を同定しつつ解決策を検討し,システムを拡充することでより有用なデータベースの構築の基礎を作ることを目的としている.

     院内がん登録にDPCをリンクさせる試みは,本研究の研究者らが,すでに,都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会と連携し,がん診療連携拠点病院において院内がん登録とDPCデータをリンクして様々な標準診療実施率の算定・施設フィードバック等の研究を行ってきた.これは,現在,国立がん研究センターにおける研究・事業として進行しており,標準治療の実施率を集計して各施設に対してフィードバックが行われている.そのようなデータ突合と共有の経験を踏まえ,その知見をほかのデータ源に対して拡張することが本研究の企図である.

  • 荒牧 英治, 若宮 翔子, 河添 悦昌
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 12-13
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     これまで,医療医学用語をまとめる試みは多く,多くの医学大辞典が出版されてきた.しかし,これまでの多くの用語リソースは,トップダウン的なアプローチで専門家が定義したものであり,医療の臨床現場で実際に使用されている用語と乖離している場合もある.このため,カルテ入力をサポートするシステムを作る際に,実際に入力したい用語が収載されていないことも起こりえた.

     そこで本研究では,自然言語処理により用語を抽出する機構を開発する.その結果得られた用語を精査して辞書にし,これをベースに入力支援アプリケーションを開発する.具体的には,医療従事者が電子カルテに記録した診療記録(経過記録と退院サマリ)から症状や病名(以降,これらを合わせて「病名」と呼ぶ)に関連する用語を辞書を用いない自然言語処理手法を用いて抽出し,そのデータを精査して「万病辞書」として辞書化し公開する.本稿では,「万病辞書」のファイル構成や統計について報告する.

  • 大江 和彦, 河添 悦昌, 松尾 豊, 中山 浩太郎, 宇於崎 宏, 堂本(新谷) 裕加子, 柏原 直樹, 清水 章, 長田 道夫, 南学 ...
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 14-15
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究は,腎生検組織のデジタル病理画像を収集し,これらのデータベースを構築するとともに,深層学習の手法であるCNNによる画像識別を活用した腎病理診断手法を開発する.またこのプロセスから得られる知見を腎糸球体病理画像診断プロセスの標準化に役立て,腎病理診断の効率化と診断補助に資することを目指す.

  • 奥村 貴史, 安藤 雄一, 福田 敬, 中村 素典, 神谷 達夫, 岡本 悦司, 木村 眞司, 亀田 義人, 藤原 幸一
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 16-17
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     人工知能(AI)技術の医療への応用が期待されている.しかし,米中が熾烈な研究開発競争を進めるなか,わが国における医療用人工知能の研究開発は国際競争力を獲得しているとは言い難い状況にある.その背景として,そもそもの研究開発人材の欠如に加えて,研究プロジェクトを支える人材の欠如により大きな制約を受けている点が懸念される.

     そこで,本研究班は,医療用人工知能の研究開発を支える人材育成を通じて研究分野の発展に寄与することを目的とした.

  • 賀藤 均, 横谷 進, 井田 博幸, 武井 修治, 長 和俊, 七野 浩之, 平野 大志, 荒川 浩一, 肥沼 悟郎, 緒方 勤, 杉原 茂 ...
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 18-19
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     児童福祉法改正法(平成26年法律第47号)および「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成27年厚生労働省告示第431号)に示された小児慢性特定疾病対策を社会実現するため,その推進に寄与する資料およびその実践的基盤を提供することを目的とした.

  • 柏原 直樹, 岡田 美保子, 横山 仁, 南学 正臣, 山縣 邦弘, 和田 隆志, 中島 直樹, 杉山 斉, 丸山 彰一, 岡田 浩一, 神 ...
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 20-21
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     日本腎臓学会は日本医療情報学会と共同し,全国規模の包括的慢性腎臓病臨床効果情報データベース(J-CKD-DB)を構築した.CKDはeGFR 60 mL/分/1.73 m2未満,あるいはタンパク尿(+)で定義され,個々の腎疾患を包含する広範な概念である.全国に約1300万人の有病者が推計され,増加が危惧されている.CKDの実態(年齢ごと,重症度ごとの有病率等),診療実態,標準的治療法の準拠率等は不明であった.厚生労働省標準として電子カルテ(EHR)のデータを標準形式で格納するSS-MIX2標準化ストレージがある.J-CKD-DBはSS-MIX2からCKD該当例のデータ(患者基本情報,処方,臨床検査,等)を自動抽出してデータベース化するものである.

