医療情報学
Online ISSN : 2188-8469
Print ISSN : 0289-8055
ISSN-L : 0289-8055
40 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
春季学術大会論文
  • 奥井 佑, 朴 珍相, 中島 直樹
    原稿種別: 春季学術大会論文
    2020 年 40 巻 2 号 p. 61-72
    発行日: 2020/10/09
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     診療報酬の改定に伴い向精神薬の多剤併用に対する政策が近年強化されてきているが,その政策効果について十分な検討がなされていない.本研究では,診療報酬改定により多剤処方を受けた患者数がトレンド変化したかを大学病院の電子カルテデータをもとに検証した.2008年4月から2019年3月までに九州大学病院にて向精神薬を処方された患者を対象とし,電子カルテからデータを抽出して用いた.分析手法として,一般化最小二乗法(GLS)とともに,一般化線形自己回帰移動平均モデル(GLARMA)を用いた.分析の結果,各向精神薬のうち,抗精神病薬,抗不安薬については政策の導入以降に多剤処方を受けた患者割合が減少に転じていることがわかった.また,中断時系列解析による検定の結果,抗精神病薬について時点と政策効果の交互作用の推定値が-0.143(95%CI:-0.275,-0.011),抗不安薬では-0.394(95%CI:-0.634,-0.154)となり,診療報酬改定により患者への多剤処方が減少する傾向にトレンド変化したことが示された.

  • 柴田 大作, 河添 悦昌, 嶋本 公徳, 篠原 恵美子, 荒牧 英治
    原稿種別: 春季学術大会論文
    2020 年 40 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2020/10/09
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     【背景】診療記録に自由記載される患者の疼痛を自然言語処理によって精度良く抽出することができれば,医療者間での情報共有等に役立つことが期待される.【目的】診療記録からの疼痛表現の抽出を,事象認識と事実性判定のタスクとして定義する.このタスクにおいて,文脈を考慮した分散表現が得られるBidirectional Encoder Representations from Transformers(BERT)を利用した方法と,従来の分散表現を利用した方法とを比較する.また,BERTの事前学習に利用するテキストのドメインの違いによる影響も調査する.【方法】東大病院の診療記録20,000文を対象とし,疼痛表現を人手でアノテーションしたものを実験材料とし,機械学習による疼痛表現の抽出を行った.機械学習モデルはBi-LSTM CRFを使用し,単語の分散表現は診療記録で事前学習したBERT,日本語Wikipediaで事前学習したBERT,fastTextのそれぞれから取得した.【結果】診療記録で事前学習したBERTのF値が平均で56.4と最も高かった.【考察】診療記録からの疼痛表現の抽出において,文脈を考慮するBERTの有効性と事前学習に用いるテキストのドメインの重要性が示唆された.

  • 高野 良治, 宮本 青, 石井 雅通, 石浦 浩之, 辻 省次, 大江 和彦
    原稿種別: 春季学術大会論文
    2020 年 40 巻 2 号 p. 83-95
    発行日: 2020/10/09
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     次世代DNAシーケンサーの普及に伴い臨床現場における患者のゲノム情報の活用が始まっている.一方,診断に資する情報の管理・参照や機微な情報の取り扱いなど検討すべき課題も顕在化してきている.われわれは,将来的な全ゲノム情報を用いた医療の実現を見据え,診断支援の上で重要になると思われる4つのシステム課題(①大規模なゲノムデータの管理,②病的変異の妥当性確認,③ゲノムデータの信頼性の確保,④個人情報保護への配慮)に関して,プロトタイピングによる概念実証を通じ,対策方法やその実現性,効果などを検証した.その結果,膨大なゲノムデータを管理するためのデータベースの実装方式,病的変異の妥当性を確認するためのユーザインターフェース,ゲノムデータの信頼性を確保するための情報管理の仕組み,個人情報に配慮したゲノムレポートの管理・参照方法に関し臨床現場での実装に向けた有効性を確認し,その一部を先進医療の運用に適用した.

資料
  • 入野 了士, 木村 映善, 石田 博, 栗原 幸男
    原稿種別: 資料
    2020 年 40 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2020/10/09
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     【目的】2018(平成30)年5月「次世代医療基盤法」の施行に先立ち,健診データ保有機関におけるデータの利活用の現状や外部提供に関する方針等を明らかにすることを目的として全国調査を実施した.【方法】都道府県別機関数に応じ抽出した298機関を対象に,2016(平成28)年7月18日から8月31日にかけて郵送調査を行った.【結果】79機関から回答があり,46機関で健診データの二次利用と外部への提供をしていた.63機関が条件によりデータの外部提供を検討するとの方針を示し,データに関する利用目的の妥当性,匿名化,機関の情報管理を求めていた.他方,安全性の高い匿名化技術をデータに施すという条件をつけても,機関の意識は有意に変化しなかった.【考察】調査結果からは,データ外部提供について,提供を受ける側が提供先に対してデータの利用目的や情報管理体制をしっかり説明し,健診データ提供に関する意義と必要性を訴えることと,次世代医療基盤法のガイドラインに準拠した匿名化技術の確立の必要性が示唆された.

feedback
Top