医療情報学
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28 巻, 1 号
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原著
  • 松本 智晴, 宇都 由美子, 村永 文学, 熊本 一朗
    2008 年 28 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     近年,医療IT(Information Technology)化への関心は,急速に高まっている.本研究の目的は,患者サービスへの電子カルテ活用において,医療従事者は何を最も重要と考えているのかを明らかにすることである.そこで,A 大学病院の医療従事者を対象にAHP(Analytic Hierarchy Process: 階層分析法)を用いたアンケート調査を実施し,564 名から回答を得た.結果,医療従事者は,1 位「安全な医療と看護」,次いで 2 位「患者との信頼関係」,3 位「患者ニーズへの対応」,4 位「患者の主体的医療参加」,5 位「最適な医療と看護」,6 位「継続した医療と看護」,7 位「高度な医療と看護」の順に重要度が高いと回答した.この結果は,患者サービスへの電子カルテ活用において,医療現場で実現できている,あるいは実現可能と考えられている電子カルテの意義の重要度が高く,逆に実現困難,あるいは実現可能性が低いと考えられているものの重要度が低いという傾向であった.
技術ノート
  • 菅原 民枝, 大日 康史, 杉浦 弘明, 谷口 清州, 岡部 信彦
    2008 年 28 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     感染症流行を早期に探知することを目的とし電子カルテを用いた「症候群サーベイランス」を自動的に運用するシステムを構築した.サーベイランスの対象は,医療機関受診者のうち,発熱,呼吸器症状,下痢,嘔吐,発疹の有症状者の件数である.2005年5月~2006年9月まで一診療所においてシステムを開発した.2006年10月より同一地域における複数の医療機関で同様のサーベイランスを行い,地域での感染症流行を探知する試みを行っている.2006年10月感染性胃腸炎の流行,2007年3月の遅いインフルエンザ流行,2007年8月末から9月にかけてのエコー30による無菌性髄膜炎の流行を探知した.特に無菌性髄膜炎の流行では,初期症状の嘔吐を捉え,保健所から教育委員会を通じて各学校に手洗い励行の通知がなされた.
  • 藤本 正己, 古本 奈奈代
    2008 年 28 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     社会調査をはじめとするアンケート調査に用いられる質問形式は,選択型質問形式と自由記述回答形式に大別できる.自由記述回答形式の質問は,回答者の本音を引き出すことが可能であるが,処理が困難であることから詳細な分析がほとんど行われていない.本研究では,徳島市が実施した高齢者意識調査における自由記述回答についてテキストマイニング手法を用いて客観的な評価を行うとともに,選択型質問形式による結果との関連性について多変量解析などの統計的手法を用いて分析した.その結果,選択型質問形式による結果と自由記述回答の間にさまざまな関連性が認められた.また,従来型の選択型回答データのみでは評価できなかった回答者の価値観の違いなどが,自由記述回答を併用することにより明らかとなったのでここに報告する.
  • 飯嶋 久志, 宇野 弘展, 大石 憲司, 木村 浩二, 西橋 由紀子, 寺内 信夫, 西岡 直人, 田畑 義弘, 吉川 清史, 黒川 慎吾, ...
    2008 年 28 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     医薬分業とITの進展に伴い,薬局で扱う情報は年々大きくなっており,その効率化にはITの活用が有用な手段といえる.また,国民のIT推進状況も考慮すると,患者への医薬品情報提供にはITの活用が望まれる.そこで,携帯電話のWeb機能を利用した医薬品情報提供と収集を試みた.
     システムはクライアントアプリケーションとWebアプリケーションで構成し,サーバとの通信にはSSLを用いた暗号化通信とした.情報提供はE-mailによる能動的情報提供,サーバへアクセスする受動的情報提供とし,さらに患者から服薬状況をサーバへ報告するシステムを構築した.また,本システムをモニター調査等で評価した.
     本システムへのアクセス数は「服用履歴」,「次回服用内容」,「登録情報」などが多かったが,患者からの報告は調査が進むにつれ減少した.また,薬剤師は調剤完了メール,服用履歴などに対する利便性を高く評価した.一方,本システムはレセプトコンピュータよりデータ抽出することから,データ入力の負荷なくデータ収集が可能であった.
     本システムは服用履歴によるコンプライアンスの確認が期待されるが,継続した服用状況の確認には困難が生じた.今後はこれら問題点を改善し,患者利便性と薬物療法の質向上に寄与する必要があろう.
資料
  • 佐藤 康仁, 吉田 雅博, 山口 直人
    2008 年 28 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     Minds(Medical Information Network Distribution Service)は,診療ガイドラインおよび関連する医療情報を提供するWeb上のデータベースシステムである.Mindsを定期的に利用している者の特徴を明らかにすることで,診療ガイドライン等の医療情報を提供するWebデータベースシステムに求められる要件を明らかにすることができると考える.
     方法:対象はMindsのユーザ登録者とした.調査は2006年3月から4月にかけて実施した.アンケート調査への協力のお願いは電子メールで送信し,Webサイトにて調査を実施した.解析では,はじめに,定期的アクセスに関連する因子の探索をカイ二乗検定で行った.続いて有意差のみられた因子と定期的アクセスとの関連をロジスティック回帰モデルで分析した.
     結果:コメディカルでは「患者・家族への説明のため(Odds ratio=2.05)」「Webサイトの使いやすさの満足度(OR=3.07)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された.医師・歯科医師では「患者・家族への説明のため(OR=2.13)」「最新情報取得のため(OR=1.72)」「Mindsを診療に利用している(OR=2.88)」「Webサイトのコンテンツの満足度(OR=2.31)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された.
     結論:定期的にMindsを利用する者は,診療の現場において利用している者が多いことが明らかとなった.一方で,診療の現場ではインターネットへの接続が難しい場合が多い.今後は,インターネットに接続しない状態で情報提供を行う仕組みについても考慮する必要がある.
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