近年,医療施設では診療情報の電子化が進み,システムによる医療安全面でのチェック機能や医療スタッフ間で情報を共有する機能が充実しつつあるが,情報の共有漏れに起因するインシデントの発生の予防に十分に寄与できているとはいえない.これに対してわれわれは「確実に情報を伝える」という観点でシステムが担う役割を整理することで,従来の病院情報システムに加えて情報の伝達を担う仕組みが必要であることを示し,システムを構築するための基盤全体を「医療情報伝達基盤」と捉えた統合的な設計と実装を提案する.
高知大学医学部附属病院では,2013年1月の総合医療情報システム(IMIS)の更新時に,「医療情報伝達基盤」を目指して総合医療情報伝達基盤(IMII)を構築した.実現にあたって,個人専用携帯端末の選定や携帯端末で稼働するアプリの開発,安定して接続できる無線LAN環境の敷設が必要であった.「医療情報伝達基盤」という考えに基づく病院情報システムを支える基盤全体の設計や構築は医療安全の観点からも重要であり,多くの医療施設で適用できるものと考えられる.
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