医療情報学
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35 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著-技術論文
  • 中島 典昭, 渡部 輝明, 弘末 正美, 楠瀬 伴子, 奥原 義保
    2015 年 35 巻 6 号 p. 259-273
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
     近年,医療施設では診療情報の電子化が進み,システムによる医療安全面でのチェック機能や医療スタッフ間で情報を共有する機能が充実しつつあるが,情報の共有漏れに起因するインシデントの発生の予防に十分に寄与できているとはいえない.これに対してわれわれは「確実に情報を伝える」という観点でシステムが担う役割を整理することで,従来の病院情報システムに加えて情報の伝達を担う仕組みが必要であることを示し,システムを構築するための基盤全体を「医療情報伝達基盤」と捉えた統合的な設計と実装を提案する.
     高知大学医学部附属病院では,2013年1月の総合医療情報システム(IMIS)の更新時に,「医療情報伝達基盤」を目指して総合医療情報伝達基盤(IMII)を構築した.実現にあたって,個人専用携帯端末の選定や携帯端末で稼働するアプリの開発,安定して接続できる無線LAN環境の敷設が必要であった.「医療情報伝達基盤」という考えに基づく病院情報システムを支える基盤全体の設計や構築は医療安全の観点からも重要であり,多くの医療施設で適用できるものと考えられる.
春季学術大会論文
  • 篠原 恵美子, 今井 健, 大江 和彦
    2015 年 35 巻 6 号 p. 275-282
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
     診療情報の中でも身体部位は患者状態や治療などの要素となる基本情報であり,これを捉えることは医療情報の活用の基盤の1つとなる.そのためには表記のゆれを解消し概念を特定する,すなわち正規化が必要である.しかし臨床現場で用いられる身体部位表現と人体解剖学の概念が一致する保証はない.本稿では身体部位表現の正規化における要件を検討するため,症例報告で用いられた身体部位表現と現在構築中の解剖オントロジーの対応関係を,1)情報の欠落,2)対応概念の数の2つの観点から分類した.その結果,身体部位表現154件のうち情報の欠落があるものは29件(18.8%),対応概念が複数であるものは42件(27.3%)であった.事例を詳細に検討したところ,正規化技術の実現には,内部構造解析技術に加え,領域および方向を含む解剖学知識や同義語辞書が必要であることが分かった.
  • 木村 映善, 石原 謙
    2015 年 35 巻 6 号 p. 283-296
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
     Arden Syntax(AS)は,臨床判断支援システムにおける論理記述を標準化するドメイン特化型言語として開発された.しかし,臨床知識を取得する標準的手法の不在による移植性・可読性医療の低下が指摘されている.さらに,臨床判断支援システム側の課題として,大量に押し寄せる医療情報を効率的に処理可能な近代的アーキテクチャ上に構築すること,様々な発生源の情報を統一的かつ効率的に処理できること,が挙げられている.本研究では,現代的なオブジェクト指向開発言語がもつ豊富な開発・稼働環境の恩恵を受けるために,ASの仕様に倣った言語内DSLを開発した.さらに,各医療情報システムが依存している情報モデルの差異を吸収するために,データベースのスキーマが標準化されたDWHを前提としたFHIRオブジェクト間のマッピングツールを開発した.純粋なASで記述されたMLMと同等以上の表現能力で移植できることが確認された.従来のAS実装と比較してわれわれの手法は近代的な開発手法,例えばテストドリブン開発,並列分散処理等の恩恵を受けることが可能である.
  • 堀 謙太, 高梨 克也, 内藤 知佐子, 黒田 知宏
    2015 年 35 巻 6 号 p. 297-304
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
     遠隔診療におけるコミュニケーションを理解することは遠隔診療のための情報システムやワークフローを検討する上で重要である.本研究では遠隔診療のコミュニケーション分析を目的とし,まず,初期的検討として聴診訓練シミュレータを使用した模擬遠隔聴診において医師と聴診経験がない介助者各1名を対象とする観察実験を実施した.実験は健常3例と呼吸器系疾患3例について実施した.分析では,被験者へのアンケートとインタビュー,被験者に提示する映像と音声の記録,実験環境の外観をカメラで撮影した映像・音声により,多角的な分析を試みた.結果より,本実験で設定した状況下における医師と介助者の視覚的・言語的行為連鎖のパターン化,コミュニケーションモダリティの遷移など,今後分析を進める上での基礎的な知見が得られた.
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