     一方,日本腎臓学会は腎臓病に関する規模の異なる複数のデータベースを構築してきた.(1) 腎生レジストリ(J-RBR),(2) 各種腎疾患DB(J-RBRから生成);難治性ネフローゼ症候群(JNSCS)等の疾患単位のDBである.(1),(2)はいずれもWebを用いた手作業での入力で,入力負荷が大きく,数10万人規模以上のDB構築が困難等の課題に直面していた.またJ-CKD-DBとの連結方法も未開発であった.上記課題を克服し,腎臓病に関する全国規模の包括的データベースを構築し,腎臓病の実態調査,予後規定因子の解析,腎臓病診療の質向上,健康寿命延伸に寄与することを目的とした.

  • 川瀬 弘一, 岩中 督, 波多野 賢二, 高橋 長裕, 荒井 康夫
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 22-23
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     ICHIがWHOによって承認されると,国際統計報告,診療報酬体系等を含め,幅広く影響を及ぼす可能性があり,ICHIへの対応は急務である.外保連手術コード(以下,STEM7)とICHIコードと診療報酬手術コード(以下,Kコード)のマッピング作業を行うことは,ICHIがWHOに承認後の国内の対応が円滑に進むことが期待される.本研究の目的は,ICHI開発に参画し,情報収集・分析,ICHI暫定版の検証,国内意見の集約,ICHIに対する国内体制整備などを行うことである.

  • 佐々木 毅, 高澤 豊, 宮路 天平, 野村 直之, 宮越 徹
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 24-25
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究は「病理デジタル画像データの深層学習・人工知能(以下, AI)による病理画像認識診断支援ツールの開発研究」である.日本の病理専門医は約2,400名,人口10万人当たり米国の3分の1以下である.さらに病理医勤務病院の約50%が1人病理医である.このような状況下で最終診断である病理診断のW-checkが行えない,または病理医不在のため患者が術中迅速病理診断を受けられないなどの問題が生じている.

     さらに希少がんでは診断の不一致などの問題が生じている.希少症例はがん研有明病院に症例数が多く,これらの症例を用いてAI活用による病理診断支援ツール開発を行う.なお,この分野でのAI支援ツールの成功事例はまだ少なく,また他施設が共通で使用できるプラットフォームの構築は世界的に見てもない.世界に先駆けてAPIによるAI病理診断支援システムのプラットフォーム構築を行うことが本研究の目的である.

     具体的には①「1人病理医のW-checkや術中迅速病理診断の支援となるAI病理診断支援ツールを開発」,②「希少がんなどの診断困難症例の支援となるAI病理診断支援ツールの開発」の研究開発を行った.

  • 澤 智博, 岡田 美保子, 木村 通男, 小出 大介, 嶋田 元, 美代 賢吾
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 26-27
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     医療等分野における番号制度の活用が議論される中,医療等のデータ,特に標準化されたデータのニーズはますます高まると考えられる.一方で,各医療機関等で扱われるデータの標準化は十分ではなく,研究開発などのデータ分析・利活用を図れる環境は整っていない.そこで,データの分析・利活用を見据えた上で,どのように医療情報の標準化を進めていくかを示した医療分野の標準化策定ロードマップを策定する.

  • 中田 はる佳, 平沢 晃, 田代 志門, 丸 祐一
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 28-29
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     がんゲノム医療の体制整備が急速に進められる中で,がんゲノム医療で扱われるゲノムデータ,遺伝情報の取扱いに関しては,関係者からの懸念がより少ない方法が求められる.日本におけるゲノムデータ,遺伝情報の取扱いに関する法的・社会的基盤を構築していく際には,国際動向を考慮に入れることが必須である.現在,ゲノム医療は国際的にも推進されており,あわせて,ゲノムデータを含めた医療情報の利活用が求められている.一方,医療情報の利活用に関しては,医療者,法律家を含むELSI(Ethical, legal, and social issues;倫理的・法的・社会的課題)専門家,市民・患者と多様な人々が関わるため,各関係者が持つ期待と懸念を共有して進めていかなければならない.本研究では,保険診療を含め今後ますます広く展開されるがんゲノム医療を支える法的・社会的基盤の検討に資する知見を提示することを目的とする.

  • 満武 巨裕, 石川 智基, 酒井 未知, 田中 滋, 福田 敬, 山岡 淳
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 30-31
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究は日本の保健医療指標の提出数の増加を目的として,未報告の保健医療指標を調査し,既存の公的統計やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用して推計を行う.OECD,WHO,国連等の国際機関は,医療および介護分野における政策立案に資する国際統計報告として様々な保健医療指標の迅速な提供を各国に求めている.各国から提供された国際統計報告は,例えばOECDのOECD.stat1)から一般公開されているが,日本が国際機関に提出している厚生労働統計分野の項目数は少なく,提出件数を増やすことが望ましい.

  • 宮本 恵宏, 竹村 匡正, 竹上 未紗, 興梠 貴英, 中山 雅晴, 的場 哲哉, 小室 一成, 斎藤 能彦, 安田 聡, 宍戸 稔聡, 西 ...
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 32-33
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     診療報酬請求情報を使用した分析,または電子カルテ情報を用いてビッグデータの分析においては,MACEなどのイベントをアウトカムにした研究をすることができない.本研究では,電子カルテの記事情報から自然言語処理を活用して自動的にMACEであると判断するためのシステムを開発し,電子カルテ情報を用いたMACEのビッグデータ分析を行うためのシステムを開発する.

