医療情報学
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35 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著-研究論文
  • 笠原 聡子, 谷口 孝二, 武田 裕
    2015 年 35 巻 5 号 p. 199-211
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
     1公立病院1病棟において,平日3日間の日勤看護師(n=23)が勤務開始から朝の受持患者ラウンドまでに行っている情報収集関連電子カルテ画面の閲覧シーケンスパタンをアクセスログから抽出し,構造モデル分析により特徴を明らかにした.シーケンスパタンは141シーケンス中,全53種類と多様である反面,5種類で過半数を占め,典型的パタンが示された.看護師は1回4画面と少ない画面から効率的に情報収集を行っていた.全11画面中,主要5画面で閲覧件数・時間の約98%を占め,「カルテ歴」と「経過表」の2画面が中心的役割を果たしていた.設計上「経過表」が担うと想定されたhub的役割は実際には「カルテ歴」でより大きかった.画面間リンクにはシステム設計段階からあるものとユーザにより後付けされたものがあり,看護師は後者を有効活用していた.関連の強いリンク10個のうち7個が設計時点では想定外であり,実際の使用状況とのギャップが明らかとなった.
原著-研究速報
  • 木村 通男, 清水 俊郎, 渋谷 雅彦, 野口 大輔, 小野 悟, 渡辺 浩
    2015 年 35 巻 5 号 p. 213-217
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
     レセプト情報データベースの2011年10月のサンプリングデータセットを用い,紹介時同月内異施設同一検査実施状況調査を行った.
     紹介料が算定された同月に,異施設でまた同じ検査が実施された回数と紹介件数あたりの頻度は,αFP 2/151=1.3%,HbA1c 40/2,394=1.7%,CT 35/2,445=1.4%,MRI 10/2,025=0.5%,PETについてはなかった.
     1カ月前の同一検査結果がもたらされれば再検査しない,というアンケート調査に基づき,期間,検査部位,検査精細度などの補正を行った結果,実施する必要がなかった検査の頻度はそれぞれ;αFP 2.7%,HbA1c 3.3%,CT 0.61%,MRI 0.25%と推定された.
     この頻度にこれらの検査の診療報酬を掛け合わせると,αFP 68円,HbA1c 16円,CT 133円,MRI 48円となった.これにより,例えばこれらの検査を実施した場合の全紹介時にこれらのデータを情報提供した場合の,画像検査は100~200円程度,検体検査は通常5~15項目情報提供するのでこれも100~200円程度の,紹介時電子データ付与インセンティブ,受取インセンティブがあったとしても,必ずしも必要でない検査の合計より十分少ないと考えられた.
春季学術大会論文
  • 岡垣 篤彦, 上尾 光弘, 定光 大海
    2015 年 35 巻 5 号 p. 219-227
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
     ER外来の診療速度に電子カルテの入力が追いつかず,これまでER外来の電子化は難しいとされてきた.大阪医療センターでは電子カルテの入力を容易にし,閲覧性を向上させる目的でファイルメーカープロで作成した入力画面を富士通製病院情報システムであるEGMainEXに接続した電子カルテを運用してきたが,この仕組みを用いて高速入力用のテンプレートを作成しER経過記録として実装し,1年間運用したデータを分析した.ER経過記録の1レコードに記載された診療行為数は平均で32件,入力する間隔は平均2分29秒であった.直前の入力から1分以内に入力されているケースが全体の47%であり,10~20秒以内に次の診療行為を入力しているケースが最も多かった.これまでER外来の診療速度についていける電子カルテがなかったため定量的な評価は難しかったが,電子化によりどのような診療が行われているかを把握することが可能となった.
  • 串間 宗夫, 荒木 賢二, 鈴木 斎王, 山﨑 友義, 曽根原 登
    2015 年 35 巻 5 号 p. 229-238
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
     介護記録内容は,介護者の経験年数によって差があり,ただ単なる記録のみの内容だけでは被介護者の介護に必要な要点を他の介護士と共有することが難しい.また,介護業務の効果的運用と改善,介護業務従事者の教育・研修のため,介護記録の二次的利用法の開発が現場の介護職員から強く望まれているが,この課題を解決する具体的な検討は少ない.今後の介護業務の向上には,前述の課題を解決し,電子的介護記録システムの開発が重要である.本研究では,介護要点を共有できる介護記録の語彙関係から介護に関する重要な語彙抽出を行い,さらに,テキストデータマイニング統合環境TETDM(Total Environment for Text Data Mining)で可視化し,介護士間で被介護者の状態を共有できる介護記録内容を検討した.その結果,TETDMによる解析結果は,被介護者の介護状況を反映していると考えられた.本研究より介護記録をTETDMで解析できる可能性を示すことができ,介護記録の電子的介護記録システムを構築できる方向性が示唆できた.
資料
  • 岡本 康幸
    2015 年 35 巻 5 号 p. 239-248
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
     定型的で繰り返し必要となるData Warehouse(DWH)からのデータ抽出に対しては,アプリケーションによる継続的なサービス提供が望まれる.このような需要に対して,当院医療情報部では,可能な限り内製アプリケーションの開発で対応するように心掛けてきた.その利用実績を報告する.これまで作製してきた主なアプリケーションは,診療支援,医療安全,栄養管理,褥瘡ケア,感染管理などの各領域用と,特定の部門用,そして受付事務用のものであった.6ヵ月間のアクセス状況の調査の結果,最もアクセスの多かったアプリケーションは,入院患者のプライバシー保護のための「入院患者についてのコメント」で,次いで感染管理用の「菌種別検出患者検索」,「抗MRSA薬剤TDMデータ」の順となった.一方,利用者数でみると,「入院患者についてのコメント」が最も多く,次いで「菌種別検出患者検索」,「患者の全科情報一覧」の順となった.内製アプリケーションは,常にユーザとコミュニケーションをとりながら開発できることや,リリース後も改修などの要望に速やかに対応できるという点で,ユーザにとって利便性が高い.したがって,常に新たなニーズの生じるDWH活用アプリケーションの開発には内製で対応することが望ましいと考えられる.
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