医療情報学
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33 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著-研究論文
  • 嶋田 元, 山川 真紀子, 春田 潤一, 福井 次矢
    2013 年 33 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
     背景:臨床決断支援(CDS: Clinical Decision Support)システムがいくつかの領域で医療の質の改善に寄与すると報告されているが,推奨行為を提示する汎用的なCDSシステムの日本からの報告はない.
     目的:電子カルテシステム(EMRS: Electronic Medical Record System)内に推奨行為が提示可能なCDSシステムを構築しその利用率を評価する.
     概要:EMRS内外の情報を用いて個々の患者状態に応じた推奨行為を含む通知情報を作成し,EMRS内に決断を行うタイミングで動的に提示し,入力を支援する仕組みを構築した.
     結果:2011年12月からの9ヵ月間に7領域で1,628件が通知され使用率は89.2%,診療行為を正しく支援できた割合は94.8%であった.
     結論:既存電子カルテシステム内に推奨行為を提示する実行率の高い臨床決断支援システムを構築した.今後は本システムが医療の質の向上や利用者の行動変容に寄与するかを評価する必要がある.
原著-技術論文
  • 大崎 美穂, 宮崎 淳文, 谷口 恵梨, 片桐 滋, 横井 英人, 高林 克日己
    2013 年 33 巻 2 号 p. 79-98
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
     従来,C型慢性肝炎の病状把握と治療のため,血液・尿の臨床検査の結果から肝線維化ステージを推定する試みがなされてきた.過去の研究の多くは現在の検査値を用いているが,炎症の時間変動を経て肝線維化が進行する仕組みを考慮すると,過去から現在までの検査値時系列が有効であると考えられる.そこで本研究では,血液・尿の検査値時系列を用い,特徴量として平均,標準偏差,LPCケプストラムの組合せを提案する.そして,他の様々な特徴量とともに推定性能を調べる実験を行い,提案した特徴量の有効性を検証する.実験では,入力には国際会議で公開された肝炎検査履歴データセット,分類器には最近傍法を用いた.肝線維化の深刻さの2クラス問題,肝硬変の有無の2クラス問題の各々について,特徴量ごとにLOO交差検定で推定性能を導出した.その結果,複数の検査項目に共通して,提案した特徴量は従来の特徴量や比較対象とした他の特徴量よりも推定性能が高かった.特に,検査項目を組み合わせた条件では,提案した特徴量は従来の特徴量よりも推定性能が5.32~13.83%高かった.よって,提案した特徴量の有効性が確認された.
  • 若槻 淳一朗, 福多 賢太郎, 辰巳 治之, 新見 隆彦, 魚住 超
    2013 年 33 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
     遠隔医療実験で収集されたデータを使用して,血圧に関する簡易な診断を行うためのBayesian Network (BN)の半自動的な学習を行った.その実験では各家庭に設置された各種家庭用医療電子機器により測定されたデータをインターネットで集積し遠隔医療に利用した.本研究では,クライアント側でユーザがそれら異種データを総合的に判断することをサポートするという目標のもと,3機器を選び気象情報を加えて情報を統合するモデルの構築を試みた.グラフ構造の学習には,1ヵ月ごとのメディアンを12ヵ月分使用して(39名),体重,歩数,気温,収縮期血圧からなるBNを得た.パラメータ推定は,8名の被験者を選び,個々人に対して行った.得られたBNを利用し,高血圧予防を念頭に置いて,最も個人に合った医療介入の方法を因果的に推論することを試みた.よく歩いて体重を落とした方がいいなど,人によって異なるアドバイスが得られた.
資料
  • 西浦 聡子, 柗浦 一, 小川 俊夫, 今村 知明
    2013 年 33 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
     2006年の7対1看護入院基本料の導入後,7対1看護を取得する病院が年々増加している.7対1看護を導入した病院では入院基本料の差額による増収が見込まれるが,逆に人件費の増加による減収の可能性もあり,病院によってはこれまで以上に収益を上げる必要があると考えられる.このような病院では,新人やパート看護師への切り替えによる人件費削減も収益向上の方法ではあるが,高度医療を提供する病院においては経験豊富な看護師の確保が必須で,人件費増に見合った収入の確保が必要である.本研究は,600床規模の自治体病院の血液内科病棟における一般病室(15床)の無菌治療室への改修の収支を試算した.さらに,無菌治療室への改修による病院経営に対する影響を分析した.推計の結果,7対1看護の導入によって減収となるが,無菌治療室管理加算によって大幅な増収が見込まれ,病院全体の収支を大きく改善すると推計された.無菌治療室への改修と高度医療が提供可能な看護師の確保は,積極的な重症患者の受け入れによる患者単価の上昇と病床稼働率の向上,在院日数の削減などから,結果的に病院の収益につながることが示唆された.
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