  • 森川 和彦, 岡田 唯男, 矢作 尚久, 加藤 省吾
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 34-35
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     問診は診療において重要な情報であり,診断に寄与する情報量の50-75%を占める.医師が暗黙知の中でどのように患者の状態をとらえ,診断を下すかという思考を検討するためには,これらの情報を的確に収集し,解析可能環境を整備することは重要である.

     本研究では,迅速検査が広まっているウィルス感染症について,要介入・要検査を判定する手法,判定に基づくアクションを取った場合の費用対効果を評価する手法を開発し,院内・院外におけるスクリーニング支援システムを,小児医療情報収集システムの基盤システムであるCDMS基盤を活用して構築する.

  • 森崎 菜穂, 森 臨太郎, 康永 秀生, 掛江 直子, 溝口 史剛, 永田(横尾) 知映, 大田(伊東) えりか, Mahbub(マハブブ) ...
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 36-37
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     小児医療および周産期医療は,医療計画の「5疾病5事業」に含まれ,その医療体制整備はきわめて重要である.本分野では関連学会が積極的にレジストリを作成し,政府統計も豊富に行われてきた.しかし,政府統計の多くは医学的情報に欠け,学会レジストリはカバレージに問題があり,有用なエビデンスを算出するには,いずれも一長一短であった.本研究班構成員は,今までも成育医療分野における各種統計や医学団体所有データベースを連結・解析し,臨床的・医療政策的に有用なエビデンスの算出やリンケージ手法の倫理的妥当性に関する研究等を通して,研究基盤作成に貢献してきた経験を踏まえ,成育医療分野のデータベースを連結することで拡充し,さらに多くの臨床研究に活用し,公的統計の妥当性検証やデータベース同士の自動連結手法を確立することで今後の研究基盤を作成することを目的とした.

  • 八木 哲也, 大毛 宏喜, 村上 啓雄, 飯沼 由嗣, 具 芳明, 村木 優一, 藤本 修平
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 38-39
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     本研究班においては,我が国で制定されたAMR対策アクションプランに基づく薬剤耐性菌対策を推進するために,我が国に特徴的な感染制御の地域連携ネットワークを有効に機能させるための,一つのネットワークモデルを提示すること,ネットワークで共有・活用可能な資料やガイドを作成すること,ネットワーク活動を支援するツールを開発することを目的とした.さらに,地域連携に基づいた医療機関等における薬剤耐性菌対策の提言をまとめる.

  • 栁澤 琢史, 貴島 晴彦, 原田 達也, 数井 裕光, 吉山 顕次, 吉村 匡史, 西田 圭一郎, 畑 真弘
    原稿種別: 特集
    2020 年 40 巻 1 号 p. 40-41
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    1. 研究目的

     認知症は世界的に増加傾向であり,特に少子高齢化が進む日本では社会的な負担となり重要な問題である.アルツハイマー型認知症は世界に5000万人の患者がおり,そのコストは米国だけでも1兆ドルにも達すると言われている.発症にはアミロイドの蓄積が関与すると考えられているが,蓄積の程度だけでは発症を予測できない.脳の活動状態など,病理学的変化以外の脳の機能的レジリエンスが影響していると考えられる.本研究では,認知症患者の脳波・脳磁図を用いて脳の機能的活動状態を高い時間・空間解像度で捉え,これを波形データに特化した新しいDeep Neural Network (DNN)により診断する人工知能の開発を目的とした.

資料
  • 松本 薫, 天野 哲史, 八並 ゆかり, 伊藤 昌美, 鈴木 厚志, 板倉 由縁
    原稿種別: 資料
    2020 年 40 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2020/09/04
    公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

     超高齢社会を迎えた現在,加齢や生活習慣病によって腎機能が低下している患者は多く,その腎機能に応じた適切な用量調節が求められている.しかし,薬剤師がすべての患者に対して腎機能をチェックし,適切な用法・用量の提言を行うことはマンパワー不足などの理由から難しい一面がある.そこで,薬剤師が効率的に処方の疑義を発見し,適切な用法・用量を提言できるようにするためのシステムを開発した.そして臨床上の有用性を検討するため,システム稼働に伴う患者実人数,処方実件数,疑義照会件数,疑義照会後の処方変更件数の4項目の変化を比較した.その結果すべての項目において改善が認められ,疑義照会件数は約5倍,疑義照会後の処方変更件数は約3倍の増加が認められた.今回の調査によりシステムの有用性を客観的に示し,処方変更を通じて薬剤の過量投与に起因する副作用の発現予防に貢献できたと考えられた.

feedback
Top