医療情報学
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22 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 柏木 聖代, 水流 聡子, 柏木 公一, 美代 賢吾, 西亀 正之
    2002 年22 巻2 号 p. 169-178
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,看護記録が電子化され,看護サマリー作成システムが導入された際,「看護サマリーデータ項目セット」を病院情報システムに適用できるかを明らかにすることである.そこで,今回は,看護サマリーネットワーク研究会が作成した「看護サマリーデータ項目セット」を用い,そのデータ項目の情報が病院の記録に記載されているかについて,大学病院と大学病院以外の病棟管理者295名に対し,自記式質問紙調査を実施した.243名から回答を得たうち,有効回答であった171名を分析対象とした.その結果,患者属性・診療情報に分類されるデータ項目の情報は80~90%記録に記載されていた.逆に,患者・家族への指導,福祉サービス等,在宅ケアを意識した情報の記載率は40%前後であった.さらに,大学病院群と大学病院以外の病院群にわけ,記載率との関連をみた結果,28項目に有意な差が認められ,すべて大学病院以外の病院群の記載率が高かった.

  • 杉江 崇繁, 下馬場 朋禄, 伊藤 智義, 増田 信之, 飯塚 和恵, 中沢 宏章, 酒巻 哲夫
    2002 年22 巻2 号 p. 179-188
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     一般的に大学病院などの大きな総合病院では診療科外来が非常に混雑していることが挙げられる.この問題に対して解決策を検討する際には,実時間において常に混雑情報を得ることが必要不可欠であるが,大きな組織ではその把握は困難である.我々はHospital Information System (HIS)上にすでにある情報から患者の所在の把握や診療科の評価を行うことが可能かを検証するために,HISが自動生成するログに着目し,ログ情報から混雑情報を得られるシステムの構築を行った.HISは発生源入力であるため,外来患者ではHISからの入力があった場合,その場所に患者が存在するのが通常であるとの仮説の下におおよその混雑状況が把握されればよいという設計思想で行った.なお,本システムは群馬大学医学部附属病院のHISに組み込んで評価を行った.ログ情報から求めた診療科の待合人数および待合時間は,実際に待っている患者とよく一致した.本システムは混雑状況を視覚化表示することができ,ユーザに効果的に混雑状況を伝えられる.また,本システムはエンドユーザに新たな負担を与えないため,行動科学などの分野においても利用が考えられる.例えば病院経営や患者の行動科学などでの応用が期待される.

  • 開原 成允, 厚生科学研究「医療情報技術の総合的評価と推進に関する研究」班
    2002 年22 巻2 号 p. 189-196
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     遠隔医療が日本で実施されてから30年にもなるが,技術的なシステムの調査は行われたが,遠隔医療が日常の医療として定着しているか否かについては不明であった.本研究では,コンサルテーション型の遠隔医療である遠隔病理診断,遠隔放射線診断,眼科診療支援,内視鏡下手術支援の4つの領域について,その実施状況をアンケートによって調査した.その結果,遠隔病理診断については,定着の方向にはあるものの,その他の領域については,実施数も必ずしも多くなく,また経済的には自立していないことが明らかになった.今後遠隔医療を普及させていくためには,この時点で遠隔医療がどのような場合に真に必要とされているかを見直し,その費用負担について社会的コンセンサスを得ることが必要と考えられた.

  • 森川 富昭, 西野 瑞穗, 有田 憲司
    2002 年22 巻2 号 p. 197-205
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     我々は,地域の医院や病院の医師・歯科医師がインターネットを利用して中核病院の専門的知識や最新の技術を活用できる病診・病病連携システムMedical Remote Conference Networking System (以下M-Netと称する)を構築した.M-Netは,インターネットを介して,両施設の医師・歯科医師間で診療情報,特に医療画像 (顔貌写真,口腔内写真,デンタルおよびパノラマX線写真,CT立体構築画像,超音波診断画像,病理標本顕微鏡画像等の診断に必要なデータ)についてのカンファレンスを行うシステムで,OSをLinuxで,各種サーバをApache,PostgreSQLで実装し,プログラム言語はJAVAおよびPHPを用いて構築した.

     M-Netは医療関係のコラボレーションシステムとして開発したものであり,今回,歯科領域において試行した.その結果,本システムはインターネットを用いてブラウザを多用するシステムであるため,システム利用者はハード面に対する膨大な投資をすることなく遠隔カンファレンスを行えることが明らかになった.

     今後は,歯科領域での試行をさらに進め,問題点の発見とその改善につとめ,歯科用M-Netの確立後,医科用M-Netに取り組む予定である.

  • 有澤 武士, 山本 祐介, 西原 仁, 綾木 雅彦
    2002 年22 巻2 号 p. 207-210
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     待ち時間の短縮や診療効率の向上のために,疾患によって待ち時間などに差が生じるのかを検討した.検討した項目は,各疾患群における待ち時間(受付時刻と予約時刻の差),滞在時間(受付から診察終了まで),所要時間(予約時刻から診察終了まで)である.白内障は術後より滞在時間と所要時間が長かった.散瞳処置がある患者は滞在時間と所要時間が40分前後長くなっていた.眼底疾患以外の群では初診時の方が再来時より早めに来院するが,眼底疾患の群は再来の方が初診より約9分早く来院していた.糖尿病は予約時間12分前に受付し疾患群中最も遅く,また所要時間が他の眼底疾患より13分長かった.緑内障は診察時間と所要時間が短く29分である.角結膜疾患では受付時間が他疾患よりも10分程度早かった.今回の検討で疾患群によって待ち時間などに特徴を見いだすことができ,予約の設定やクレーム減少に有用と思われた.

研究速報
資料
  • 真野 俊樹, 水野 智, 山内 一信
    2002 年22 巻2 号 p. 217-222
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     患者にとって重要なことのひとつは,質の高い医療情報が適切なタイミングで入手できることである.そのためには,情報提供者の一角である医師が適切な医療情報を提供できる環境をととのえること,また医師がEBM等に基づいた治療を行うための情報源として有用で,かつ患者と双方向でのやりとりができるインターネットの利用環境を整えることが重要である.

     我々は日本人医師のインターネットリテラシーに関してアンケートによる検討を行った.調査は2001年1月に郵送にて実施し,アンケート郵送数は60,000通(24万名の医師からランダムに抽出),回答数は14,105通,回収率で24%であった.その結果,医師のPC,E-mailアドレスの所有率はかなり高かった.インターネットへのアクセス環境は,医師の年が上がるにつれて整備されていなかったが,現在アクセス環境整備の計画中の例も多く,今後改善されていくことが推測される.アクセス場所については,勤務医は病院と自宅が半々,開業医は自宅のほうが多かった.

     インターネットを介しての医療情報入手経験ありは80%であった.インターネットを介しての医師間での医療情報交換は48%,患者対応は20%が実施している.

解説
  • 大櫛 陽一
    2002 年22 巻2 号 p. 223-227
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     編集委員がオムニバス方式で,いかにすれば医療情報学に関する論文を多く排出し,質の高い論文となるかについて解説を行う.今回は,まず典型的な研究手法について説明する.医療情報学の論文はオーソドックスな論文形式に馴染まないことがあるとされている.しかし,新しい方法論を論ずる前に,典型的な方法の持つ特徴を理解しておくことは重要である.特に,不適切な研究手法に潜むバイアスを知っておくことは重要である.また,科学的記述である論文の構成の基本をマスターしておくべきである.

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